【完結】七色のスキルを手に入れて龍宮城を取り戻せ。龍宮伝説ルオ・謎の生命体アクア王との対決!!

remo

文字の大きさ
上 下
49 / 78
Ⅵ章.赤色のスキル【攻撃】

06.水の精霊スィン

しおりを挟む
「チュー、チューリッピ!」

チューリッピが猛然と主張する。
なるほど。火の能力を使えって。

確かに。せっかく習得したんだし、【水】は【火】によって形を変えることが分かった。使えるような気がする。

「そうだね。火で氷を溶かしながら、精霊スィンを見つけよう」

心を閉ざしてしまった精霊スィンはどこにいるのだろう。
考えるルオの顔に吹雪が吹き付けてきた。

…そうか。
飛んでくる風雪に耐えながら、可能性に思い当たった。スィンがこの氷の監獄を作ったのなら、吹雪もスィンから噴き出しているんじゃないだろうか。だとしたら、吹雪いてくる方向に進めばいいんだ。

「メガさん。水の試練、習得してきます」
「おお、達者でな」

一旦メガロドンのメガと別れると、ルオは龍剣に熱を灯し、行く手を封じる氷の壁を次々と溶かしながら進んでいった。しかし突然上空から氷の塊が落ちてきたり、溶かしたことで氷の壁が崩れ落ちてきたりして、先行きは困難を極めた。散々苦労して進んだつもりだが、同じところをぐるぐるしているだけのような気がする。

この氷柱の壁、メガさんと別れたところじゃないか?

もしかしたら、一歩も進んでいないのではないかと思えてきた。

「ふぅー、氷って厳しいな」

氷の監獄と言われるくらいだ。そう簡単に脱出は出来ないのだろう。

ルオは地面に腰を下ろし、すぐにお尻の辺りが凍り付きそうになるのを感じた。うっかり座ったらここで氷の一部になってしまう。慌てて立ち上がり、頭にひらめいたことがある。

待てよ。水は龍神の力の源だろ。
ある程度氷を溶かして水にすれば、水中変化術を使えるんじゃないか。

我ながら名案のような気がする。

火の能力だって永久に使い続けられるわけじゃない。自分の周りを水に変え、小さくなって通り抜けよう。

「変化【小】」

龍剣で足元の氷を溶かし、水中変化術で身体を小さくして水に潜った。地表は氷に覆われていたが、地下に潜ると水が溜まっている。大きな氷の塊をよけながら、ルオは水中を泳いでいった。どのくらい進んできただろう。疲れを感じ始めた時、目の前に巨大な薄青色の壁が出現した。

分厚い氷に閉ざされた一角で、中が見えない。龍剣を向けて溶解を試みたが、まるで溶ける気配がない。きっと特殊な氷なのだ。

ひょっとして、…
思い当たることがあり、氷の壁を辿って上の方まで上昇してみた。地表を覆う氷を溶かし、頭だけ水面に出してみる。見上げると、薄青色の氷は遥か高くまでそびえ立っており、その頂から吹雪が吹き出しているようだった。

…やっぱり。
ルオは確信した。精霊スィンはこの薄青色の氷の中にいる。

「スィンさん! 水の精霊のスィンさ―――んっ。ちょっとお話したいことがあるんですけど。出てきて下さ―――いっ」

地表の水は溶かしても溶かしてもすぐに凍り付いてしまうので、ルオは再び水中に潜り、薄青色の氷に向かって呼びかけた。

「スィンさんってばぁ。ここにいるんでしょ? 返事して下さ――いっ」

懸命に呼びかけるが、うんともすんとも返事もなければ、目の前にそびえる分厚い氷もピクリとも動かない。無反応である。ルオはだんだん焦ってきた。

『龍神の双子よ。お前は遅すぎる。龍剣の力は私のものだ』
赤目ルオと火の精霊ピッピを連れ去った時、アクア王はそう宣言した。七つの力を手に入れて初めて龍剣を使いこなすことが出来るのだが、ルオは今のところ【結界】【回復】【複製】を習得した。アクア王は【停止】と【結界】を奪ったらしい。数からいったらルオの方が勝っているのだが、アクア王は自信満々だった。【停止】を使えば、他の力は使えなくなるからだろうか。

もう。だから、急がなきゃいけないんだって。
赤目ルオとピッピ。海老沼さんや佐藤さんと塩田さん。みんなを助け出してドランの龍剣も取り戻さなきゃいけないって言うのに。

正直、こんなところで分厚い氷の塊とにらめっこしている場合ではないのだ。

「スィンさ――――んっ。オレ、結構急いでるんです! 早くしないと龍剣の力が完全にアクア王のものになっちゃうんです。申し訳ないんですけど悲しみに暮れるのはちょっと後にしてもらって、オレに水の力を授けてもらえませんか―――っ!?」

ルオが懲りずに何度も呼び掛けていると、突然、薄青色の氷の塊が壁から飛び出し、ルオを遠くまで弾き飛ばした。

「やかましい!」

同時に、なんかヒステリックな女の子の声がする。相当怒っているような気がするが、とりあえず反応があったので一歩前進だ。ルオは氷の塊に乗ったまま、スイスイと薄青色の壁に近づき、再び呼びかけた。

「スィンさん。お返事してくれてありがとうございます。オレ、龍神ドランの双子の弟のルオです。龍剣に宿す七つの力を集めてるんですけど、【攻撃】を手に入れるには四元素の習得が必要らしくって、……」

「やかましいと言うておろうがっ」

再び、氷の塊が飛び出してルオを遠くにドーンと弾き飛ばす。さっきの五倍くらい遠くまで飛ばされた。勢いが強くなっている。
ルオを弾き飛ばすこの氷の塊は、スィンの怒りの象徴なのかもしれない。
多分、スィンはそうっとしておいてほしいのだ。心を閉ざしてじっと一人で悲しみに暮れていたいのだ。ルオの使命など知ったことではないのだろう。そもそも、スィンはどうして心を閉ざしてしまったのだろうか。

ルオは、スィンの状況も顧みず、自分の事情ばかりを押し付けてしまったことを反省した。
オレが力を得るために急いでいることと、スィンさんが悲しみに閉ざされていることは無関係だ。「悲しみに暮れるのはちょっと後にしてもらって」なんて、出来るはずがない。

ルオは深呼吸を繰り返し、心を落ち着けた。
【回復】の番人シロナガスクジラのスーガが言っていたではないか。
回復は、急げば急ぐほど遠ざかる、と。

スィンの悲しみが癒えるには時間が必要なんだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

空の話をしよう

源燕め
児童書・童話
「空の話をしよう」  そう言って、美しい白い羽を持つ羽人(はねひと)は、自分を助けた男の子に、空の話をした。    人は、空を飛ぶために、飛空艇を作り上げた。  生まれながらに羽を持つ羽人と人間の物語がはじまる。  

【総集編】日本昔話 パロディ短編集

Grisly
児童書・童話
❤️⭐️お願いします。  今まで発表した 日本昔ばなしの短編集を、再放送致します。 朝ドラの総集編のような物です笑 読みやすくなっているので、 ⭐️して、何度もお読み下さい。 読んだ方も、読んでない方も、 新しい発見があるはず! 是非お楽しみ下さい😄 ⭐︎登録、コメント待ってます。

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~

橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち! 友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。 第2回きずな児童書大賞参加作です。

見習い錬金術士ミミリの冒険の記録〜討伐も採集もお任せください!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?〜

うさみち
児童書・童話
【見習い錬金術士とうさぎのぬいぐるみたちが描く、スパイス混じりのゆるふわ冒険!情報収集のために、お仕事のご依頼も承ります!】 「……襲われてる! 助けなきゃ!」  錬成アイテムの採集作業中に訪れた、モンスターに襲われている少年との突然の出会い。  人里離れた山陵の中で、慎ましやかに暮らしていた見習い錬金術士ミミリと彼女の家族、機械人形(オートマタ)とうさぎのぬいぐるみ。彼女たちの運命は、少年との出会いで大きく動き出す。 「俺は、ある人たちから頼まれて預かり物を渡すためにここに来たんだ」  少年から渡された物は、いくつかの錬成アイテムと一枚の手紙。 「……この手紙、私宛てなの?」  少年との出会いをキッカケに、ミミリはある人、あるアイテムを探すために冒険を始めることに。  ――冒険の舞台は、まだ見ぬ世界へ。  新たな地で、右も左もわからないミミリたちの人探し。その方法は……。 「討伐、採集何でもします!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?」  見習い錬金術士ミミリの冒険の記録は、今、ここから綴られ始める。 《この小説の見どころ》 ①可愛いらしい登場人物 見習い錬金術士のゆるふわ少女×しっかり者だけど寂しがり屋の凄腕美少女剣士の機械人形(オートマタ)×ツンデレ魔法使いのうさぎのぬいぐるみ×コシヌカシの少年⁉︎ ②ほのぼのほんわか世界観 可愛いらしいに囲まれ、ゆったり流れる物語。読了後、「ほわっとした気持ち」になってもらいたいをコンセプトに。 ③時々スパイスきいてます! ゆるふわの中に時折現れるスパイシーな展開。そして時々ミステリー。 ④魅力ある錬成アイテム 錬金術士の醍醐味!それは錬成アイテムにあり。魅力あるアイテムを活用して冒険していきます。 ◾️第3章完結!現在第4章執筆中です。 ◾️この小説は小説家になろう、カクヨムでも連載しています。 ◾️作者以外による小説の無断転載を禁止しています。 ◾️挿絵はなんでも書いちゃうヨギリ酔客様からご寄贈いただいたものです。

鎌倉西小学校ミステリー倶楽部

澤田慎梧
児童書・童話
【「鎌倉猫ヶ丘小ミステリー倶楽部」に改題して、アルファポリスきずな文庫より好評発売中!】 https://kizuna.alphapolis.co.jp/book/11230 【「第1回きずな児童書大賞」にて、「謎解きユニーク探偵賞」を受賞】 市立「鎌倉西小学校」には不思議な部活がある。その名も「ミステリー倶楽部」。なんでも、「学校の怪談」の正体を、鮮やかに解明してくれるのだとか……。 学校の中で怪奇現象を目撃したら、ぜひとも「ミステリー倶楽部」に相談することをオススメする。 案外、つまらない勘違いが原因かもしれないから。 ……本物の「お化け」や「妖怪」が出てくる前に、相談しに行こう。 ※本作品は小学校高学年以上を想定しています。作中の漢字には、ふりがなが多く振ってあります。 ※本作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。 ※本作品は、三人の主人公を描いた連作短編です。誰を主軸にするかで、ジャンルが少し変化します。 ※カクヨムさんにも投稿しています(初出:2020年8月1日)

夢の中で人狼ゲーム~負けたら存在消滅するし勝ってもなんかヤバそうなんですが~

世津路 章
児童書・童話
《蒲帆フウキ》は通信簿にも“オオカミ少年”と書かれるほどウソつきな小学生男子。 友達の《東間ホマレ》・《印路ミア》と一緒に、時々担任のこわーい本間先生に怒られつつも、おもしろおかしく暮らしていた。 ある日、駅前で配られていた不思議なカードをもらったフウキたち。それは、夢の中で行われる《バグストマック・ゲーム》への招待状だった。ルールは人狼ゲームだが、勝者はなんでも願いが叶うと聞き、フウキ・ホマレ・ミアは他の参加者と対決することに。 だが、彼らはまだ知らなかった。 ゲームの敗者は、現実から存在が跡形もなく消滅すること――そして勝者ですら、ゲームに潜む呪いから逃れられないことを。 敗退し、この世から消滅した友達を取り戻すため、フウキはゲームマスターに立ち向かう。 果たしてウソつきオオカミ少年は、勝っても負けても詰んでいる人狼ゲームに勝利することができるのだろうか? 8月中、ほぼ毎日更新予定です。 (※他小説サイトに別タイトルで投稿してます)

処理中です...