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Ⅴ章.橙色のスキル【複製】
03.三人のドラン①時代系ドラン 前編
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時代ドランを腕に乗せ、大広間から歩き出したルオに、
『答えは一つではない。物事には様々な側面がある。幻影に惑わされず、己を信じて進め』
シロナガスクジラのスーガの声が蘇ったが、深く考えている余裕はなかった。
なぜなら。
「ちょっと、ちょっと、ドラン――っ! これ一体どういうこと!?」
「切り捨て御免っ」
時代ドランの案内に従って進むとまもなく、天井から勢いよく水が降ってきて、両側の壁から槍や刀が次々突き出てきて、前方から手裏剣が飛んでくるという忍者屋敷のようなゾーンに突入してしまったからである。
ルオは水や槍をよけて全速力で走り、背中の龍剣を抜くと、飛んでくる手裏剣をかわした。しかし次は、突然足元に大きな穴が開く。
「ルオ殿、右によけるでござる」
「うえ!?」
「次は左っ、あ、やっぱ右っ」
「チュチュ――っ」
時代系ドランの指示で、ルオは右へ左へ軽快にジャンプ。何とか落とし穴を回避したと思ったら、今度は目の前に大きな扉が出現した。
「何これ」
扉には九つの四角いパネルが並び、〇から九までの数字がランダムに現れては消える。
「これはおそらく数学の定理でござる。ルオ殿、円周率を九桁順番に押すでござる」
「円周率って何~?」
「チュチュッチュ」
「3.14159265、…」
時代系ドランが数を唱え始めたので、ルオは慌てて目の前のパネルを順番に押す。九つ押し終わると、扉が開いた。が、すぐ前に第二の扉が控えている。パネルにはアルファベットが並んでいるが、
「今度は何」
「元素記号を九つ!」
「習ってないよ~」
「水兵リーベぼくの船。すなわち、H He Li Be B C N O F Ne の順に押すでござる」
「意味わからん」
小学四年生のルオには呪文のようにしか聞こえないが、とりあえず言われたとおりに押してみる。と、扉が開いたが、またも次に第三の扉が控えていた。
「うわ、漢字、……」
今度はパネルに九つの漢字が並んでいる。ルオはげんなりした。漢字は大の苦手だ。
「登 字 塔 竜 門 眼 金 千 里。三字熟語を作って順番に押すでござる」
「無理~っ、勘弁して」
習った漢字もあるけれど、正直言って覚えていない。初めて見る漢字もあるのに熟語なんて作れるかいっ
「チュ、チュッチュ」
「分かった。帰ったらちゃんと宿題やるって」
チューリッピに反省を促されたルオは素直に頷いた。まさかこんなところで知識問題が出るなんてさ~。
「登竜門 千里眼 金字塔 にござるっ」
「あ、はいはい。ちょっと待って」
時代系ドランが唱えた三字熟語を慌てて探してパネルを押す。
ルオは時代系ドランのことを頭の固い偏屈なドランと思わないでもなかったが、見直していた。頭いいっ! 物知りって役に立つんだな。
「チュチュッチュー」
「え? 熟語の意味は自分で調べろって? へいへい」
口うるさいおじいみたいなチューリッピにとりあえず頷いておいた。まあ、登竜門だけは後で調べてみるか。龍だけに。
三つ目の扉が開き、ようやく扉がなくなったと思ったのもつかの間。前方から巨大な壁が迫ってきた。
「ええ―――、ぶつかるじゃん」
壁は遥か上までそびえたち、果てが見えない。今度はパネルもなく、ただひたすらに高い壁である。回避しようにも後方は扉に閉ざされ戻れない。
『答えは一つではない。物事には様々な側面がある。幻影に惑わされず、己を信じて進め』
シロナガスクジラのスーガの声が蘇ったが、深く考えている余裕はなかった。
なぜなら。
「ちょっと、ちょっと、ドラン――っ! これ一体どういうこと!?」
「切り捨て御免っ」
時代ドランの案内に従って進むとまもなく、天井から勢いよく水が降ってきて、両側の壁から槍や刀が次々突き出てきて、前方から手裏剣が飛んでくるという忍者屋敷のようなゾーンに突入してしまったからである。
ルオは水や槍をよけて全速力で走り、背中の龍剣を抜くと、飛んでくる手裏剣をかわした。しかし次は、突然足元に大きな穴が開く。
「ルオ殿、右によけるでござる」
「うえ!?」
「次は左っ、あ、やっぱ右っ」
「チュチュ――っ」
時代系ドランの指示で、ルオは右へ左へ軽快にジャンプ。何とか落とし穴を回避したと思ったら、今度は目の前に大きな扉が出現した。
「何これ」
扉には九つの四角いパネルが並び、〇から九までの数字がランダムに現れては消える。
「これはおそらく数学の定理でござる。ルオ殿、円周率を九桁順番に押すでござる」
「円周率って何~?」
「チュチュッチュ」
「3.14159265、…」
時代系ドランが数を唱え始めたので、ルオは慌てて目の前のパネルを順番に押す。九つ押し終わると、扉が開いた。が、すぐ前に第二の扉が控えている。パネルにはアルファベットが並んでいるが、
「今度は何」
「元素記号を九つ!」
「習ってないよ~」
「水兵リーベぼくの船。すなわち、H He Li Be B C N O F Ne の順に押すでござる」
「意味わからん」
小学四年生のルオには呪文のようにしか聞こえないが、とりあえず言われたとおりに押してみる。と、扉が開いたが、またも次に第三の扉が控えていた。
「うわ、漢字、……」
今度はパネルに九つの漢字が並んでいる。ルオはげんなりした。漢字は大の苦手だ。
「登 字 塔 竜 門 眼 金 千 里。三字熟語を作って順番に押すでござる」
「無理~っ、勘弁して」
習った漢字もあるけれど、正直言って覚えていない。初めて見る漢字もあるのに熟語なんて作れるかいっ
「チュ、チュッチュ」
「分かった。帰ったらちゃんと宿題やるって」
チューリッピに反省を促されたルオは素直に頷いた。まさかこんなところで知識問題が出るなんてさ~。
「登竜門 千里眼 金字塔 にござるっ」
「あ、はいはい。ちょっと待って」
時代系ドランが唱えた三字熟語を慌てて探してパネルを押す。
ルオは時代系ドランのことを頭の固い偏屈なドランと思わないでもなかったが、見直していた。頭いいっ! 物知りって役に立つんだな。
「チュチュッチュー」
「え? 熟語の意味は自分で調べろって? へいへい」
口うるさいおじいみたいなチューリッピにとりあえず頷いておいた。まあ、登竜門だけは後で調べてみるか。龍だけに。
三つ目の扉が開き、ようやく扉がなくなったと思ったのもつかの間。前方から巨大な壁が迫ってきた。
「ええ―――、ぶつかるじゃん」
壁は遥か上までそびえたち、果てが見えない。今度はパネルもなく、ただひたすらに高い壁である。回避しようにも後方は扉に閉ざされ戻れない。
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