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Ⅶ章.青色のスキル【信念】
02.石化してマントルを通過する
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「恐れてはなりません。ルオよ、わたくしの石化の力を授けましょう。じっと身を固くして、自分の中にある真実を見つめるのです。何が正しいのか、あなた自身で決めるのです」
地中で起こった砂嵐に再度巻き込まれ、為す術もないルオに、土の精霊チイの声が聞こえた。
そのとたん、液状だった身体がひとまとまりにギュッと凝縮されていくのを感じた。とてつもなく強い力が一つに集まり、これ以上ないほどルオの身体を小さくまとめる。自分が鉄の塊になったような、或いは強力なシェルターの中に閉じ込められたような気がする。
そういえば、寄生虫とかはシストと呼ばれる強力な膜を形成して、極寒、猛暑など過酷な環境でも生き残れるようにしていると聞いたことがある。そう、まさに。チイが授けてくれた石化はルオをシスト状にして守ってくれているかのようだ。
「弱っチイがっ、小癪な真似を!」
風の精霊ビュウが猛風を吹き付けてくるが、先ほどのように目や肌を傷つけられることはない。痛みも辛さも感じない。
すごい。石化ってなんてすごい力なんだろう。
ルオが感動していると、
「だったらそのまま地下の奥底に埋まってしまうがよい」
風の勢力が増して、石化したルオをさらに地下深くへと押し込め始めた。
ど、…どこまでいっちゃうの―――っ!?
既に地中深くにいるというのに、さらに奥底に沈むって、どうなってしまうんだろう。
風の勢いに乗ってぐんぐん地下を下っていくと、心配になってきた。
「恐れることはありません。地中は地殻、マントル、核と呼ばれる土の層によって構成されています。マントルを通り、土の層を通って進めば反対側の地表に出られるでしょう。地殻変動という言葉を聞いたことがあるでしょう。地中は動いているのです。埋まったままということはありません。土の中で長い時を過ごした種がやがて芽を出すように、その時までしっかりと自分の内に力を溜めるのです」
土の中を深く深く潜っていくルオに再びチイの声が届いた。
「ルオ、【信念】の番人を訪ねなさい。自身を見つめ直し、自分の信念を貫くのです」
なるほど。土の精霊は地中に身を隠したと言われていたけど、じっと身を固くして何が正しいか、どうするべきかを見極めていたんだ。いろいろな話を聞かされ、ルオは混乱していたが、チイに倣って自分を見つめ直すのは良い考えに思えた。
でも、……
マントルってものすごく熱いんじゃなかった?
核ってもっと熱いんじゃなかった?
石化ってどのくらいの高温に耐えられるんだろう。
一抹の不安を抱えながら、石化したルオはぐるぐると高速回転しながら地殻を掘り進み、マントルに突入していく。自分を取り囲む土の性質が変化したような気はするが、シスト状で守られているルオは高温高圧の過酷なマントルの状況に影響されることはなさそうだった。
ホント、すごいな。石化って。
地中では土がこんなに熱く燃えているのに、オレたちは全然気づかないんだ。
静かな人がどんな闘志や信念を内に秘めているのか分からないのと同じようなものなのかな。
「ようやく来ましたか。本体ルオはずいぶんのんびり屋さんですね」
マントルの中深くまで潜ったルオは、マントルの一部が溶かされ、マグマが発生している赤く開けた場所に出た。マグマの海の中に燦然と立つ一人の少年の姿がある。
「え、……ええっ!? 君は確か、……」
少年は転がり落ちてきた石化のルオを片手で受け止めるとあんぐり口をあけて自分の中に飲み込んだ。
「ここからはこの私、青目ルオを通してご体感ください」
ルオを飲み込んだ青目ルオがお茶目に告げる。
そう、少年は【複製】の番人ケツァルコアトルスにより鏡像世界に飛ばされたルオが作成したルオの【複製】の一人、攻撃感情型の赤目ルオとは対照的な、叡智理性型の青目ルオだったのだ。
地中で起こった砂嵐に再度巻き込まれ、為す術もないルオに、土の精霊チイの声が聞こえた。
そのとたん、液状だった身体がひとまとまりにギュッと凝縮されていくのを感じた。とてつもなく強い力が一つに集まり、これ以上ないほどルオの身体を小さくまとめる。自分が鉄の塊になったような、或いは強力なシェルターの中に閉じ込められたような気がする。
そういえば、寄生虫とかはシストと呼ばれる強力な膜を形成して、極寒、猛暑など過酷な環境でも生き残れるようにしていると聞いたことがある。そう、まさに。チイが授けてくれた石化はルオをシスト状にして守ってくれているかのようだ。
「弱っチイがっ、小癪な真似を!」
風の精霊ビュウが猛風を吹き付けてくるが、先ほどのように目や肌を傷つけられることはない。痛みも辛さも感じない。
すごい。石化ってなんてすごい力なんだろう。
ルオが感動していると、
「だったらそのまま地下の奥底に埋まってしまうがよい」
風の勢力が増して、石化したルオをさらに地下深くへと押し込め始めた。
ど、…どこまでいっちゃうの―――っ!?
既に地中深くにいるというのに、さらに奥底に沈むって、どうなってしまうんだろう。
風の勢いに乗ってぐんぐん地下を下っていくと、心配になってきた。
「恐れることはありません。地中は地殻、マントル、核と呼ばれる土の層によって構成されています。マントルを通り、土の層を通って進めば反対側の地表に出られるでしょう。地殻変動という言葉を聞いたことがあるでしょう。地中は動いているのです。埋まったままということはありません。土の中で長い時を過ごした種がやがて芽を出すように、その時までしっかりと自分の内に力を溜めるのです」
土の中を深く深く潜っていくルオに再びチイの声が届いた。
「ルオ、【信念】の番人を訪ねなさい。自身を見つめ直し、自分の信念を貫くのです」
なるほど。土の精霊は地中に身を隠したと言われていたけど、じっと身を固くして何が正しいか、どうするべきかを見極めていたんだ。いろいろな話を聞かされ、ルオは混乱していたが、チイに倣って自分を見つめ直すのは良い考えに思えた。
でも、……
マントルってものすごく熱いんじゃなかった?
核ってもっと熱いんじゃなかった?
石化ってどのくらいの高温に耐えられるんだろう。
一抹の不安を抱えながら、石化したルオはぐるぐると高速回転しながら地殻を掘り進み、マントルに突入していく。自分を取り囲む土の性質が変化したような気はするが、シスト状で守られているルオは高温高圧の過酷なマントルの状況に影響されることはなさそうだった。
ホント、すごいな。石化って。
地中では土がこんなに熱く燃えているのに、オレたちは全然気づかないんだ。
静かな人がどんな闘志や信念を内に秘めているのか分からないのと同じようなものなのかな。
「ようやく来ましたか。本体ルオはずいぶんのんびり屋さんですね」
マントルの中深くまで潜ったルオは、マントルの一部が溶かされ、マグマが発生している赤く開けた場所に出た。マグマの海の中に燦然と立つ一人の少年の姿がある。
「え、……ええっ!? 君は確か、……」
少年は転がり落ちてきた石化のルオを片手で受け止めるとあんぐり口をあけて自分の中に飲み込んだ。
「ここからはこの私、青目ルオを通してご体感ください」
ルオを飲み込んだ青目ルオがお茶目に告げる。
そう、少年は【複製】の番人ケツァルコアトルスにより鏡像世界に飛ばされたルオが作成したルオの【複製】の一人、攻撃感情型の赤目ルオとは対照的な、叡智理性型の青目ルオだったのだ。
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