26 / 78
Ⅲ章.黄色のスキル【結界】
06.【停止】と【結界】を奪われた
しおりを挟む
「アンモさん、大丈夫? ルオだよ。しっかりして」
ルオが持ってきた革袋の水をアンモにそっとかけると、アンモナイトはぎくしゃくと震えながら殻から顔をのぞかせた。痛々しく半分潰れかけ、目も開けないようだ。
「ルオ様。申し訳ありません。アクア王に、……」
言ってアンモは苦しそうに全身を震わせた。見るに堪えないひどい怪我でとてもつらそうだ。チューリッピも心配そうにアンモの周りをちょろちょろしている。
「水、飲める?」
アンモの頭を抱え持ちながら、ルオは革袋の水を飲ませた。
「ありがとうございます、ルオ様。申し訳ありません、私としたことが、アクア王に急襲され、結界の力を奪われました。とっさにドラン様だけは結界に閉じ込めたまま遠くへ飛ばしたのですが、ご無事であられるか分かりません」
アンモが苦し気に話し出す。
この凄惨な状況は突然襲ってきたアクア王によるものだったのだ。
でも、アクア王はドランの龍剣を持っているけど、七つの力は番人によって隠されたはず。どうしてアンモの結界を破ることが出来たのだろう?
「奴は、……」
アンモがしわがれた声を絞りだす。
「【停止】を使いました。心臓に隠し持っていたドラン様の龍剣が紫に輝いていたので、奴が紫の【停止】を手に入れたのは間違いないと思われます」
えええええ―――っ
ルオは驚いて大声を出しそうになったが、アンモの苦しそうな様子に寸前で飲み込んだ。怪我人に衝撃を与えてはいけない。
しかし、アクア王に紫の【停止】が奪われた? おまけに【停止】を使って【結界】も奪われるなんて。どういうことだ? 【停止】の番人は無事なんだろうか。【停止】って時間や動きを止める力のことだって聞いたけど、……
「…そうか。停止の力で、結界の動きを止めたんだ」
ルオが呟くとアンモはゆっくりと頷いた。
「そうです。結界は常に内なるエネルギーを循環させ、その存在を保っています。しかし【停止】の力でその循環を止められてしまいました。結界のエネルギーが途切れた瞬間を狙ってアクア王が襲撃してきたのです。どうやら、このところの修業で、この辺りに【結界】があるのではないかとアクアたちが王に進言していたようなのです」
そうか。
アクアたちも見えない壁に阻まれて無駄にうろうろしてたわけじゃなかったんだ。
ということは、対なる龍剣を持ったルオが都に来たことも、ドランの龍剣を取り戻すために七つの力を探していることも、何もかもお見通しってことか。
「私にはもう力が残っていません。アクア王も死にゆく私は使えないと踏んでアクア化せず、ここを焼き尽くしていきました。ルオ様、どうか私はここに捨て置いて、先に進んでください」
アンモは力なく言ってから、ルオが背負っている龍剣に目を止めた。
「ああ。ルオ様、【結界】を手に入れられたのですね。さすがルオ様。アンモは、…アンモは嬉しゅうござりまする」
老齢のアンモナイトは黄金に煌めく龍剣を眩しそうに目を細めて見た。そしてそのまま、静かに目を閉じて動かなくなった。
ルオが持ってきた革袋の水をアンモにそっとかけると、アンモナイトはぎくしゃくと震えながら殻から顔をのぞかせた。痛々しく半分潰れかけ、目も開けないようだ。
「ルオ様。申し訳ありません。アクア王に、……」
言ってアンモは苦しそうに全身を震わせた。見るに堪えないひどい怪我でとてもつらそうだ。チューリッピも心配そうにアンモの周りをちょろちょろしている。
「水、飲める?」
アンモの頭を抱え持ちながら、ルオは革袋の水を飲ませた。
「ありがとうございます、ルオ様。申し訳ありません、私としたことが、アクア王に急襲され、結界の力を奪われました。とっさにドラン様だけは結界に閉じ込めたまま遠くへ飛ばしたのですが、ご無事であられるか分かりません」
アンモが苦し気に話し出す。
この凄惨な状況は突然襲ってきたアクア王によるものだったのだ。
でも、アクア王はドランの龍剣を持っているけど、七つの力は番人によって隠されたはず。どうしてアンモの結界を破ることが出来たのだろう?
「奴は、……」
アンモがしわがれた声を絞りだす。
「【停止】を使いました。心臓に隠し持っていたドラン様の龍剣が紫に輝いていたので、奴が紫の【停止】を手に入れたのは間違いないと思われます」
えええええ―――っ
ルオは驚いて大声を出しそうになったが、アンモの苦しそうな様子に寸前で飲み込んだ。怪我人に衝撃を与えてはいけない。
しかし、アクア王に紫の【停止】が奪われた? おまけに【停止】を使って【結界】も奪われるなんて。どういうことだ? 【停止】の番人は無事なんだろうか。【停止】って時間や動きを止める力のことだって聞いたけど、……
「…そうか。停止の力で、結界の動きを止めたんだ」
ルオが呟くとアンモはゆっくりと頷いた。
「そうです。結界は常に内なるエネルギーを循環させ、その存在を保っています。しかし【停止】の力でその循環を止められてしまいました。結界のエネルギーが途切れた瞬間を狙ってアクア王が襲撃してきたのです。どうやら、このところの修業で、この辺りに【結界】があるのではないかとアクアたちが王に進言していたようなのです」
そうか。
アクアたちも見えない壁に阻まれて無駄にうろうろしてたわけじゃなかったんだ。
ということは、対なる龍剣を持ったルオが都に来たことも、ドランの龍剣を取り戻すために七つの力を探していることも、何もかもお見通しってことか。
「私にはもう力が残っていません。アクア王も死にゆく私は使えないと踏んでアクア化せず、ここを焼き尽くしていきました。ルオ様、どうか私はここに捨て置いて、先に進んでください」
アンモは力なく言ってから、ルオが背負っている龍剣に目を止めた。
「ああ。ルオ様、【結界】を手に入れられたのですね。さすがルオ様。アンモは、…アンモは嬉しゅうござりまする」
老齢のアンモナイトは黄金に煌めく龍剣を眩しそうに目を細めて見た。そしてそのまま、静かに目を閉じて動かなくなった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
異世界子供会:呪われたお母さんを助ける!
克全
児童書・童話
常に生死と隣り合わせの危険魔境内にある貧しい村に住む少年は、村人を助けるために邪神の呪いを受けた母親を助けるために戦う。村の子供会で共に学び育った同級生と一緒にお母さん助けるための冒険をする。
魔法少女は世界を救わない
釈 余白(しやく)
児童書・童話
混沌とした太古の昔、いわゆる神話の時代、人々は突然現れた魔竜と呼ばれる強大な存在を恐れ暮らしてきた。しかし、長い間苦しめられてきた魔竜を討伐するため神官たちは神へ祈り、その力を凝縮するための祭壇とも言える巨大な施設を産み出した。
神の力が満ち溢れる場所から人を超えた力と共に産みおとされた三人の勇者、そして同じ場所で作られた神具と呼ばれる強大な力を秘めた武具を用いて魔竜は倒され世界には平和が訪れた。
それから四千年が経ち人々の記憶もあいまいになっていた頃、世界に再び混乱の影が忍び寄る。時を同じくして一人の少女が神具を手にし、世の混乱に立ち向かおうとしていた。
スコウキャッタ・ターミナル
nono
児童書・童話
「みんなと違う」妹がチームの優勝杯に吐いた日、ついにそのテディベアをエレンは捨てる。すると妹は猫に変身し、謎の二人組に追われることにーー 空飛ぶトラムで不思議な世界にやってきたエレンは、弱虫王子とワガママ王女を仲間に加え、妹を人間に戻そうとするが・・・
忠犬ハジッコ
SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。
「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。
※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、
今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。
お楽しみいただければうれしいです。
がらくた屋 ふしぎ堂のヒミツ
三柴 ヲト
児童書・童話
『がらくた屋ふしぎ堂』
――それは、ちょっと変わった不思議なお店。
おもちゃ、駄菓子、古本、文房具、骨董品……。子どもが気になるものはなんでもそろっていて、店主であるミチばあちゃんが不在の時は、太った変な招き猫〝にゃすけ〟が代わりに商品を案内してくれる。
ミチばあちゃんの孫である小学6年生の風間吏斗(かざまりと)は、わくわく探しのため毎日のように『ふしぎ堂』へ通う。
お店に並んだ商品の中には、普通のがらくたに混じって『神商品(アイテム)』と呼ばれるレアなお宝もたくさん隠されていて、悪戯好きのリトはクラスメイトの男友達・ルカを巻き込んで、神商品を使ってはおかしな事件を起こしたり、逆にみんなの困りごとを解決したり、毎日を刺激的に楽しく過ごす。
そんなある日のこと、リトとルカのクラスメイトであるお金持ちのお嬢様アンが行方不明になるという騒ぎが起こる。
彼女の足取りを追うリトは、やがてふしぎ堂の裏庭にある『蔵』に隠された〝ヒミツの扉〟に辿り着くのだが、扉の向こう側には『異世界』や過去未来の『時空を超えた世界』が広がっていて――⁉︎
いたずら好きのリト、心優しい少年ルカ、いじっぱりなお嬢様アンの三人組が織りなす、事件、ふしぎ、夢、冒険、恋、わくわく、どきどきが全部詰まった、少年少女向けの現代和風ファンタジー。
盲目魔女さんに拾われた双子姉妹は恩返しをするそうです。
桐山一茶
児童書・童話
雨が降り注ぐ夜の山に、捨てられてしまった双子の姉妹が居ました。
山の中には恐ろしい魔物が出るので、幼い少女の力では山の中で生きていく事なんか出来ません。
そんな中、双子姉妹の目の前に全身黒ずくめの女の人が現れました。
するとその人は優しい声で言いました。
「私は目が見えません。だから手を繋ぎましょう」
その言葉をきっかけに、3人は仲良く暮らし始めたそうなのですが――。
(この作品はほぼ毎日更新です)
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる