36 / 78
Ⅴ章.橙色のスキル【複製】
04.三人のドラン①時代系ドラン 後編
しおりを挟む
「の、登れってこと!?」
「チュチュ―」
「御免っ」
ルオはチューリッピと時代ドランを身体に乗せたまま、壁に飛びついた。ふわりとした手ごたえを想像していたが、意外と硬い。おまけに壁は上から水が滴り落ちてきて、滑りやすく、
「うわぁっ」
手足をかける場所もないため、あっという間に転がり落ちる。
「痛てて、…っと痛くはないか」
床に叩きつけられたが、雲の城の床はそれなりに柔らかく、ルオは後方に連続回転して止まった。
立ち上がってよく見ると、前には壁。背後には扉。おまけに左右の壁もこちらに動いてくる。徐々にルオがいる空間が狭まっているのだ。
「登るしかないってこと!?」
「チュチュ、チュ―」
「お覚悟、ルオ殿」
再び壁に張り付くルオを、助けようと頭に登ったチューリッピが髪を引っ張り、足元に這って行ったドランが踵を押す。いや。くすぐったいだけであんまり役には、……
立っていないけれど、気持ちは嬉しいので、捕まるところのない垂直な壁を自分の手足だけで登り、ふと思いついて、壁に龍剣を刺してみた。ざくりという手ごたえとともに剣が壁に引っかかる。
「よし」
剣を手掛かりに壁をよじ登る。
必死で登るうちに上空に進み、背後の槍と刀、両側の壁の脅威はなくなったが、見下ろすと雲が遥か下に見える。
…高い。
この壁はどこまで続いているんだろう。落ちたらさすがに衝撃がすごいのでは。
不安が沸き起こるが登るしかない。
『ジャックと豆の木』のジャックは、こんな気持ちだったんだろうか。
果てしなくそびえたつ垂直の壁を龍剣だけを頼りに登っていると、なんとなく足元からうすら寒い空気を感じた。
「な、なに、…?」
そうっと下に目を向けてみると、垂直の壁の下方にぞろぞろとアクアたちが群がっているのが見えた。
やばい。結界っ
「奥義【結】」
慌てて結界を張るが、ルオに気づいているのかいないのか、アクアたちはひたすらぞろぞろと壁をせり上がってくる。その数は多く、龍剣を使って一歩一歩登っているルオよりも圧倒的に速い。
「追い付かれるっ」
「チュ、チュー――っ」
するとルオの肩から時代ドランが飛び降り、
「この壁を切るでござるっ」
ルオの足元に短刀を突き刺し、のこぎりで材木を切るかのようにギコギコと動かし始めた。
「ま、待って、ドラン。そこを切ったらアクアたちを切り離せるかもしれないけど、そもそも壁自体が崩れるんじゃ、……」
ルオが言い終わるか終わらないかのうちに、垂直の壁がぐらぐら揺れ始め、
「わ――――っ!」
「チュ―――っ!」
「御免っ」
巨大な壁が傾斜して、ぱったり下へと倒れていく。ルオ、チューリッピ、ドランも突き刺している龍剣もろとも下へ下へと壁と一緒に落ちていく。
「うわああああ~~~~~っ」
迫っていたアクアたちも壁の傾斜に押しつぶされて消えていく。
え。消えた……?
なぜアクアが消えたのか。考える間もなく、ルオは一面真っ白な雲海の中に超高速で叩きつけられた。
衝撃に思わずつむった目を開けると、
「うわ―――――ああんっ、ルオが帰ってきた―――――っ」
「お早いお帰りヨー、ふりだしに戻ったヨー」
泣き虫ドランとパリピドランがルオをのぞき込んでいる。
瞬きして辺りを見回す。見たことのある空間だと思い、気づいた。最初に三人のドランがいた大広間に戻ってきていた。
「チュチュ―」
「御免っ」
ルオはチューリッピと時代ドランを身体に乗せたまま、壁に飛びついた。ふわりとした手ごたえを想像していたが、意外と硬い。おまけに壁は上から水が滴り落ちてきて、滑りやすく、
「うわぁっ」
手足をかける場所もないため、あっという間に転がり落ちる。
「痛てて、…っと痛くはないか」
床に叩きつけられたが、雲の城の床はそれなりに柔らかく、ルオは後方に連続回転して止まった。
立ち上がってよく見ると、前には壁。背後には扉。おまけに左右の壁もこちらに動いてくる。徐々にルオがいる空間が狭まっているのだ。
「登るしかないってこと!?」
「チュチュ、チュ―」
「お覚悟、ルオ殿」
再び壁に張り付くルオを、助けようと頭に登ったチューリッピが髪を引っ張り、足元に這って行ったドランが踵を押す。いや。くすぐったいだけであんまり役には、……
立っていないけれど、気持ちは嬉しいので、捕まるところのない垂直な壁を自分の手足だけで登り、ふと思いついて、壁に龍剣を刺してみた。ざくりという手ごたえとともに剣が壁に引っかかる。
「よし」
剣を手掛かりに壁をよじ登る。
必死で登るうちに上空に進み、背後の槍と刀、両側の壁の脅威はなくなったが、見下ろすと雲が遥か下に見える。
…高い。
この壁はどこまで続いているんだろう。落ちたらさすがに衝撃がすごいのでは。
不安が沸き起こるが登るしかない。
『ジャックと豆の木』のジャックは、こんな気持ちだったんだろうか。
果てしなくそびえたつ垂直の壁を龍剣だけを頼りに登っていると、なんとなく足元からうすら寒い空気を感じた。
「な、なに、…?」
そうっと下に目を向けてみると、垂直の壁の下方にぞろぞろとアクアたちが群がっているのが見えた。
やばい。結界っ
「奥義【結】」
慌てて結界を張るが、ルオに気づいているのかいないのか、アクアたちはひたすらぞろぞろと壁をせり上がってくる。その数は多く、龍剣を使って一歩一歩登っているルオよりも圧倒的に速い。
「追い付かれるっ」
「チュ、チュー――っ」
するとルオの肩から時代ドランが飛び降り、
「この壁を切るでござるっ」
ルオの足元に短刀を突き刺し、のこぎりで材木を切るかのようにギコギコと動かし始めた。
「ま、待って、ドラン。そこを切ったらアクアたちを切り離せるかもしれないけど、そもそも壁自体が崩れるんじゃ、……」
ルオが言い終わるか終わらないかのうちに、垂直の壁がぐらぐら揺れ始め、
「わ――――っ!」
「チュ―――っ!」
「御免っ」
巨大な壁が傾斜して、ぱったり下へと倒れていく。ルオ、チューリッピ、ドランも突き刺している龍剣もろとも下へ下へと壁と一緒に落ちていく。
「うわああああ~~~~~っ」
迫っていたアクアたちも壁の傾斜に押しつぶされて消えていく。
え。消えた……?
なぜアクアが消えたのか。考える間もなく、ルオは一面真っ白な雲海の中に超高速で叩きつけられた。
衝撃に思わずつむった目を開けると、
「うわ―――――ああんっ、ルオが帰ってきた―――――っ」
「お早いお帰りヨー、ふりだしに戻ったヨー」
泣き虫ドランとパリピドランがルオをのぞき込んでいる。
瞬きして辺りを見回す。見たことのある空間だと思い、気づいた。最初に三人のドランがいた大広間に戻ってきていた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
がらくた屋 ふしぎ堂のヒミツ
三柴 ヲト
児童書・童話
『がらくた屋ふしぎ堂』
――それは、ちょっと変わった不思議なお店。
おもちゃ、駄菓子、古本、文房具、骨董品……。子どもが気になるものはなんでもそろっていて、店主であるミチばあちゃんが不在の時は、太った変な招き猫〝にゃすけ〟が代わりに商品を案内してくれる。
ミチばあちゃんの孫である小学6年生の風間吏斗(かざまりと)は、わくわく探しのため毎日のように『ふしぎ堂』へ通う。
お店に並んだ商品の中には、普通のがらくたに混じって『神商品(アイテム)』と呼ばれるレアなお宝もたくさん隠されていて、悪戯好きのリトはクラスメイトの男友達・ルカを巻き込んで、神商品を使ってはおかしな事件を起こしたり、逆にみんなの困りごとを解決したり、毎日を刺激的に楽しく過ごす。
そんなある日のこと、リトとルカのクラスメイトであるお金持ちのお嬢様アンが行方不明になるという騒ぎが起こる。
彼女の足取りを追うリトは、やがてふしぎ堂の裏庭にある『蔵』に隠された〝ヒミツの扉〟に辿り着くのだが、扉の向こう側には『異世界』や過去未来の『時空を超えた世界』が広がっていて――⁉︎
いたずら好きのリト、心優しい少年ルカ、いじっぱりなお嬢様アンの三人組が織りなす、事件、ふしぎ、夢、冒険、恋、わくわく、どきどきが全部詰まった、少年少女向けの現代和風ファンタジー。
あさはんのゆげ
深水千世
児童書・童話
【映画化】私を笑顔にするのも泣かせるのも『あさはん』と彼でした。
7月2日公開オムニバス映画『全員、片想い』の中の一遍『あさはんのゆげ』原案作品。
千葉雄大さん・清水富美加さんW主演、監督・脚本は山岸聖太さん。
彼は夏時雨の日にやって来た。
猫と画材と糠床を抱え、かつて暮らした群馬県の祖母の家に。
食べることがないとわかっていても朝食を用意する彼。
彼が救いたかったものは。この家に戻ってきた理由は。少女の心の行方は。
彼と過ごしたひと夏の日々が輝きだす。
FMヨコハマ『アナタの恋、映画化します。』受賞作品。
エブリスタにて公開していた作品です。
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
GREATEST BOONS+
丹斗大巴
児童書・童話
幼なじみの2人がグレイテストブーンズ(偉大なる恩恵)を生み出しつつ、異世界の7つの秘密を解き明かしながらほのぼの旅をする物語。
異世界に飛ばされて、小学生の年齢まで退行してしまった幼なじみの銀河と美怜。とつじょ不思議な力に目覚め、Greatest Boons(グレイテストブーンズ:偉大なる恩恵)をもたらす新しい生き物たちBoons(ブーンズ)を生みだし、規格外のインベントリ&ものづくりスキルを使いこなす! ユニークスキルのおかげでサバイバルもトラブルもなんのその! クリエイト系の2人が旅する、ほのぼの異世界珍道中。
便利な「しおり」機能、「お気に入り登録」して頂くと、最新更新のお知らせが届いて便利です!
放課後モンスタークラブ
まめつぶいちご
児童書・童話
タイトル変更しました!20230704
------
カクヨムの児童向け異世界転移ファンタジー応募企画用に書いた話です。
・12000文字以内
・長編に出来そうな種を持った短編
・わくわくする展開
というコンセプトでした。
こちらにも置いておきます。
評判が良ければ長編として続き書きたいです。
長編時のプロットはカクヨムのあらすじに書いてあります
---------
あらすじ
---------
「えええ?! 私! 兎の獣人になってるぅー!?」
ある日、柚乃は旧図書室へ消えていく先生の後を追って……気が付いたら異世界へ転移していた。
見たこともない光景に圧倒される柚乃。
しかし、よく見ると自分が兎の獣人になっていることに気付く。
見習い錬金術士ミミリの冒険の記録〜討伐も採集もお任せください!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?〜
うさみち
児童書・童話
【見習い錬金術士とうさぎのぬいぐるみたちが描く、スパイス混じりのゆるふわ冒険!情報収集のために、お仕事のご依頼も承ります!】
「……襲われてる! 助けなきゃ!」
錬成アイテムの採集作業中に訪れた、モンスターに襲われている少年との突然の出会い。
人里離れた山陵の中で、慎ましやかに暮らしていた見習い錬金術士ミミリと彼女の家族、機械人形(オートマタ)とうさぎのぬいぐるみ。彼女たちの運命は、少年との出会いで大きく動き出す。
「俺は、ある人たちから頼まれて預かり物を渡すためにここに来たんだ」
少年から渡された物は、いくつかの錬成アイテムと一枚の手紙。
「……この手紙、私宛てなの?」
少年との出会いをキッカケに、ミミリはある人、あるアイテムを探すために冒険を始めることに。
――冒険の舞台は、まだ見ぬ世界へ。
新たな地で、右も左もわからないミミリたちの人探し。その方法は……。
「討伐、採集何でもします!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?」
見習い錬金術士ミミリの冒険の記録は、今、ここから綴られ始める。
《この小説の見どころ》
①可愛いらしい登場人物
見習い錬金術士のゆるふわ少女×しっかり者だけど寂しがり屋の凄腕美少女剣士の機械人形(オートマタ)×ツンデレ魔法使いのうさぎのぬいぐるみ×コシヌカシの少年⁉︎
②ほのぼのほんわか世界観
可愛いらしいに囲まれ、ゆったり流れる物語。読了後、「ほわっとした気持ち」になってもらいたいをコンセプトに。
③時々スパイスきいてます!
ゆるふわの中に時折現れるスパイシーな展開。そして時々ミステリー。
④魅力ある錬成アイテム
錬金術士の醍醐味!それは錬成アイテムにあり。魅力あるアイテムを活用して冒険していきます。
◾️第3章完結!現在第4章執筆中です。
◾️この小説は小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
◾️作者以外による小説の無断転載を禁止しています。
◾️挿絵はなんでも書いちゃうヨギリ酔客様からご寄贈いただいたものです。
魔王の飼い方説明書
ASOBIVA
児童書・童話
恋愛小説を書く予定でしたが
魔界では魔王様と恐れられていたが
ひょんな事から地球に異世界転生して女子高生に拾われてしまうお話を書いています。
短めのクスッと笑えるドタバタこめでぃ。
実際にあるサービスをもじった名称や、魔法なども滑り倒す覚悟でふざけていますがお許しを。
是非空き時間にどうぞ(*^_^*)
あなたも魔王を飼ってみませんか?
魔王様と女子高生の365日後もお楽しみに。
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる