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Ⅲ章.黄色のスキル【結界】

05.【結界】修行④王の奇襲

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オレってもしかして、意外と天才だったりして。

ルオは世界一美味しい水をたらふく飲んで身も心も満たされた。持ち帰る分も皮袋に詰めたし、おじいのペンダントにのるハツカネズミはご機嫌だし。結界は習得したし、水源も見つけたし。

なんだかんだ、やればできるんじゃん、オレ。

「チューリッピ、チューリッピ―――」

ハツカネズミがルオを後押しするように鳴き声を上げる。

「そっか。君の名前はチューリッピって言うんだね」

ルオはせせらぎを辿って水路を下りながら、ハツカネズミのチューリッピを撫でた。つるつるすべすべした柔らかい手触りで心が癒される。チューリッピはおとなしくルオに寄り添っている。

「この水を廃墟の結界にいるドランとアンモさんに届けなきゃいけないんだけど、この水路、どうやって出たらいいか分かる? チューリッピ?」

「チューリッピ、チューリッピ―――」

チューリッピの案内で水路から上がり、いくつもの石が組み合わさった不思議な石畳に立つ。チューリッピがルオの胸から降り、ちょろちょろと進むと壁面にはめ込まれた石と石の隙間で止まった。

「お。スイッチがある」

どうやらチューリッピはこのからくり地下水路を知り尽くしているらしい。チューリッピの言う通り、スイッチを押すと、ルオを乗せた石が上昇した。上下左右、精巧に作られたからくり仕掛けの石たちが正確な動きで近づいたり離れたりする。その一分の狂いもない精密な仕掛けは圧巻で見とれてしまう。すごい。こんなの、誰が作ったんだろう。

感動冷めやらぬうちに、ルオはいつしか廃墟裏に到着していた。

「ここに繋がってたのか。てことは、アンモさんはここから水路に行き来して水を汲んでたってことか。めっちゃ近いじゃん」

探し物は意外とすぐ近くにあるというのはよくある話なのかもしれない。

「ドラン、アンモさん、オレ、結界に成功、…――――――っ」

チューリッピと水入り革袋を両手に勇んで廃墟に踏み込んだルオは、目にした陰惨な光景に言葉をのんだ。廃墟はもともとあちこち崩れたがれき同然の建物だったが、アンモが残された家具を使って過ごしやすいよう工夫し、それなりに居心地が良かった。それが今は、ほとんどが墨と化し、あちこちに焼けただれた跡が見える。大きな爆発か火災があったようで、アンモが張り巡らした結界も機能していない。

「ドランっ! アンモさんっ! どこ!? 何があったの?」

何か良くないことが起きたのは明らかだ。ドランとアンモを探すルオは嫌な予感がして胸が苦しくなった。

「ドラン―――っ、アンモさ―――んっ」
「チュッ、チュチュチュ――――っ」

必死で呼びかけ、まだ熱く燃え残っている壁や柱の残骸を退かす。チューリッピもルオから降りてちょろちょろ嗅ぎまわり、二人を探しているようだ。やがて、チューリッピがルオを促して探したがれきの下から見慣れた渦巻き模様を発見した。

「アンモさんっ、アンモさん、しっかりして。大丈夫? 今、助けるからねっ」

ともかく必死で重いがれきを一つずつ脇に退かす。火事場のバカ力というやつか、驚くほどのパワーが出た。繰り返すうちに手足を火傷し全身傷だらけ煤だらけ。真っ白だったチューリッピも焦げたドブネズミのようになっている。だが、気にしている余裕はない。ルオはチューリッピと一緒に何とかがれきの下からアンモを助け出したが、アンモは殻の中に頭を隠して半分ほどの大きさに縮んでいた。
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