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Ⅲ章.黄色のスキル【結界】
06.【停止】と【結界】を奪われた
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「アンモさん、大丈夫? ルオだよ。しっかりして」
ルオが持ってきた革袋の水をアンモにそっとかけると、アンモナイトはぎくしゃくと震えながら殻から顔をのぞかせた。痛々しく半分潰れかけ、目も開けないようだ。
「ルオ様。申し訳ありません。アクア王に、……」
言ってアンモは苦しそうに全身を震わせた。見るに堪えないひどい怪我でとてもつらそうだ。チューリッピも心配そうにアンモの周りをちょろちょろしている。
「水、飲める?」
アンモの頭を抱え持ちながら、ルオは革袋の水を飲ませた。
「ありがとうございます、ルオ様。申し訳ありません、私としたことが、アクア王に急襲され、結界の力を奪われました。とっさにドラン様だけは結界に閉じ込めたまま遠くへ飛ばしたのですが、ご無事であられるか分かりません」
アンモが苦し気に話し出す。
この凄惨な状況は突然襲ってきたアクア王によるものだったのだ。
でも、アクア王はドランの龍剣を持っているけど、七つの力は番人によって隠されたはず。どうしてアンモの結界を破ることが出来たのだろう?
「奴は、……」
アンモがしわがれた声を絞りだす。
「【停止】を使いました。心臓に隠し持っていたドラン様の龍剣が紫に輝いていたので、奴が紫の【停止】を手に入れたのは間違いないと思われます」
えええええ―――っ
ルオは驚いて大声を出しそうになったが、アンモの苦しそうな様子に寸前で飲み込んだ。怪我人に衝撃を与えてはいけない。
しかし、アクア王に紫の【停止】が奪われた? おまけに【停止】を使って【結界】も奪われるなんて。どういうことだ? 【停止】の番人は無事なんだろうか。【停止】って時間や動きを止める力のことだって聞いたけど、……
「…そうか。停止の力で、結界の動きを止めたんだ」
ルオが呟くとアンモはゆっくりと頷いた。
「そうです。結界は常に内なるエネルギーを循環させ、その存在を保っています。しかし【停止】の力でその循環を止められてしまいました。結界のエネルギーが途切れた瞬間を狙ってアクア王が襲撃してきたのです。どうやら、このところの修業で、この辺りに【結界】があるのではないかとアクアたちが王に進言していたようなのです」
そうか。
アクアたちも見えない壁に阻まれて無駄にうろうろしてたわけじゃなかったんだ。
ということは、対なる龍剣を持ったルオが都に来たことも、ドランの龍剣を取り戻すために七つの力を探していることも、何もかもお見通しってことか。
「私にはもう力が残っていません。アクア王も死にゆく私は使えないと踏んでアクア化せず、ここを焼き尽くしていきました。ルオ様、どうか私はここに捨て置いて、先に進んでください」
アンモは力なく言ってから、ルオが背負っている龍剣に目を止めた。
「ああ。ルオ様、【結界】を手に入れられたのですね。さすがルオ様。アンモは、…アンモは嬉しゅうござりまする」
老齢のアンモナイトは黄金に煌めく龍剣を眩しそうに目を細めて見た。そしてそのまま、静かに目を閉じて動かなくなった。
ルオが持ってきた革袋の水をアンモにそっとかけると、アンモナイトはぎくしゃくと震えながら殻から顔をのぞかせた。痛々しく半分潰れかけ、目も開けないようだ。
「ルオ様。申し訳ありません。アクア王に、……」
言ってアンモは苦しそうに全身を震わせた。見るに堪えないひどい怪我でとてもつらそうだ。チューリッピも心配そうにアンモの周りをちょろちょろしている。
「水、飲める?」
アンモの頭を抱え持ちながら、ルオは革袋の水を飲ませた。
「ありがとうございます、ルオ様。申し訳ありません、私としたことが、アクア王に急襲され、結界の力を奪われました。とっさにドラン様だけは結界に閉じ込めたまま遠くへ飛ばしたのですが、ご無事であられるか分かりません」
アンモが苦し気に話し出す。
この凄惨な状況は突然襲ってきたアクア王によるものだったのだ。
でも、アクア王はドランの龍剣を持っているけど、七つの力は番人によって隠されたはず。どうしてアンモの結界を破ることが出来たのだろう?
「奴は、……」
アンモがしわがれた声を絞りだす。
「【停止】を使いました。心臓に隠し持っていたドラン様の龍剣が紫に輝いていたので、奴が紫の【停止】を手に入れたのは間違いないと思われます」
えええええ―――っ
ルオは驚いて大声を出しそうになったが、アンモの苦しそうな様子に寸前で飲み込んだ。怪我人に衝撃を与えてはいけない。
しかし、アクア王に紫の【停止】が奪われた? おまけに【停止】を使って【結界】も奪われるなんて。どういうことだ? 【停止】の番人は無事なんだろうか。【停止】って時間や動きを止める力のことだって聞いたけど、……
「…そうか。停止の力で、結界の動きを止めたんだ」
ルオが呟くとアンモはゆっくりと頷いた。
「そうです。結界は常に内なるエネルギーを循環させ、その存在を保っています。しかし【停止】の力でその循環を止められてしまいました。結界のエネルギーが途切れた瞬間を狙ってアクア王が襲撃してきたのです。どうやら、このところの修業で、この辺りに【結界】があるのではないかとアクアたちが王に進言していたようなのです」
そうか。
アクアたちも見えない壁に阻まれて無駄にうろうろしてたわけじゃなかったんだ。
ということは、対なる龍剣を持ったルオが都に来たことも、ドランの龍剣を取り戻すために七つの力を探していることも、何もかもお見通しってことか。
「私にはもう力が残っていません。アクア王も死にゆく私は使えないと踏んでアクア化せず、ここを焼き尽くしていきました。ルオ様、どうか私はここに捨て置いて、先に進んでください」
アンモは力なく言ってから、ルオが背負っている龍剣に目を止めた。
「ああ。ルオ様、【結界】を手に入れられたのですね。さすがルオ様。アンモは、…アンモは嬉しゅうござりまする」
老齢のアンモナイトは黄金に煌めく龍剣を眩しそうに目を細めて見た。そしてそのまま、静かに目を閉じて動かなくなった。
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