34 / 78
Ⅴ章.橙色のスキル【複製】
02.ドランが三人!?
しおりを挟む
先に入ったはずのケツァルコアトルスの姿は見えない。
ルオはそろそろと城の中を進み、やがて広々とした大広間に出た。
「え、…!?」
すると、そこには。
「よう、ルオ。遅かったじゃん。なにはともあれ、乾杯といこうぜ」
「ルオ? ボク心配で心配で昼しか眠れなかったんだよ? 大丈夫だった?」
「このような失態、拙者の不徳の致すところ。ルオ殿、お許し下され」
アクア王に廃墟の結界を破られたとき、アンモによって逃がされたというドランがいた。
「ド、ドラン――――っ!?」
…なぜか三人も。
「ど、どうしちゃったの、ドラン? なんで三人に増えてるの!?」
仰天するルオに、それぞれのドランが応える。
「ま、そんなことも時には必要じゃん。慌てず騒がず、飲めや歌おうゼ、イエー」
トカゲのくせにサングラスをかけてご機嫌なパリピドラン。
「ああ―――ん、ルオぉぉぉーぅ。無事で良かった。もう絶対にボクから離れないでね」
ルオにひしっとしがみついて涙を流し、「安心したらお腹空いちゃったぁ」と無垢な瞳でテヘヘと笑う泣き虫子犬系ドラン。
「ご無事であられたとはいえ、ルオ殿を危険にさらすなど。死んでお詫び申し上げる」
黒ずくめの衣装を身にまとい、妙に時代がかった態度で、懐から抜いた短刀で己を刺そうとする律儀で義理堅く頭が固そうな時代系忠心ドラン。
えええ―――、ドランが三人になっちゃってる――――――っ!? しかもみんな癖が強そうというか、三者三様なんだけど!?
ルオは目を見開き、瞬いてみた。ドランは三人。目をつむって頭を振ってみた。やっぱり三人。
どういうことだろう。考えて、一つの可能性に思い当たった。
「ひょっとしたら、【複製】の力なのかな。ケツァルコアトルスは、【複製】の番人なんじゃない?」
すると、
「さすがルオだゼ、イエー」
「ボクが本物のドランだけどね」
「拙者と一緒に玉座の間にいるケツァルコに会いに行くでござる」
三人のドランが近寄ってきた。まじまじ見ると、外見は全くドランのまま。奇妙な青いトカゲである。しかし内面の個性がそれぞれににじみ出ている。パリピドラン、泣き虫ドラン、時代系ドラン。
【複製】って一体どんな力なんだろう。この三人のうち、一人が本物で後の二人は複製なんだろうか。
三人のドランを見比べながら考えてみた。元のドランに一番近いのは陽気なパリピドランのような気がするけれど、…
「チューチュチュー」
「とりあえず、行ってみようって?」
チューリッピがペンダントに乗ったままルオを促す。
確かに。玉座の間にいるというケツァルコに会いに行けば【複製】の力について分かるはずだし、その能力も手に入れられる。恐ろしく広大な雲の居城の中にある玉座の間に行くには、三人のうち、案内役としてドランを一人選ばないとならないらしい。
本物のドランを選んだらたどり着けるんだろうか。だとしたら、
「こっちだヨ、イエー。俺と行くのが一番早イエー」
「ボクを信じて。じゃなきゃ泣いちゃうから」
「拙者、紀元前から忠義を尽くしてきたタイプござる」
「じゃ、…じゃあ、行こうか。ドラン」
ルオがパリピドランに手を差し出すと、途端に残り二人のドランが騒ぎ出した。
「ひどいよ、ルオ。ボクを置いていくなんてえぇぇ―――っ」
さっそく泣き出す泣き虫ドラン。
「切腹、切腹でござるっ」
短刀を自分に刺そうとする時代系ドラン。
「わぁー、待ってよ。二人とも。落ち着いて。落ち着いてって」
慌てて二人をなだめると、
「じゃあボクと」「拙者と」
すかさず泣き虫ドランと時代系ドランに迫られる。
「う、…じゃあ。とりあえず、行こうか。ドラン」
ドランに切腹などされては困るので、時代系ドランに手を差し出してみた。
「遠回りするゼ、イエー」
「ルオぉぉぉ――――っ」
たちまち残り二人からブーイングが起こるが、仕方がない。正解にたどり着くのが遅くなったとしても、大きな問題はないだろう。
ルオはそろそろと城の中を進み、やがて広々とした大広間に出た。
「え、…!?」
すると、そこには。
「よう、ルオ。遅かったじゃん。なにはともあれ、乾杯といこうぜ」
「ルオ? ボク心配で心配で昼しか眠れなかったんだよ? 大丈夫だった?」
「このような失態、拙者の不徳の致すところ。ルオ殿、お許し下され」
アクア王に廃墟の結界を破られたとき、アンモによって逃がされたというドランがいた。
「ド、ドラン――――っ!?」
…なぜか三人も。
「ど、どうしちゃったの、ドラン? なんで三人に増えてるの!?」
仰天するルオに、それぞれのドランが応える。
「ま、そんなことも時には必要じゃん。慌てず騒がず、飲めや歌おうゼ、イエー」
トカゲのくせにサングラスをかけてご機嫌なパリピドラン。
「ああ―――ん、ルオぉぉぉーぅ。無事で良かった。もう絶対にボクから離れないでね」
ルオにひしっとしがみついて涙を流し、「安心したらお腹空いちゃったぁ」と無垢な瞳でテヘヘと笑う泣き虫子犬系ドラン。
「ご無事であられたとはいえ、ルオ殿を危険にさらすなど。死んでお詫び申し上げる」
黒ずくめの衣装を身にまとい、妙に時代がかった態度で、懐から抜いた短刀で己を刺そうとする律儀で義理堅く頭が固そうな時代系忠心ドラン。
えええ―――、ドランが三人になっちゃってる――――――っ!? しかもみんな癖が強そうというか、三者三様なんだけど!?
ルオは目を見開き、瞬いてみた。ドランは三人。目をつむって頭を振ってみた。やっぱり三人。
どういうことだろう。考えて、一つの可能性に思い当たった。
「ひょっとしたら、【複製】の力なのかな。ケツァルコアトルスは、【複製】の番人なんじゃない?」
すると、
「さすがルオだゼ、イエー」
「ボクが本物のドランだけどね」
「拙者と一緒に玉座の間にいるケツァルコに会いに行くでござる」
三人のドランが近寄ってきた。まじまじ見ると、外見は全くドランのまま。奇妙な青いトカゲである。しかし内面の個性がそれぞれににじみ出ている。パリピドラン、泣き虫ドラン、時代系ドラン。
【複製】って一体どんな力なんだろう。この三人のうち、一人が本物で後の二人は複製なんだろうか。
三人のドランを見比べながら考えてみた。元のドランに一番近いのは陽気なパリピドランのような気がするけれど、…
「チューチュチュー」
「とりあえず、行ってみようって?」
チューリッピがペンダントに乗ったままルオを促す。
確かに。玉座の間にいるというケツァルコに会いに行けば【複製】の力について分かるはずだし、その能力も手に入れられる。恐ろしく広大な雲の居城の中にある玉座の間に行くには、三人のうち、案内役としてドランを一人選ばないとならないらしい。
本物のドランを選んだらたどり着けるんだろうか。だとしたら、
「こっちだヨ、イエー。俺と行くのが一番早イエー」
「ボクを信じて。じゃなきゃ泣いちゃうから」
「拙者、紀元前から忠義を尽くしてきたタイプござる」
「じゃ、…じゃあ、行こうか。ドラン」
ルオがパリピドランに手を差し出すと、途端に残り二人のドランが騒ぎ出した。
「ひどいよ、ルオ。ボクを置いていくなんてえぇぇ―――っ」
さっそく泣き出す泣き虫ドラン。
「切腹、切腹でござるっ」
短刀を自分に刺そうとする時代系ドラン。
「わぁー、待ってよ。二人とも。落ち着いて。落ち着いてって」
慌てて二人をなだめると、
「じゃあボクと」「拙者と」
すかさず泣き虫ドランと時代系ドランに迫られる。
「う、…じゃあ。とりあえず、行こうか。ドラン」
ドランに切腹などされては困るので、時代系ドランに手を差し出してみた。
「遠回りするゼ、イエー」
「ルオぉぉぉ――――っ」
たちまち残り二人からブーイングが起こるが、仕方がない。正解にたどり着くのが遅くなったとしても、大きな問題はないだろう。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件
フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。
寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。
プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い?
そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない!
スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる