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Ⅷ章.龍王城で直接対決

06.アクア王VS不完全なルオ

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「本当に人間とはこざかしい生き物だ。人間さえいなければ、生物は自然の摂理に則って生きていけるものを」

アクア王が風の精霊ビュウを乗せた触手を振ると、黒い風が巻き起こり、ルオを乗せた海老沼さんのアクアスーツが空に浮かんだ。黒い風の中にはルオのコピーたちが渦巻いている。

「悔恨の念と共に永遠に時空の狭間を彷徨うが良い」

「うわあ、……―――っ」

アクアスーツごと、龍王城の外に飛ばされる。ルオはとっさにスーツから飛び降り、龍剣を抜いて唱えた。

「石化!!」

チイ、力を貸して。

再び自らを石化することで風に立ち向かう。チイがしてくれたように小さく硬いシスト状になることは出来なかったが、ルオの身体の外側が石のように固くなり、黒い風を受け止めた。ルオはぎりぎり城の中に留まり、アクア王、風の精霊ビュウと対峙する。

「弱っチイがっ! 邪魔立てするでないっ」

ビュウがすぐさま黒い風を仕掛けてくる。今度は高温の熱風に変わっていた。

「うわ、……っ」

熱い。身体の外側を石化しているのに風の温度を感じる。

「そんな生半可な防御じゃ、我の風は防げぬぞ」

ルオがダメージを受けていることを見抜き、ビュウはさらに高温の風を送りつける。まるで火の風だ。このままでは熱くて全身が黒焦げになってしまう。ルオの心臓は激しく鼓動し、息切れがし、汗が吹き出した。

……そうだ!

「冷却!!」

スィン、お願い。

ルオが叫ぶと龍剣から霧が噴出した。細かい霧状の水しぶきが、熱風と混ざり合う。龍剣が放つミストでルオの全身もたちまち冷却された。

「ふん、こしゃくな。こちらには火のピッピ姉さまが付いているっ」

吹き荒ぶ風の中にめらめらと炎が燃え上がる。
轟音をあげながら龍王城を火の海に変える炎と風に、ルオは歯を食いしばり、意識を水と土に集中させて耐える。しかし、ビュウが放つ炎の猛風はすさまじく、ミストはあっという間に蒸発してしまう。石化の防御も硬度を保てず、ぐにゃりと粘土のように歪んでしまった。

龍王城は炎に包まれ、壁は焼け、床に亀裂が走る。軋んだ城は次々に瓦礫となって崩れ落ちていく。

「ほほほほ。燃えよ燃えよ。不要なものは全て焼き払うのじゃ」

楽し気なビュウの叫びと共に、さらに激しい風が吹き荒れる。

「う、…っ」

灼熱の風が剝き出しになったルオの髪を肌を焦がした。耳をつんざくような唸りと共に、次々と襲いかかる炎の風。

熱い。痛い。苦しい。

「四元素の水と土はいわば防御。攻撃は火と風。残念だったな、龍神の子よ。防御だけでは私は倒せぬと言ったのを忘れたか」

炎の風に飲み込まれ、苦しむルオにアクア王の冷ややかな声が響く。その声に勢いづけられたように、ビュウの熱風が激しさを増す。

どうしよう。火の風に対抗できる、水と土の技、……

苦しくて、頭が回らない。ただただ焦りだけが空回りする。

「チューリッピ!」

熱さと苦しさで意識が朦朧としかけた時、琥珀のペンダントに乗ったチューリッピが叫んだ。
そうか、結界っ

「奥義【結】」

スィン、チイ、もう一度力を貸して。水の結界を作ろう!

龍剣から黄金の光が放たれ、霧が土と混ざり合ってルオの周りに水の結界を作った。燃え盛る炎の嵐が和らぐ。

「なるほど。お前は【結界】を手に入れたのだったな。だが、私の【停止】は【結界】を破ることが出来る。どのみちお前に勝ち目はない」

間一髪、水の結界で炎の風から身を守ったルオに、アクア王の冷たい声が聞こえる。

「奥義【停止】」

アクア王が心臓に隠し持ったドランの龍剣から、紫色の閃光がほとばしった。

やばい。停止させられたら結界を保てないっ

焦るルオも、水の結界も、アクア王から放たれた紫の【停止】に飲み込まれた。
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