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番外編②【星雨】
04.
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「ユイ、愛してる。お前だけ。この世の生が終わって、狭間の向こうに行くことになっても、いつか星に還る時が来ても。俺はお前と共に在りたい」
ロウがユイを抱き上げ、額にキスをした。
ヴィルとシュンが婚姻の儀式と言っていたのは、おそらくこのことだ。母も父からもらったと言う青い鉱石のブレスレットをしていた。星の欠片で出来た鉱石をアクセサリーにして、唯一と決めた伴侶に贈るのは、白き人狼の習わしなのかもしれない。それは、白き人狼だけが出来る愛の誓いである。
「ロウ、…」
胸がいっぱいになって、うまく言葉が出てこない。
「ありがとう。わ、…私、…私もロウだけ愛してる」
零れ落ちた涙をロウの甘い舌が優しく舐めた。
「お前に消えない噛み痕を付けたいんだが。このピアスを着けるための。絶対に痛くしないと誓う」
後から後から流れ落ちるユイの涙を器用にぬぐいながら、ロウが少し困ったように小首を傾げた。
そういうことか。
このところ、ロウの甘噛みが多かったのは、ピアスホールのことを考えていたからだ。いかにユイに苦痛を与えず、快適に噛み痕を付けるか心を砕いていたのだろう。
ロウの優しさが沁みて胸がぎゅっとなる。
「うん。ロウの痕、付けて欲しい」
涙に濡れた目を瞬かせながらロウを見つめると、その金色の瞳の奥に欲情の熾火が揺らめいて見えた。ユイを捕らえて離さない真っすぐな情動。怖いくらいに強く激しい思い。
でも、…
ロウになら、どんなにひどく食べられてもいい。
「だいすき、…」
ロウの唇に口付けると、息が止まりそうなほど強くロウの腕の中に抱き寄せられた。
瞼に、頬に、鼻に、唇に、戯れるように優しいキスが降ってくる。ふわふわしてくすぐったくて、自然と笑みがこぼれる。ロウの柔らかい毛並みがユイを包み、ロウの滑らかな手のひらがユイを撫でる。
「ふ、…―――…」
心地よくて漏れ出す声をロウの甘い舌に絡めとられる。
ロウの指がたどる背骨にそわそわと快感が立ち昇る。こんなに密着しているのにもっとロウを感じたくて、両腕を必死にロウに回してしがみつく。口内余すところなく、突かれ、撫で擦られ、吸われ、食まれて、快感に溶けだしたユイをロウがしなやかな手足をしっかり絡め合わせたまま堅固に支える。
首筋、顎のライン、耳の輪郭、耳朶をロウの甘い舌と牙の先が辿り、心地よいのに物足りない、もどかしい快感に焦らされる。
「ロウ、…―――っ」
「ユイ。俺の耳を噛め」
溢れ出す狂おしいほどの快感に、身体をくねらせ、擦りつかせてロウを乞うと、ピンと張った美しい形の耳が差し出された。ユイが噛んでも噛み痕を付けられるかは分からないが、恐らくロウは同じやり方でピアスホールをあけて、ピアスを着けようと考えたのだろう。
心地よくてもどかしい、どうにもならない快感の衝動そのままに、ユイはロウの耳に噛みついた。次の瞬間、右耳に甘い刺激を感じ、ロウを待ちわびて濡れる身体に痺れるような快感が走った。
「あ、…っ、…ん、…――――…」
ロウの爪と牙は強力な媚薬だ。ユイは瞬く間に達し、ロウの耳を噛みしめたまま快感の衝撃に耐える。空いたばかりの穴に、神秘なる青い鉱石が差し込まれた。葡萄の実を象ったペアピアスが、それぞれの右耳と左耳で厳かに光る。
「愛してる、…――――」
快感に吹き飛びそうになるユイの身体を、ロウが鋭い一突きで奥まで穿ち、巧みに繋ぎとめる。満天の星。蒼い夜の静寂。神聖な湖の畔で、ユイとロウはこの上なく一つに溶け合い、固く硬く結びついた。
かつてユイが憧れたお互いに心酔し合うただの幸福な番になって、お互いを求め、快楽に震え、愉楽に興じ、境界が分からないほどどこまでも溶け落ちてゆく二人を祝福するように、耳元で一対の星が瞬いていた。
その夜。
人狼の森に無数の流星雨が降った。
碧き鉱石の誓いは時空を超越し、いつか、鹿王がいる狭間の向こう側の世界に行っても、永遠に結ばれたまま、二人共に星に還ると言われている。
―――――――――――――――
最後までお読みいただきまして有難うございます。
応援してくださった皆様、本当にありがとうございました!
ロウがユイを抱き上げ、額にキスをした。
ヴィルとシュンが婚姻の儀式と言っていたのは、おそらくこのことだ。母も父からもらったと言う青い鉱石のブレスレットをしていた。星の欠片で出来た鉱石をアクセサリーにして、唯一と決めた伴侶に贈るのは、白き人狼の習わしなのかもしれない。それは、白き人狼だけが出来る愛の誓いである。
「ロウ、…」
胸がいっぱいになって、うまく言葉が出てこない。
「ありがとう。わ、…私、…私もロウだけ愛してる」
零れ落ちた涙をロウの甘い舌が優しく舐めた。
「お前に消えない噛み痕を付けたいんだが。このピアスを着けるための。絶対に痛くしないと誓う」
後から後から流れ落ちるユイの涙を器用にぬぐいながら、ロウが少し困ったように小首を傾げた。
そういうことか。
このところ、ロウの甘噛みが多かったのは、ピアスホールのことを考えていたからだ。いかにユイに苦痛を与えず、快適に噛み痕を付けるか心を砕いていたのだろう。
ロウの優しさが沁みて胸がぎゅっとなる。
「うん。ロウの痕、付けて欲しい」
涙に濡れた目を瞬かせながらロウを見つめると、その金色の瞳の奥に欲情の熾火が揺らめいて見えた。ユイを捕らえて離さない真っすぐな情動。怖いくらいに強く激しい思い。
でも、…
ロウになら、どんなにひどく食べられてもいい。
「だいすき、…」
ロウの唇に口付けると、息が止まりそうなほど強くロウの腕の中に抱き寄せられた。
瞼に、頬に、鼻に、唇に、戯れるように優しいキスが降ってくる。ふわふわしてくすぐったくて、自然と笑みがこぼれる。ロウの柔らかい毛並みがユイを包み、ロウの滑らかな手のひらがユイを撫でる。
「ふ、…―――…」
心地よくて漏れ出す声をロウの甘い舌に絡めとられる。
ロウの指がたどる背骨にそわそわと快感が立ち昇る。こんなに密着しているのにもっとロウを感じたくて、両腕を必死にロウに回してしがみつく。口内余すところなく、突かれ、撫で擦られ、吸われ、食まれて、快感に溶けだしたユイをロウがしなやかな手足をしっかり絡め合わせたまま堅固に支える。
首筋、顎のライン、耳の輪郭、耳朶をロウの甘い舌と牙の先が辿り、心地よいのに物足りない、もどかしい快感に焦らされる。
「ロウ、…―――っ」
「ユイ。俺の耳を噛め」
溢れ出す狂おしいほどの快感に、身体をくねらせ、擦りつかせてロウを乞うと、ピンと張った美しい形の耳が差し出された。ユイが噛んでも噛み痕を付けられるかは分からないが、恐らくロウは同じやり方でピアスホールをあけて、ピアスを着けようと考えたのだろう。
心地よくてもどかしい、どうにもならない快感の衝動そのままに、ユイはロウの耳に噛みついた。次の瞬間、右耳に甘い刺激を感じ、ロウを待ちわびて濡れる身体に痺れるような快感が走った。
「あ、…っ、…ん、…――――…」
ロウの爪と牙は強力な媚薬だ。ユイは瞬く間に達し、ロウの耳を噛みしめたまま快感の衝撃に耐える。空いたばかりの穴に、神秘なる青い鉱石が差し込まれた。葡萄の実を象ったペアピアスが、それぞれの右耳と左耳で厳かに光る。
「愛してる、…――――」
快感に吹き飛びそうになるユイの身体を、ロウが鋭い一突きで奥まで穿ち、巧みに繋ぎとめる。満天の星。蒼い夜の静寂。神聖な湖の畔で、ユイとロウはこの上なく一つに溶け合い、固く硬く結びついた。
かつてユイが憧れたお互いに心酔し合うただの幸福な番になって、お互いを求め、快楽に震え、愉楽に興じ、境界が分からないほどどこまでも溶け落ちてゆく二人を祝福するように、耳元で一対の星が瞬いていた。
その夜。
人狼の森に無数の流星雨が降った。
碧き鉱石の誓いは時空を超越し、いつか、鹿王がいる狭間の向こう側の世界に行っても、永遠に結ばれたまま、二人共に星に還ると言われている。
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