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Ⅶユイの章【双翼】
02.
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「人間の都に行きたいなら連れていく。凍湖で滑りたいならそう言え。どこにでも連れて行ってやるから。だから、…」
凛々しい金色の瞳が困ったように揺れながら、それでも真っすぐにユイを射すくめる。
「お前を人狼の群れに縛り付けて悪いと思ってる。でも離せない。何でもしてやるから、もう黙っていなくなるな」
ロウの唇が乞うようにユイに触れた。
「ずっと俺のそばにいて」
「うん、……」
逞しく強靭な純白の毛並みを抱きしめると涙が出た。どれほどロウがユイを大切に思ってくれているか伝わってきて、胸がいっぱいになって溢れ出した。
「もう絶対離れない」
懐かしく安心するロウの匂いに包まれて、最初からここが居場所だったんだと実感した。
「あのう、ボス。ご兄妹、大変仲睦まじく結構なことですが……」
「虫けらにも情をかけるとは、寛大至極なことですが……」
洞窟の居城に戻ると、元老院たちがロウを待ち構えていた。ロウの腕の中にいるユイにねっとりとしたもの言いたげな視線を向け、ロウの後をついてくる。
「なんだ。はっきり言え」
ロウの声に威圧され、元老院たちがしばし押し黙る。やがて院長が覚悟を決めた様子で口を開いた。
「お世継ぎのための相手は番候補から選んでいただけますよね」
「いや。俺の相手はユイだ。ユイしか無理だ」
「そ、…そんな、即答っ!?」「も、もう少し躊躇とか」
「溜めを下さい、溜めをっ」
一切の迷いなくきっぱり言い切ったロウに、元老院たちから悲鳴が上がった。彼らに動揺が広がる。
「し、…しかしっ、しかしながらユイ様は、人間、かつ、血の繋がった双子の妹君ですぞ!?」
卒倒しそうに震えながら元老院長が叫ぶ。
「知ってる」
「ロウ様!?」
うんざりした様子のロウに、元老院たちが詰め寄る。
「そ、それがどういうことかお分かりですかっ。群れはっ、群れの時期統率者となる白き人狼が、…っ」
「院長、落ち着いて」
「黙らっしゃい!!」
中でも院長の勢いはすさまじく、目は血走り牙をむき出しにしている。
間違ってもロウに襲い掛かることはないだろうが、群れの中で揉め事になりそうだ。
「大丈夫だ。時期リーダーたる白き人狼は完璧な能力を持って生まれる」
張り詰めた空気の中、ロウの声が毅然と響いた。
「え、…」「ホント、…?」
ボスの断定的な一声に再び元老院たちにざわめきが広がる。
「何を根拠に、…?」
面食らったような院長が目をぱちぱちさせながらロウを見る。
「俺だ」
「ボスぅ!?」
曖昧過ぎるロウの根拠に院長が泣きそうな声を上げる。
「いや。ふざけているわけじゃない。俺には二世代にわたって人間の血が入っている。それでも白き人狼として群れに尽くせなかったことがあるか? 白き人狼には自分が番うべき相手が分かる。唯一の相手だ。そいつじゃなきゃ白き人狼は生まれない」
淡々と語るロウに場は静まり返った。
「だからどんなに優秀な雌を用意してくれても無理なんだよ。自分の相手は本能で分かる。最初から決まっている。白き人狼とはそういうものだ」
「そ、そうなん、…?」「え、いや、そうなの、…?」
ぽかんと口を開けたままの元老院たちを残して、ロウは居室に戻る。
「まあ、ボスの言うことは真理なんじゃないですか。ボスはユイにしか反応しないようだし」
「あんまり追い詰めると群れを捨てて人間になるかもしれませんよ」
ロウの側近であるヴィルとシュンの言葉に再び元老院たちから悲鳴が上がった。
「に、…人間っ!?」「ボスが人間にっ!?」
がくっ
「あ、院長」「お気を確かに」「しっかりしてっ」
ボスの有能な白きお世継ぎの誕生だけを生きがいにしてきた元老院長は、その場に頽れた。
凛々しい金色の瞳が困ったように揺れながら、それでも真っすぐにユイを射すくめる。
「お前を人狼の群れに縛り付けて悪いと思ってる。でも離せない。何でもしてやるから、もう黙っていなくなるな」
ロウの唇が乞うようにユイに触れた。
「ずっと俺のそばにいて」
「うん、……」
逞しく強靭な純白の毛並みを抱きしめると涙が出た。どれほどロウがユイを大切に思ってくれているか伝わってきて、胸がいっぱいになって溢れ出した。
「もう絶対離れない」
懐かしく安心するロウの匂いに包まれて、最初からここが居場所だったんだと実感した。
「あのう、ボス。ご兄妹、大変仲睦まじく結構なことですが……」
「虫けらにも情をかけるとは、寛大至極なことですが……」
洞窟の居城に戻ると、元老院たちがロウを待ち構えていた。ロウの腕の中にいるユイにねっとりとしたもの言いたげな視線を向け、ロウの後をついてくる。
「なんだ。はっきり言え」
ロウの声に威圧され、元老院たちがしばし押し黙る。やがて院長が覚悟を決めた様子で口を開いた。
「お世継ぎのための相手は番候補から選んでいただけますよね」
「いや。俺の相手はユイだ。ユイしか無理だ」
「そ、…そんな、即答っ!?」「も、もう少し躊躇とか」
「溜めを下さい、溜めをっ」
一切の迷いなくきっぱり言い切ったロウに、元老院たちから悲鳴が上がった。彼らに動揺が広がる。
「し、…しかしっ、しかしながらユイ様は、人間、かつ、血の繋がった双子の妹君ですぞ!?」
卒倒しそうに震えながら元老院長が叫ぶ。
「知ってる」
「ロウ様!?」
うんざりした様子のロウに、元老院たちが詰め寄る。
「そ、それがどういうことかお分かりですかっ。群れはっ、群れの時期統率者となる白き人狼が、…っ」
「院長、落ち着いて」
「黙らっしゃい!!」
中でも院長の勢いはすさまじく、目は血走り牙をむき出しにしている。
間違ってもロウに襲い掛かることはないだろうが、群れの中で揉め事になりそうだ。
「大丈夫だ。時期リーダーたる白き人狼は完璧な能力を持って生まれる」
張り詰めた空気の中、ロウの声が毅然と響いた。
「え、…」「ホント、…?」
ボスの断定的な一声に再び元老院たちにざわめきが広がる。
「何を根拠に、…?」
面食らったような院長が目をぱちぱちさせながらロウを見る。
「俺だ」
「ボスぅ!?」
曖昧過ぎるロウの根拠に院長が泣きそうな声を上げる。
「いや。ふざけているわけじゃない。俺には二世代にわたって人間の血が入っている。それでも白き人狼として群れに尽くせなかったことがあるか? 白き人狼には自分が番うべき相手が分かる。唯一の相手だ。そいつじゃなきゃ白き人狼は生まれない」
淡々と語るロウに場は静まり返った。
「だからどんなに優秀な雌を用意してくれても無理なんだよ。自分の相手は本能で分かる。最初から決まっている。白き人狼とはそういうものだ」
「そ、そうなん、…?」「え、いや、そうなの、…?」
ぽかんと口を開けたままの元老院たちを残して、ロウは居室に戻る。
「まあ、ボスの言うことは真理なんじゃないですか。ボスはユイにしか反応しないようだし」
「あんまり追い詰めると群れを捨てて人間になるかもしれませんよ」
ロウの側近であるヴィルとシュンの言葉に再び元老院たちから悲鳴が上がった。
「に、…人間っ!?」「ボスが人間にっ!?」
がくっ
「あ、院長」「お気を確かに」「しっかりしてっ」
ボスの有能な白きお世継ぎの誕生だけを生きがいにしてきた元老院長は、その場に頽れた。
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