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Ⅲ章.黄色のスキル【結界】
04.【結界】修行③からくり地下水路
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「チュチュ、チュッチュッチュチュ――」
ハツカネズミがこっちこっちとルオをぐいぐい引っ張るので、ルオはアクアたちの間を縫って静かに潜水艇から外へ出た。結界が張られているとはいえ、こちらからはアクアの身体の細部までが良く見えるのだから、不気味であることこの上なく、どうしてもこそこそした動きになってしまう。
オレの結界、いつ破られるか分かんないし。
なるべく密やかに行動するルオと違い、ハツカネズミは恐ろしく大胆不敵である。天下を取った勢いでアクアの前に仁王立ち、あかんべーをしたりしている。おいおい、あんま調子に乗るなって。
「チュチュッチュ―――」
ハツカネズミはルオを石畳のある通りに連れて行くと、石の割れ目から下に入り込んでいった。
「えー、…オレ、水中変化術で小さくならなきゃここには入れないよ」
しかし、ここには水がないので変化は出来ない。
ルオが言うと、ネズミが石畳から出てきた。小さな手で敷石を押したり這いこんだりまた出てきたりちょろちょろしている。
「……石を押せって言ってる?」
龍剣を抜いた時から、ルオは人間以外の動物の言語も理解できるようになったのだが、このハツカネズミの言うことはなんとなくしか分からない。ルオなりにネズミの意図を理解して、敷石の間に手を突っ込むと思い切って押してみた。するとわずかに動く気配があり、石と石の間に隙間が出来た。顔を近づけてのぞき込んでみると、奥の方に何やら突起した部分が見える。
ハツカネズミがその隙間に入り込んで突起部分をしきりに押している。
なにか、…スイッチ?
ルオは辺りを見回して落ちていた小枝を拾ってくると、隙間に突っ込んで突起部分を思いきり押した。
カチリ。
とたんに石畳がからくりのように上がったり下がったり開いたり一斉に動き出した。
「う、うお~~~~?」
ルオが乗っていた石はそのまま地中深くに吸い込まれていく。石畳の下はからくり仕掛けになっていて、スイッチを押した者だけが入れる地下迷路へと続いていたのだ。
「わー―――、なにここ――――っ」
「チュッチュ――――」
巨大な石が上がったり下がったり目の前を横切っていく有様はなかなか壮大であったが、怖くはない。いつのまにか胸に下げたおじいのペンダントの上にハツカネズミが乗っている。その小さな温かさが、ルオに力をくれた。
やがて、水の流れる音と湿った空気が立ち昇ってきた。
「水だ!」
ルオを乗せた石は、地中奥深くまで下ると、地下に作られた水路のわきで動きを止めた。ルオは石から降り、水路をのぞき込んでみた。さらさらいうせせらぎと共に澄んだ水が流れていく。水幅は狭く、水の量は少ない。ルオは水路に降り立つと、手を伸ばして水をすくってみた。冷たくて気持ちいい。
「飲めるかな」
ハツカネズミと目を合わせると、ネズミは安心せいというように、ルオの手の中に自ら口をつけ、チロチロと舌で舐めた。
途端に、猛烈に喉が渇いていたことを思い出し、ルオはがぶがぶと水をすくっては飲み、すくっては飲んだ。
命の水。
清らかに澄んで万物を浄化する。爽やかに乾いた身体にしみわたる。
未だかつて、こんなに美味しい飲み物を飲んだことはなかった。
ハツカネズミがこっちこっちとルオをぐいぐい引っ張るので、ルオはアクアたちの間を縫って静かに潜水艇から外へ出た。結界が張られているとはいえ、こちらからはアクアの身体の細部までが良く見えるのだから、不気味であることこの上なく、どうしてもこそこそした動きになってしまう。
オレの結界、いつ破られるか分かんないし。
なるべく密やかに行動するルオと違い、ハツカネズミは恐ろしく大胆不敵である。天下を取った勢いでアクアの前に仁王立ち、あかんべーをしたりしている。おいおい、あんま調子に乗るなって。
「チュチュッチュ―――」
ハツカネズミはルオを石畳のある通りに連れて行くと、石の割れ目から下に入り込んでいった。
「えー、…オレ、水中変化術で小さくならなきゃここには入れないよ」
しかし、ここには水がないので変化は出来ない。
ルオが言うと、ネズミが石畳から出てきた。小さな手で敷石を押したり這いこんだりまた出てきたりちょろちょろしている。
「……石を押せって言ってる?」
龍剣を抜いた時から、ルオは人間以外の動物の言語も理解できるようになったのだが、このハツカネズミの言うことはなんとなくしか分からない。ルオなりにネズミの意図を理解して、敷石の間に手を突っ込むと思い切って押してみた。するとわずかに動く気配があり、石と石の間に隙間が出来た。顔を近づけてのぞき込んでみると、奥の方に何やら突起した部分が見える。
ハツカネズミがその隙間に入り込んで突起部分をしきりに押している。
なにか、…スイッチ?
ルオは辺りを見回して落ちていた小枝を拾ってくると、隙間に突っ込んで突起部分を思いきり押した。
カチリ。
とたんに石畳がからくりのように上がったり下がったり開いたり一斉に動き出した。
「う、うお~~~~?」
ルオが乗っていた石はそのまま地中深くに吸い込まれていく。石畳の下はからくり仕掛けになっていて、スイッチを押した者だけが入れる地下迷路へと続いていたのだ。
「わー―――、なにここ――――っ」
「チュッチュ――――」
巨大な石が上がったり下がったり目の前を横切っていく有様はなかなか壮大であったが、怖くはない。いつのまにか胸に下げたおじいのペンダントの上にハツカネズミが乗っている。その小さな温かさが、ルオに力をくれた。
やがて、水の流れる音と湿った空気が立ち昇ってきた。
「水だ!」
ルオを乗せた石は、地中奥深くまで下ると、地下に作られた水路のわきで動きを止めた。ルオは石から降り、水路をのぞき込んでみた。さらさらいうせせらぎと共に澄んだ水が流れていく。水幅は狭く、水の量は少ない。ルオは水路に降り立つと、手を伸ばして水をすくってみた。冷たくて気持ちいい。
「飲めるかな」
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途端に、猛烈に喉が渇いていたことを思い出し、ルオはがぶがぶと水をすくっては飲み、すくっては飲んだ。
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未だかつて、こんなに美味しい飲み物を飲んだことはなかった。
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