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Ⅷ章.龍王城で直接対決

05.アクア王は何でも知っている

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ルオのコピーたちのおかげで、アクアスーツの中に居ながら、龍王城の様子を隅々まで仔細しさいに観察することが出来た。

「ふむ。この城の地下には地下牢があったのか」

アクアとして過ごしていた海老沼さんも立ち入ったことのない場所があるらしく、何やらぶつぶつ言いながらパネルに映る映像を熱心に眺めている。

「あ、赤目ルオと青目ルオっ」

地下牢らしき薄暗く閉鎖的な空間の中に、【停止】状態の赤目ルオと青目ルオの姿を認めた。

「オレ、連れ戻してくるっ」

「無駄だ。彼らは完全に停止しているし、君が動けばアクア王が勘づく」

すぐにも飛び出そうとするルオを海老沼さんが止め、皮肉に笑う。

「まあ、その状態では一人で動くこともできないだろうが」

その通りなのだが、絶妙に気に障る。

「石化を解いてみる。もう地中でもマグマの海でもないんだし」

ルオは背中の龍剣と土の精霊チイに念を送った。固く丸くなってしっかり考えよと言ったチイとの約束は果たした。ルオがどうしたいのかははっきりしている。ともにいきるという【信念】を手に入れた。

「愚かなことを。石化を解いたらアクア王の【停止】をまともにくらうことに、…――――――」

石化を解こうと意識を集中させているルオには、海老沼さんの言葉は耳に入らない。

「う、うわぁぁぁ、…―――」

しかし、突如、脳みそをブレンダーでシェイクされたようなものすごい衝撃を受けた。

「な、…画像が、……っ」

同時に、ルオが乗りこんでいるアクア自体も衝撃に襲われ、海老沼さんが注視していた映像がぷつりと途切れた。アクアスーツが激しく揺れ、ルオも海老沼さんも吹き飛ばされて壁に激突した。

「うわあ」「わあ」「わあ」

バクテリアたちもてんでんばらばら飛ばされたようだ。

痛って、…衝撃を感じるということは、…――――

そっと目を開けると、ルオは元の人間の姿に戻り、背中に龍剣、胸元にペンダント、その上にチューリッピが乗っていた。石化を解くことに成功したらしい。ただし、アクアスーツの力で超小型化している。

「わああ、何をする、…っ」

しかしその間も、激しい揺れと衝撃は続く。海老沼さんがアクアスーツの外部モニターを確認すると、外側から仲間のアクアたちに攻撃されているようだ。

「私たちは仲間、…――っ」

海老沼さんが必死に説得しようとしているがアクアたちは無言、無表情で容赦ない。アクア光線で外側から切り込まれて、海老沼さんが誇るパネルやコンピュータが誤作動し、警戒音や爆発音が鳴り響く。火花や煙も上がっている。

どうなってるんだ。なんでアクアをアクアが攻撃してるんだ。

ルオはシェイクされてガンガン痛む頭を両手で支え、状況把握に努めた。

コピーたちから送られてくる通信が途切れた。仲間であるアクアたちから海老沼さんのアクアが襲われている。それはつまり、……

ルオは壁を蹴って上に登った。地震のように激しく揺れ動くアクアスーツは、『緊急事態、緊急事態』『危険』『避難』などの警告を表示しながら、身体を傾け、どしんとという派手な音を立てて地面に倒れ込んだ。

「どこへ行く!?」

上へ上へと巧みに駆け上がるルオに気づいた海老沼さんが手を伸ばすが、動揺し、衝撃を受けているその研究者の手はルオには届かなかった。宙ぶらりんに動くロボットアームがルオを捕まえるようで捕まえられない。ルオは揺れる壁、壊れて電光が散るパネルの上を駆け抜け、コピーたちがばらまかれたときに使われたアクアスーツの口から外に出た。

周りを沢山のアクアに囲まれ、海老沼さんのアクアスーツは切り刻まれ、めちゃくちゃに破壊されている。

「これは、……」

容赦ない攻撃に絶句する。

これは、…おそらく、アクア王にバレたのではないか。
海老沼さんがアクア化されたふりをして技術力を地上に持ち去ろうとしたことが。

ごおおお、…――――――

薄暗い城の中に禍々しい風が吹き抜ける。

アクア王が姿を現した。肩のあたりに風の精霊ビュウを連れている。この荒れ狂う風を生み出しているのはビュウだったのだ。

「ようやく尻尾を出したな。薄汚れた人間ども。この俺を出し抜けると思ったか」

ビュウが放つ強風の中に、ルオのコピーたちが晒され、ぐるぐると回っているのが見えた。
本体ルオが動く動かないにかかわらず、複製を作ってアクア王に近づこうとしたこともバレているようだ。もしかしたら、アクア王は海老沼さんのアクアスーツが怪しいことに気づきながら、わざと泳がしていたのかもしれない。

だって彼は、【叡智】を持っているのだから。
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