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Ⅲユイの章【錯覚】
04.
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「…自分で、できる」
「いや、まだダメだ」
ロウが湯浴みに付いて来る。
ロウのおかげでユイの身体機能は順調に回復し、問題なく動き回れるところまで来ているように思うのだが、双子の兄は意外と過保護だ。
「鎮静されているから自覚はないだろうけど、まだ完全に治癒したわけじゃない。無理をすれば悪化する。お前、一日中俺と繋がっていたいのか」
「そ、……」
なんてことを言うのだ、この兄は。
そんなことされたら死んでしまう。今でさえ危ういというのに。
身体中の熱が顔に集まるのを感じる。
あながち間違ってもいないから困る。
「そんなわけないじゃん!」
羞恥に駆られて必要以上に強く否定すると、
「ふうん? 俺はそれでもいいけどな」
ロウはユイを抱き上げて、さらりと言ってのけた。
「な、…何言ってんの、バカじゃない、バカバカ」
「…冗談だ。暴れるな」
羞恥が過ぎてロウの腕の中でバタバタ悶えるユイを軽々と抱え直すと、ロウは居室から繋がっている浴室にユイを連れて入った。
癒し効果のあるハーブの芳しい匂いがする。
バスタブに張られた乳白色のお湯はまろやかで肌に優しく、骨の髄まで温めて心身をリラックスさせてくれる。
ユイはこのお湯がとても好きだ。
ロウと湯浴みするのは初めてではない。
ユイがまだ自力で動き回れなかった間、ロウはせっせとユイを洗い清めてくれた。ユイの好きなお湯と香りを用意して。
過保護な兄は妹の好みを熟知している。
「…気持ちいいな」
ユイを膝の上にのせて、後ろからロウが長い腕を伸ばす。純白の毛が湯面を漂って煌めいている。ロウの肉体は完璧だ。強く、麗しく、滑らかに引き締まっている。
この美しい身体が後ろにぴったり張り付いていると思うと、大好きなお湯に浸かっているのに、全くリラックスできない。その美しい肢体でどんな風にユイに触れ、どんな風にユイを蕩けさせるか、知りすぎてしまったユイは、ロウの身じろぎ一つで濡れてしまう。
「痕、付いてるな」
ロウの長い指が後ろからユイの肩を辿る。
ユイにはロウの噛み痕が付いている。ロウの牙で甘噛みされると心地よさが増大するので、睦び合っている時にもっともっととねだってしまうのだが、ロウに痕を付けられるのは正直嬉しい。
ユイの身体には内側にも外側にもロウの痕が色濃く残っているが、吸われたり噛まれたりして付いた痕は、分かりやすい所有印のようで、自分が丸ごとロウのものになったような気がする。
「痛くないか」
その痕を慈しむようにロウが舐める。
「や、ぁ…っ」
痛いわけない。知ってるくせに。
気持ち良くて、気持ち良くて、あっという間に全身がロウを欲しがる。
まろやかな湯水としなやかなロウに挟まれて、快感に身を震わせるユイが、涙目でロウを振り仰ぐと、
「お前、めちゃくちゃ感じやすいな」
ロウは甘やかに笑いながら、快感の吐息を漏らすユイの唇に舌を差し込んだ。
ロウに舌を弄ばれながら、張りつめた身体にお湯を擦り付けられる。気持ちいいのにもどかしくて、状況を忘れてねだってしまう。
「ロウ、…」
ロウはお湯の中でみだらに溢れ出すユイを後ろから突き上げて、簡単に昇華させた。
「いや、まだダメだ」
ロウが湯浴みに付いて来る。
ロウのおかげでユイの身体機能は順調に回復し、問題なく動き回れるところまで来ているように思うのだが、双子の兄は意外と過保護だ。
「鎮静されているから自覚はないだろうけど、まだ完全に治癒したわけじゃない。無理をすれば悪化する。お前、一日中俺と繋がっていたいのか」
「そ、……」
なんてことを言うのだ、この兄は。
そんなことされたら死んでしまう。今でさえ危ういというのに。
身体中の熱が顔に集まるのを感じる。
あながち間違ってもいないから困る。
「そんなわけないじゃん!」
羞恥に駆られて必要以上に強く否定すると、
「ふうん? 俺はそれでもいいけどな」
ロウはユイを抱き上げて、さらりと言ってのけた。
「な、…何言ってんの、バカじゃない、バカバカ」
「…冗談だ。暴れるな」
羞恥が過ぎてロウの腕の中でバタバタ悶えるユイを軽々と抱え直すと、ロウは居室から繋がっている浴室にユイを連れて入った。
癒し効果のあるハーブの芳しい匂いがする。
バスタブに張られた乳白色のお湯はまろやかで肌に優しく、骨の髄まで温めて心身をリラックスさせてくれる。
ユイはこのお湯がとても好きだ。
ロウと湯浴みするのは初めてではない。
ユイがまだ自力で動き回れなかった間、ロウはせっせとユイを洗い清めてくれた。ユイの好きなお湯と香りを用意して。
過保護な兄は妹の好みを熟知している。
「…気持ちいいな」
ユイを膝の上にのせて、後ろからロウが長い腕を伸ばす。純白の毛が湯面を漂って煌めいている。ロウの肉体は完璧だ。強く、麗しく、滑らかに引き締まっている。
この美しい身体が後ろにぴったり張り付いていると思うと、大好きなお湯に浸かっているのに、全くリラックスできない。その美しい肢体でどんな風にユイに触れ、どんな風にユイを蕩けさせるか、知りすぎてしまったユイは、ロウの身じろぎ一つで濡れてしまう。
「痕、付いてるな」
ロウの長い指が後ろからユイの肩を辿る。
ユイにはロウの噛み痕が付いている。ロウの牙で甘噛みされると心地よさが増大するので、睦び合っている時にもっともっととねだってしまうのだが、ロウに痕を付けられるのは正直嬉しい。
ユイの身体には内側にも外側にもロウの痕が色濃く残っているが、吸われたり噛まれたりして付いた痕は、分かりやすい所有印のようで、自分が丸ごとロウのものになったような気がする。
「痛くないか」
その痕を慈しむようにロウが舐める。
「や、ぁ…っ」
痛いわけない。知ってるくせに。
気持ち良くて、気持ち良くて、あっという間に全身がロウを欲しがる。
まろやかな湯水としなやかなロウに挟まれて、快感に身を震わせるユイが、涙目でロウを振り仰ぐと、
「お前、めちゃくちゃ感じやすいな」
ロウは甘やかに笑いながら、快感の吐息を漏らすユイの唇に舌を差し込んだ。
ロウに舌を弄ばれながら、張りつめた身体にお湯を擦り付けられる。気持ちいいのにもどかしくて、状況を忘れてねだってしまう。
「ロウ、…」
ロウはお湯の中でみだらに溢れ出すユイを後ろから突き上げて、簡単に昇華させた。
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