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Ⅱ章.龍宮
06.発光する魚たち
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「なんか、ドラン光ってない?」
「そういうルオこそ。自分で光を発する深海魚みたいだぞ」
豪華客船の中を水道管でぐるぐる巡った挙句、ようやく海に吐き出されたルオとドランは、再びウミガメと人間の大きさに戻り、一心に海底目指して突き進んでいる。
「なんでだろう? いつのまに発光魚になった?」
ところが、海底に向けて進むにつれ、お互いの身体が光り始めたのだ。
深海には光を放つ魚たちがいる。
自力で発光物質を作り出すハダカイワシやウミホタル、あるいは発光バクテリアなどを利用して光を放つマツカサウオやヒイラギなどである。
しかしルオとドランは龍神の子ではあれ、発光魚ではない。深海では自然発光するとか、龍ってそんな便利な仕組みなのか?
「なんか拾い食いでもしたかなあ」
ルオを乗せて小首を傾げるドランは深い青色の光を放つ。ルオはドランよりも明るく水色のような光である。
「それだ!」
ドランの言葉に、ルオの脳裏には豪華客船の水道管を巡る前に聞いた声が蘇った。
『この部屋から出られるはずはありませんが、もし出られたとしても、リオキドシンの効力で後をつけられるはず』
「オレたち、船で食べ放題に好きなものを食べてたけど、あの中に薬が仕込まれてたんだよ」
「ええ~~。じゃあこれは魔女の呪いなのか」
「うんまあ、…そうとも言えるような言えないような」
「しっかし、俺たちを光らせてなんかいいことあるか」
「うーん。逃がさないように、目印にするとか?」
リオキドシンがどんな薬かは分からないが、ルオとドランの行方を追うためのマーカーである可能性が高い。
「てことは、彼らあきらめずに俺たちを探してるってこと?」
「そう考えてみると、遠くの方から潜水艇のスクリュー音が聞こえるような聞こえないような」
二人はだいぶ深い海の底にまで潜っていた。
世界で最も深いと言われるマリアナ海溝は水深一万メートル。ルオとドランは既にその域に達しようとしていたのだが、……
「この海域の先は強力な磁場が発生していて、時空が歪んでいる。俺たちについてきたら、彼ら無事では済まないぞ? …まあ、魔女だから何とかなるか」
いやだからさ。魔女じゃないんだけど、…
この先は危険だから帰った方がいいですよ、と言った方がいいかなとルオは考えてみた。どう考えても海老沼さんが聞いてくれるとは思えなかった。
「なんか、水がピリピリしてきた」
「磁力が発生している。剣を抜け。お腹に力を入れて、龍の都を思い浮かべるんだ」
「いや、オレ龍の都見たことないんだって」
全身の毛が逆立つようなバリバリした感覚に襲われる。軽口をたたいているのも辛くなってきた。
ルオは龍剣を抜いて両手に構えた。嵐のように周りの水がぐるぐる回り始め、上下左右に盛大に揺さぶられ、色と音が消え、方向感覚も時間感覚もなくなる。
自分がどこにいるのか。どうなっているのか。
目をあけているのに何も見えない。宇宙のブラックホールのような不思議な空間に陥り、雷に打たれたかのような強力な刺激を身体中に感じる。身体が細かく引きちぎられるようだった。
「そういうルオこそ。自分で光を発する深海魚みたいだぞ」
豪華客船の中を水道管でぐるぐる巡った挙句、ようやく海に吐き出されたルオとドランは、再びウミガメと人間の大きさに戻り、一心に海底目指して突き進んでいる。
「なんでだろう? いつのまに発光魚になった?」
ところが、海底に向けて進むにつれ、お互いの身体が光り始めたのだ。
深海には光を放つ魚たちがいる。
自力で発光物質を作り出すハダカイワシやウミホタル、あるいは発光バクテリアなどを利用して光を放つマツカサウオやヒイラギなどである。
しかしルオとドランは龍神の子ではあれ、発光魚ではない。深海では自然発光するとか、龍ってそんな便利な仕組みなのか?
「なんか拾い食いでもしたかなあ」
ルオを乗せて小首を傾げるドランは深い青色の光を放つ。ルオはドランよりも明るく水色のような光である。
「それだ!」
ドランの言葉に、ルオの脳裏には豪華客船の水道管を巡る前に聞いた声が蘇った。
『この部屋から出られるはずはありませんが、もし出られたとしても、リオキドシンの効力で後をつけられるはず』
「オレたち、船で食べ放題に好きなものを食べてたけど、あの中に薬が仕込まれてたんだよ」
「ええ~~。じゃあこれは魔女の呪いなのか」
「うんまあ、…そうとも言えるような言えないような」
「しっかし、俺たちを光らせてなんかいいことあるか」
「うーん。逃がさないように、目印にするとか?」
リオキドシンがどんな薬かは分からないが、ルオとドランの行方を追うためのマーカーである可能性が高い。
「てことは、彼らあきらめずに俺たちを探してるってこと?」
「そう考えてみると、遠くの方から潜水艇のスクリュー音が聞こえるような聞こえないような」
二人はだいぶ深い海の底にまで潜っていた。
世界で最も深いと言われるマリアナ海溝は水深一万メートル。ルオとドランは既にその域に達しようとしていたのだが、……
「この海域の先は強力な磁場が発生していて、時空が歪んでいる。俺たちについてきたら、彼ら無事では済まないぞ? …まあ、魔女だから何とかなるか」
いやだからさ。魔女じゃないんだけど、…
この先は危険だから帰った方がいいですよ、と言った方がいいかなとルオは考えてみた。どう考えても海老沼さんが聞いてくれるとは思えなかった。
「なんか、水がピリピリしてきた」
「磁力が発生している。剣を抜け。お腹に力を入れて、龍の都を思い浮かべるんだ」
「いや、オレ龍の都見たことないんだって」
全身の毛が逆立つようなバリバリした感覚に襲われる。軽口をたたいているのも辛くなってきた。
ルオは龍剣を抜いて両手に構えた。嵐のように周りの水がぐるぐる回り始め、上下左右に盛大に揺さぶられ、色と音が消え、方向感覚も時間感覚もなくなる。
自分がどこにいるのか。どうなっているのか。
目をあけているのに何も見えない。宇宙のブラックホールのような不思議な空間に陥り、雷に打たれたかのような強力な刺激を身体中に感じる。身体が細かく引きちぎられるようだった。
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