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Ⅲユイの章【錯覚】
01.
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「…だから。治療だから」
ちょっと怒ったみたいにロウが言うのは、ユイが人間に殺されかけてその尻拭いをしなければならなかったからだろう。勝手に森から出て行って、人間社会に受け入れられず、撃たれるという失態。
羽菱アキコに撃たれた時の衝撃は今も色濃く記憶に残っている。
死を意識した。
その後のことは覚えていないが、ロウが助けてくれなければ確実に死んでいただろう。
「…傷跡見せろ」
だからロウには感謝している。申し訳なくも思っている。
でもだけど。だからといって。
「…むり」
ロウに身体中隅々まで晒して、舐められて、撫でられて、奥深くまで入れられた挙句に注がれるというのは、…
死にたいくらい恥ずかしい。
「言うこと聞け。お前、死にかけたんだぞ」
「だって、…」
狼狽えて両腕で胸を隠してみるが、ロウは簡単に引きはがして片手でまとめ上げた。
「…大体。もう散々見たし、…」
ロウの長い舌が胸の下に残る傷跡をなぞる。羽菱アキコが放った弾丸は、胸の下と肩の内側に当たり、貫通したらしい。傷跡は今なお醜く残っているが、痛みはない。
「昔から見てるし、今更だろ」
なぜなら、ロウと交わって、ロウの体液を享受しているから。
白き人狼の体液は人間に高い治癒効果をもたらす。
撃たれた直後のユイは、恐らく相当深刻な状態だっただろうが、ロウが注いでくれたおかげで、破壊された細胞は再生し、機能を取り戻している。ロウの体液には鎮静催眠効果もあるから、痛みや辛さを感じずに療養することもできる。ここまで早く回復したのは、絶え間なく、惜しみなく、ロウが身体を繋げてユイを介抱してくれたからだろう。
自分の中をロウの一部が巡っているのを感じる。
身体中いたるところがロウの気配に満ちている。それがあまりにも濃厚で、離れていてもずっとロウと繋がっているような気がする。
「そういうこと、…言わないで、…っ」
それはユイにとって幸福に過ぎることだった。
でもだけど。だからといって。
平然と治療を受けるなんて出来ない。
だって、
「…ゃあ、……っ」
死ぬほど恥ずかしいし、変な声が出てしまうし、ロウが触れるところ全てが気持ち良くて、嬉しくて、身体中を駆け巡る歓喜の波に抗えず、あっという間に溶かされてしまうから。
「ロウ、それ、…っ」
ロウの大きな手のひらで背中を撫でられながら、露わになった胸の上を舌で辿られると、ねだるように先端が膨らんで張り出す。
「ん? 気持ちいい?」
ロウの舌に舐められ、辿られ、吸って、食まれて、瞬く間に快感の熾火を植え付けられる。
「や、…あ、…ぁっ、…――――――」
ロウの美しい金色の瞳に射抜くように見据えられて、沸き起こった快感の炎が一気に燃え上がる。恥ずかしいのに、もっとして欲しくて。身体中全部、ロウのものにして、ロウの熱で溶かして欲しい。
「舌出しな」
ダメなのに。気持ち良くなっちゃダメなのに。
快楽を教え込まれたユイの身体はロウの低い声に抗えない。
「いい子だ」
快感で涙目になりながらおずおずと伸ばした舌を、ロウの甘い舌先が、つついて、なぞって、巧みに絡めとる。
「ふ、…ぅ、…っ」
甘い舌にくるくる弄ばれて、身体の奥からぞくぞくする快感が込み上げる。すっかり抵抗できなくなったユイがロウに手を伸ばすと、ロウはユイをしっかり引き寄せ、髪に手を差し入れて、絡め合ったままの舌をユイの口内に割り入れた。
ちょっと怒ったみたいにロウが言うのは、ユイが人間に殺されかけてその尻拭いをしなければならなかったからだろう。勝手に森から出て行って、人間社会に受け入れられず、撃たれるという失態。
羽菱アキコに撃たれた時の衝撃は今も色濃く記憶に残っている。
死を意識した。
その後のことは覚えていないが、ロウが助けてくれなければ確実に死んでいただろう。
「…傷跡見せろ」
だからロウには感謝している。申し訳なくも思っている。
でもだけど。だからといって。
「…むり」
ロウに身体中隅々まで晒して、舐められて、撫でられて、奥深くまで入れられた挙句に注がれるというのは、…
死にたいくらい恥ずかしい。
「言うこと聞け。お前、死にかけたんだぞ」
「だって、…」
狼狽えて両腕で胸を隠してみるが、ロウは簡単に引きはがして片手でまとめ上げた。
「…大体。もう散々見たし、…」
ロウの長い舌が胸の下に残る傷跡をなぞる。羽菱アキコが放った弾丸は、胸の下と肩の内側に当たり、貫通したらしい。傷跡は今なお醜く残っているが、痛みはない。
「昔から見てるし、今更だろ」
なぜなら、ロウと交わって、ロウの体液を享受しているから。
白き人狼の体液は人間に高い治癒効果をもたらす。
撃たれた直後のユイは、恐らく相当深刻な状態だっただろうが、ロウが注いでくれたおかげで、破壊された細胞は再生し、機能を取り戻している。ロウの体液には鎮静催眠効果もあるから、痛みや辛さを感じずに療養することもできる。ここまで早く回復したのは、絶え間なく、惜しみなく、ロウが身体を繋げてユイを介抱してくれたからだろう。
自分の中をロウの一部が巡っているのを感じる。
身体中いたるところがロウの気配に満ちている。それがあまりにも濃厚で、離れていてもずっとロウと繋がっているような気がする。
「そういうこと、…言わないで、…っ」
それはユイにとって幸福に過ぎることだった。
でもだけど。だからといって。
平然と治療を受けるなんて出来ない。
だって、
「…ゃあ、……っ」
死ぬほど恥ずかしいし、変な声が出てしまうし、ロウが触れるところ全てが気持ち良くて、嬉しくて、身体中を駆け巡る歓喜の波に抗えず、あっという間に溶かされてしまうから。
「ロウ、それ、…っ」
ロウの大きな手のひらで背中を撫でられながら、露わになった胸の上を舌で辿られると、ねだるように先端が膨らんで張り出す。
「ん? 気持ちいい?」
ロウの舌に舐められ、辿られ、吸って、食まれて、瞬く間に快感の熾火を植え付けられる。
「や、…あ、…ぁっ、…――――――」
ロウの美しい金色の瞳に射抜くように見据えられて、沸き起こった快感の炎が一気に燃え上がる。恥ずかしいのに、もっとして欲しくて。身体中全部、ロウのものにして、ロウの熱で溶かして欲しい。
「舌出しな」
ダメなのに。気持ち良くなっちゃダメなのに。
快楽を教え込まれたユイの身体はロウの低い声に抗えない。
「いい子だ」
快感で涙目になりながらおずおずと伸ばした舌を、ロウの甘い舌先が、つついて、なぞって、巧みに絡めとる。
「ふ、…ぅ、…っ」
甘い舌にくるくる弄ばれて、身体の奥からぞくぞくする快感が込み上げる。すっかり抵抗できなくなったユイがロウに手を伸ばすと、ロウはユイをしっかり引き寄せ、髪に手を差し入れて、絡め合ったままの舌をユイの口内に割り入れた。
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