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Ⅴ章.橙色のスキル【複製】
06.三人のドラン②泣き虫ドラン 後編
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どうして。結界が効かない?
そういえば先ほど時代系ドランと垂直の壁で出会ったアクアたちにも結界が効いていないようだった。
どういうことだろう。このアクアたちは何なんだ?
考えても分からず、ルオに防御の術はない。
「ル、ルオ、……っ」
「チュチュ、……っ」
泣き虫ドランとチューリッピを片腕に抱え、片手には龍剣を構えるが、四方八方から浴びせられるアクア光線にもはや為す術はなく、……
「うわああああ―――――――んっ! 怖いよ、ルオおおおおオ――――――んっ!!」
もう駄目だとあきらめかけたルオの耳元で、泣き虫ドランの大声が炸裂した。
うるさ、……!?
思わず耳をふさごうとしたルオの目の前で、「あああ」「おおお」というドランの泣き声が実体となって飛んでいき、アクアたちに次々とぶつかっていった。
「すご、……」
予想外の反撃にアクアたちがひるむ。
ルオも泣き虫ドランの思いがけない攻撃力に度肝を抜かれた。
ただの甘ったれた泣き虫だと思っていたのに、こんな能力を持っているなんて。すごい。すごいよ、ドラン。
「うわああああ―――――――んっ! ぎゃおおおおオ――――――んっ!!」
ドランの泣き声攻撃に、アクアたちが散り散りになっている。
よし。今だ!
アクア光線を恐れてアクアから逃げることしか考えていなかったルオだが、ドランの反撃を見て立ち向かうことに決めた。
「やってみよう!」
ルオは龍剣を構え、見よう見まねでアクアの中に突っ込み、切り付け、刺し貫いた。
「えいっ」「チュチュ」
「やあっ」「チュチュ」
「とうっ」「チューっ」
恐らく一緒に戦っているつもりのチューリッピが、ルオの胸元で両手の拳を振り回す。地味に当たって痛いような気もするが、気にしている余裕はない。
ルオは懸命にアクアたちに向かっていったが、どれだけ剣を振り回してもまるで手ごたえがなく、アクアはふわふわと漂うばかりだった。
どういうこと? まだオレの能力が低いから、アクアを倒せないの?
焦るルオに、体勢を立て直し、幾重にも連なってルオたちを取り囲んだアクアが、一斉に光線を発射した。
「うわあ――――、……っ」
「ルオぉぉぉ――――、……」
目がくらむようなアクア光線を諸に受けたルオは、衝撃に弾き飛ばされ、暗い坂道を頭からゴロゴロ転がり落ちるようにして、どこまでもどこまでも落ちていった。
「ヨー、おかえりヨー」
ようやく転がり終わった。未だぐるぐる回っている感がぬぐえない頭を振り、重い瞼を開けてみると、相変わらず陽気なテンションのパリピドランがルオを見ていた。
再び大広間に戻ってきたらしい。
「うわぁーん、怖かったね、ルオ―――っ」
ルオたちはアクア光線を受けたがアクアに変えられていない。元の人間、ハツカネズミ、泣き虫トカゲの姿のまま。アクアたちには結界も攻撃も利かないが、逆にアクア光線の効力もない。
もしかしたら、……
「あれは本物のアクアじゃなくて【複製】なんじゃ、……」
「ご名答~。じゃ、行きますか、ルオ。パーティの始まりだゼ、イエー」
踊るようにルオの腕によじ登ってきたパリピドランが、歌いながらステップを踏む。
そういうことか。この雲の居城に現れるアクアたちは全て【複製】なのだ。
そういえば先ほど時代系ドランと垂直の壁で出会ったアクアたちにも結界が効いていないようだった。
どういうことだろう。このアクアたちは何なんだ?
考えても分からず、ルオに防御の術はない。
「ル、ルオ、……っ」
「チュチュ、……っ」
泣き虫ドランとチューリッピを片腕に抱え、片手には龍剣を構えるが、四方八方から浴びせられるアクア光線にもはや為す術はなく、……
「うわああああ―――――――んっ! 怖いよ、ルオおおおおオ――――――んっ!!」
もう駄目だとあきらめかけたルオの耳元で、泣き虫ドランの大声が炸裂した。
うるさ、……!?
思わず耳をふさごうとしたルオの目の前で、「あああ」「おおお」というドランの泣き声が実体となって飛んでいき、アクアたちに次々とぶつかっていった。
「すご、……」
予想外の反撃にアクアたちがひるむ。
ルオも泣き虫ドランの思いがけない攻撃力に度肝を抜かれた。
ただの甘ったれた泣き虫だと思っていたのに、こんな能力を持っているなんて。すごい。すごいよ、ドラン。
「うわああああ―――――――んっ! ぎゃおおおおオ――――――んっ!!」
ドランの泣き声攻撃に、アクアたちが散り散りになっている。
よし。今だ!
アクア光線を恐れてアクアから逃げることしか考えていなかったルオだが、ドランの反撃を見て立ち向かうことに決めた。
「やってみよう!」
ルオは龍剣を構え、見よう見まねでアクアの中に突っ込み、切り付け、刺し貫いた。
「えいっ」「チュチュ」
「やあっ」「チュチュ」
「とうっ」「チューっ」
恐らく一緒に戦っているつもりのチューリッピが、ルオの胸元で両手の拳を振り回す。地味に当たって痛いような気もするが、気にしている余裕はない。
ルオは懸命にアクアたちに向かっていったが、どれだけ剣を振り回してもまるで手ごたえがなく、アクアはふわふわと漂うばかりだった。
どういうこと? まだオレの能力が低いから、アクアを倒せないの?
焦るルオに、体勢を立て直し、幾重にも連なってルオたちを取り囲んだアクアが、一斉に光線を発射した。
「うわあ――――、……っ」
「ルオぉぉぉ――――、……」
目がくらむようなアクア光線を諸に受けたルオは、衝撃に弾き飛ばされ、暗い坂道を頭からゴロゴロ転がり落ちるようにして、どこまでもどこまでも落ちていった。
「ヨー、おかえりヨー」
ようやく転がり終わった。未だぐるぐる回っている感がぬぐえない頭を振り、重い瞼を開けてみると、相変わらず陽気なテンションのパリピドランがルオを見ていた。
再び大広間に戻ってきたらしい。
「うわぁーん、怖かったね、ルオ―――っ」
ルオたちはアクア光線を受けたがアクアに変えられていない。元の人間、ハツカネズミ、泣き虫トカゲの姿のまま。アクアたちには結界も攻撃も利かないが、逆にアクア光線の効力もない。
もしかしたら、……
「あれは本物のアクアじゃなくて【複製】なんじゃ、……」
「ご名答~。じゃ、行きますか、ルオ。パーティの始まりだゼ、イエー」
踊るようにルオの腕によじ登ってきたパリピドランが、歌いながらステップを踏む。
そういうことか。この雲の居城に現れるアクアたちは全て【複製】なのだ。
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