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Ⅴ章.橙色のスキル【複製】
01.橙の【複製】番人ケツァルコアトルス
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【回復】の番人シロナガスクジラのスーガが、巨大な潮吹きによりルオとチューリッピを打ち上げた。大空の彼方へ飛ばされた二人は、ものすごい勢いで空をぐんぐん進み、雲の居城にたどり着いた。勢いあまって頭から雲の中に突っ込んだが、白く柔らかい雲にふんわり優しく包まれた。
「すごーい。ふかふかでふわふわ。どこまでも続いてる」
「チュチュー、チューリッピ」
頭を引き抜いてふるふる振る。見渡す限りの白い雲が幾重にも重なってどこまでも続いている。【回復】を手に入れたおかげで、ルオもチューリッピも身ぎれいになって傷一つなく、エネルギーチャージは満タン。
「すごいすごーいっ」
大きな雲が果てしなく広がる夢のような世界に、二人は我を忘れてはしゃぎまわった。
飛んだり跳ねたり。転がったり逆立ちしたり。バタ足したり追いかけっこしたり。
大はしゃぎで動き回ってさすがに疲れ、並んで寝転ぶ。雲は肌触りがよく、柔らかいがしっかりとルオを受け止めてくれる。穏やかで安心して心地よい眠りに誘われる。
「ふああ~~~」
思わずあくびが出て、隣を見ると、チューリッピも小さな口を開け眠そうに伸びをしていた。
学校の理科の授業で、雲は水蒸気で出来ていると習った気がする。そうだとしたら、この雲は雲じゃないのかもしれない。ふと思いついて顔の横にある雲をひとつまみつまんで口に入れてみた。
「甘、…っ」
ふわりと口の中で溶ける。甘い砂糖菓子のような味がする。
「チュチュ」
早速チューリッピも真似して雲を口に入れ、目を輝かせている。美味しいらしい。
「この雲はわたあめなのかな?」
そういえば、海洋研究所の豪華客船で、わたあめにくるまれて眠っていたことがあった。
あの時も夢がかなったような気がしたけど、なんというか、スケールが違う。時間も空間もすべてが広大で自由だ。アクアに侵略される前は、ルオが想像した通りののどかで平和な夢のような世界だったに違いない。
それにしても、…
アクアって何者なんだろう。
気になったが、考えても分かるはずもない。
「チューリッピ、お城の中に行ってみよう」
「チュ―」
立ち上がって歩き出した二人の頭上に大きな影が出来た。
振り仰ぐと、巨大な鳥が上空から降りてくる。
鳥? いや、あんな大きい鳥いるか?
翼を広げて飛ぶ姿は壮大で、大きさは軽くルオの十倍はありそうだ。長い首、大きく尖ったくちばし、巨大な翼。
風を巻き起こしながらルオの頭上を通り過ぎていった鳥を見て、
「ケツァルコアトルスだ!」
その正体に思い当たった。
遥か昔に生息していた恐竜で、世界最大の翼竜と言われるケツァルコアトルスに違いない。
「すごい! ケツァルコがいるなんて。すごいっ、すごいよ、チューリッピ!」
ルオは興奮してチューリッピの手を取った。この目で生きた恐竜を見られるなんて。
と感動しているルオは、自分も龍だという自覚はない。
双子のドランも龍のはずだけど、見た目はトカゲだし。
ルオはチューリッピの手を取って全速力でケツァルコアトルスの後を追った。ケツァルコアトルスは優雅な動きで下降し、雲が重なり合って造られている居城の中へと入っていった。
「失礼しまーす」
遅れて居城に着いたルオとチューリッピは、荘厳な造りの門をくぐり、巨大な扉を押し開けて、恐る恐る中へ入る。雲で出来たお城は壁も柱もふわふわしていて、夢の中にいるようだった。
「すごーい。ふかふかでふわふわ。どこまでも続いてる」
「チュチュー、チューリッピ」
頭を引き抜いてふるふる振る。見渡す限りの白い雲が幾重にも重なってどこまでも続いている。【回復】を手に入れたおかげで、ルオもチューリッピも身ぎれいになって傷一つなく、エネルギーチャージは満タン。
「すごいすごーいっ」
大きな雲が果てしなく広がる夢のような世界に、二人は我を忘れてはしゃぎまわった。
飛んだり跳ねたり。転がったり逆立ちしたり。バタ足したり追いかけっこしたり。
大はしゃぎで動き回ってさすがに疲れ、並んで寝転ぶ。雲は肌触りがよく、柔らかいがしっかりとルオを受け止めてくれる。穏やかで安心して心地よい眠りに誘われる。
「ふああ~~~」
思わずあくびが出て、隣を見ると、チューリッピも小さな口を開け眠そうに伸びをしていた。
学校の理科の授業で、雲は水蒸気で出来ていると習った気がする。そうだとしたら、この雲は雲じゃないのかもしれない。ふと思いついて顔の横にある雲をひとつまみつまんで口に入れてみた。
「甘、…っ」
ふわりと口の中で溶ける。甘い砂糖菓子のような味がする。
「チュチュ」
早速チューリッピも真似して雲を口に入れ、目を輝かせている。美味しいらしい。
「この雲はわたあめなのかな?」
そういえば、海洋研究所の豪華客船で、わたあめにくるまれて眠っていたことがあった。
あの時も夢がかなったような気がしたけど、なんというか、スケールが違う。時間も空間もすべてが広大で自由だ。アクアに侵略される前は、ルオが想像した通りののどかで平和な夢のような世界だったに違いない。
それにしても、…
アクアって何者なんだろう。
気になったが、考えても分かるはずもない。
「チューリッピ、お城の中に行ってみよう」
「チュ―」
立ち上がって歩き出した二人の頭上に大きな影が出来た。
振り仰ぐと、巨大な鳥が上空から降りてくる。
鳥? いや、あんな大きい鳥いるか?
翼を広げて飛ぶ姿は壮大で、大きさは軽くルオの十倍はありそうだ。長い首、大きく尖ったくちばし、巨大な翼。
風を巻き起こしながらルオの頭上を通り過ぎていった鳥を見て、
「ケツァルコアトルスだ!」
その正体に思い当たった。
遥か昔に生息していた恐竜で、世界最大の翼竜と言われるケツァルコアトルスに違いない。
「すごい! ケツァルコがいるなんて。すごいっ、すごいよ、チューリッピ!」
ルオは興奮してチューリッピの手を取った。この目で生きた恐竜を見られるなんて。
と感動しているルオは、自分も龍だという自覚はない。
双子のドランも龍のはずだけど、見た目はトカゲだし。
ルオはチューリッピの手を取って全速力でケツァルコアトルスの後を追った。ケツァルコアトルスは優雅な動きで下降し、雲が重なり合って造られている居城の中へと入っていった。
「失礼しまーす」
遅れて居城に着いたルオとチューリッピは、荘厳な造りの門をくぐり、巨大な扉を押し開けて、恐る恐る中へ入る。雲で出来たお城は壁も柱もふわふわしていて、夢の中にいるようだった。
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