35 / 78
Ⅴ章.橙色のスキル【複製】
03.三人のドラン①時代系ドラン 前編
しおりを挟む
時代ドランを腕に乗せ、大広間から歩き出したルオに、
『答えは一つではない。物事には様々な側面がある。幻影に惑わされず、己を信じて進め』
シロナガスクジラのスーガの声が蘇ったが、深く考えている余裕はなかった。
なぜなら。
「ちょっと、ちょっと、ドラン――っ! これ一体どういうこと!?」
「切り捨て御免っ」
時代ドランの案内に従って進むとまもなく、天井から勢いよく水が降ってきて、両側の壁から槍や刀が次々突き出てきて、前方から手裏剣が飛んでくるという忍者屋敷のようなゾーンに突入してしまったからである。
ルオは水や槍をよけて全速力で走り、背中の龍剣を抜くと、飛んでくる手裏剣をかわした。しかし次は、突然足元に大きな穴が開く。
「ルオ殿、右によけるでござる」
「うえ!?」
「次は左っ、あ、やっぱ右っ」
「チュチュ――っ」
時代系ドランの指示で、ルオは右へ左へ軽快にジャンプ。何とか落とし穴を回避したと思ったら、今度は目の前に大きな扉が出現した。
「何これ」
扉には九つの四角いパネルが並び、〇から九までの数字がランダムに現れては消える。
「これはおそらく数学の定理でござる。ルオ殿、円周率を九桁順番に押すでござる」
「円周率って何~?」
「チュチュッチュ」
「3.14159265、…」
時代系ドランが数を唱え始めたので、ルオは慌てて目の前のパネルを順番に押す。九つ押し終わると、扉が開いた。が、すぐ前に第二の扉が控えている。パネルにはアルファベットが並んでいるが、
「今度は何」
「元素記号を九つ!」
「習ってないよ~」
「水兵リーベぼくの船。すなわち、H He Li Be B C N O F Ne の順に押すでござる」
「意味わからん」
小学四年生のルオには呪文のようにしか聞こえないが、とりあえず言われたとおりに押してみる。と、扉が開いたが、またも次に第三の扉が控えていた。
「うわ、漢字、……」
今度はパネルに九つの漢字が並んでいる。ルオはげんなりした。漢字は大の苦手だ。
「登 字 塔 竜 門 眼 金 千 里。三字熟語を作って順番に押すでござる」
「無理~っ、勘弁して」
習った漢字もあるけれど、正直言って覚えていない。初めて見る漢字もあるのに熟語なんて作れるかいっ
「チュ、チュッチュ」
「分かった。帰ったらちゃんと宿題やるって」
チューリッピに反省を促されたルオは素直に頷いた。まさかこんなところで知識問題が出るなんてさ~。
「登竜門 千里眼 金字塔 にござるっ」
「あ、はいはい。ちょっと待って」
時代系ドランが唱えた三字熟語を慌てて探してパネルを押す。
ルオは時代系ドランのことを頭の固い偏屈なドランと思わないでもなかったが、見直していた。頭いいっ! 物知りって役に立つんだな。
「チュチュッチュー」
「え? 熟語の意味は自分で調べろって? へいへい」
口うるさいおじいみたいなチューリッピにとりあえず頷いておいた。まあ、登竜門だけは後で調べてみるか。龍だけに。
三つ目の扉が開き、ようやく扉がなくなったと思ったのもつかの間。前方から巨大な壁が迫ってきた。
「ええ―――、ぶつかるじゃん」
壁は遥か上までそびえたち、果てが見えない。今度はパネルもなく、ただひたすらに高い壁である。回避しようにも後方は扉に閉ざされ戻れない。
『答えは一つではない。物事には様々な側面がある。幻影に惑わされず、己を信じて進め』
シロナガスクジラのスーガの声が蘇ったが、深く考えている余裕はなかった。
なぜなら。
「ちょっと、ちょっと、ドラン――っ! これ一体どういうこと!?」
「切り捨て御免っ」
時代ドランの案内に従って進むとまもなく、天井から勢いよく水が降ってきて、両側の壁から槍や刀が次々突き出てきて、前方から手裏剣が飛んでくるという忍者屋敷のようなゾーンに突入してしまったからである。
ルオは水や槍をよけて全速力で走り、背中の龍剣を抜くと、飛んでくる手裏剣をかわした。しかし次は、突然足元に大きな穴が開く。
「ルオ殿、右によけるでござる」
「うえ!?」
「次は左っ、あ、やっぱ右っ」
「チュチュ――っ」
時代系ドランの指示で、ルオは右へ左へ軽快にジャンプ。何とか落とし穴を回避したと思ったら、今度は目の前に大きな扉が出現した。
「何これ」
扉には九つの四角いパネルが並び、〇から九までの数字がランダムに現れては消える。
「これはおそらく数学の定理でござる。ルオ殿、円周率を九桁順番に押すでござる」
「円周率って何~?」
「チュチュッチュ」
「3.14159265、…」
時代系ドランが数を唱え始めたので、ルオは慌てて目の前のパネルを順番に押す。九つ押し終わると、扉が開いた。が、すぐ前に第二の扉が控えている。パネルにはアルファベットが並んでいるが、
「今度は何」
「元素記号を九つ!」
「習ってないよ~」
「水兵リーベぼくの船。すなわち、H He Li Be B C N O F Ne の順に押すでござる」
「意味わからん」
小学四年生のルオには呪文のようにしか聞こえないが、とりあえず言われたとおりに押してみる。と、扉が開いたが、またも次に第三の扉が控えていた。
「うわ、漢字、……」
今度はパネルに九つの漢字が並んでいる。ルオはげんなりした。漢字は大の苦手だ。
「登 字 塔 竜 門 眼 金 千 里。三字熟語を作って順番に押すでござる」
「無理~っ、勘弁して」
習った漢字もあるけれど、正直言って覚えていない。初めて見る漢字もあるのに熟語なんて作れるかいっ
「チュ、チュッチュ」
「分かった。帰ったらちゃんと宿題やるって」
チューリッピに反省を促されたルオは素直に頷いた。まさかこんなところで知識問題が出るなんてさ~。
「登竜門 千里眼 金字塔 にござるっ」
「あ、はいはい。ちょっと待って」
時代系ドランが唱えた三字熟語を慌てて探してパネルを押す。
ルオは時代系ドランのことを頭の固い偏屈なドランと思わないでもなかったが、見直していた。頭いいっ! 物知りって役に立つんだな。
「チュチュッチュー」
「え? 熟語の意味は自分で調べろって? へいへい」
口うるさいおじいみたいなチューリッピにとりあえず頷いておいた。まあ、登竜門だけは後で調べてみるか。龍だけに。
三つ目の扉が開き、ようやく扉がなくなったと思ったのもつかの間。前方から巨大な壁が迫ってきた。
「ええ―――、ぶつかるじゃん」
壁は遥か上までそびえたち、果てが見えない。今度はパネルもなく、ただひたすらに高い壁である。回避しようにも後方は扉に閉ざされ戻れない。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版

ぼくの家族は…内緒だよ!!
まりぃべる
児童書・童話
うちの家族は、ふつうとちょっと違うんだって。ぼくには良く分からないけど、友だちや知らない人がいるところでは力を隠さなきゃならないんだ。本気で走ってはダメとか、ジャンプも手を抜け、とかいろいろ守らないといけない約束がある。面倒だけど、約束破ったら引っ越さないといけないって言われてるから面倒だけど仕方なく守ってる。
それでね、十二月なんて一年で一番忙しくなるからぼく、いやなんだけど。
そんなぼくの話、聞いてくれる?
☆まりぃべるの世界観です。楽しんでもらえたら嬉しいです。

魔法少女は世界を救わない
釈 余白(しやく)
児童書・童話
混沌とした太古の昔、いわゆる神話の時代、人々は突然現れた魔竜と呼ばれる強大な存在を恐れ暮らしてきた。しかし、長い間苦しめられてきた魔竜を討伐するため神官たちは神へ祈り、その力を凝縮するための祭壇とも言える巨大な施設を産み出した。
神の力が満ち溢れる場所から人を超えた力と共に産みおとされた三人の勇者、そして同じ場所で作られた神具と呼ばれる強大な力を秘めた武具を用いて魔竜は倒され世界には平和が訪れた。
それから四千年が経ち人々の記憶もあいまいになっていた頃、世界に再び混乱の影が忍び寄る。時を同じくして一人の少女が神具を手にし、世の混乱に立ち向かおうとしていた。
おっとりドンの童歌
花田 一劫
児童書・童話
いつもおっとりしているドン(道明寺僚) が、通学途中で暴走車に引かれてしまった。
意識を失い気が付くと、この世では見たことのない奇妙な部屋の中。
「どこ。どこ。ここはどこ?」と自問していたら、こっちに雀が近づいて来た。
なんと、その雀は歌をうたい狂ったように踊って(跳ねて)いた。
「チュン。チュン。はあ~。らっせーら。らっせいら。らせらせ、らせーら。」と。
その雀が言うことには、ドンが死んだことを(津軽弁や古いギャグを交えて)伝えに来た者だという。
道明寺が下の世界を覗くと、テレビのドラマで観た昔話の風景のようだった。
その中には、自分と瓜二つのドン助や同級生の瓜二つのハナちゃん、ヤーミ、イート、ヨウカイ、カトッぺがいた。
みんながいる村では、ヌエという妖怪がいた。
ヌエとは、顔は鬼、身体は熊、虎の手や足をもち、何とシッポの先に大蛇の頭がついてあり、人を食べる恐ろしい妖怪のことだった。
ある時、ハナちゃんがヌエに攫われて、ドン助とヤーミがヌエを退治に行くことになるが、天界からドラマを観るように楽しんで鑑賞していた道明寺だったが、道明寺の体は消え、意識はドン助の体と同化していった。
ドン助とヤーミは、ハナちゃんを救出できたのか?恐ろしいヌエは退治できたのか?
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
魔法が使えない女の子
咲間 咲良
児童書・童話
カナリア島に住む九歳の女の子エマは、自分だけ魔法が使えないことを悩んでいた。
友だちのエドガーにからかわれてつい「明日魔法を見せる」と約束してしまったエマは、大魔法使いの祖母マリアのお使いで魔法が書かれた本を返しに行く。
貸本屋ティンカーベル書房の書庫で出会ったのは、エマそっくりの顔と同じエメラルドの瞳をもつ男の子、アレン。冷たい態度に反発するが、上から降ってきた本に飲み込まれてしまう。
ローズお姉さまのドレス
有沢真尋
児童書・童話
最近のルイーゼは少しおかしい。
いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。
話し方もお姉さまそっくり。
わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。
表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる