【完結】七色のスキルを手に入れて龍宮城を取り戻せ。龍宮伝説ルオ・謎の生命体アクア王との対決!!

remo

文字の大きさ
上 下
10 / 78
Ⅰ章.邂逅

09.盗聴

しおりを挟む
「…音がする」

ルオに弾き飛ばされたドランはくるりと回って上手に着地すると、ふいに耳をぴくりとそばたてた。

音?

ルオも耳を澄ませてみるけど、何も聞こえない。

「こっち。ちょっと嫌な感じの機械音」

ドランはそう言うと、リビングの先にある骨董屋の店舗の方に進んだ。ルオとおじいも後に続く。

「これだ」

ドランは店のカウンター傍に付けられたほんの小さなゴミみたいな虫を指した。…虫? ドランってばお腹空いただけだったりして、とルオは思ったが、おじいの険しい顔を見て口に出すのをやめた。

おじいは黙って虫に手を伸ばすと、床に置いて踏みつけた。

「おじい?」
「しーっ」

おじいはいつも自分の命とみんなの命を大切にすること、と教えてくれている。虫であってもむやみに殺したりしない。思いもよらないおじいの行動にルオは驚いたが、おじいは険しい顔のまま、人差し指を口に当てた。

「盗聴器だ」

ルオの耳元で声を殺しておじいが囁く。おじいはその潰れた黒い虫のようなものを静かに摘み上げた。よく見ると中に何か回線のようなものがあるのが分かる。

とうちょうき?

心臓が嫌な感じに軋んだ。
盗聴器って、遠くの会話をこっそり盗み聞きするための機械だよね。なんでそんなものがお店に? 誰かがおじいを狙ってる?

ドランの耳を頼りに、店舗に仕掛けられていた盗聴器四つを発見した。

「他には?」
「ないと思う」

ドランが十メートル先から鼻息が聞こえるかどうかは分からないけれど、耳がいいというのは本当らしい。

「これは通称『虫』という超小型最新モデルの盗聴器だ。一般には売られていない」

おじいはカウンターに置いた盗聴器を睨むように見ている。

「売られてないならどうして、……」

ここに仕掛けられているんだろうかと考えてみる。

この盗聴器は一般の人じゃなくて、手に入れられる特別な立場にある人が仕掛けたってことだろうか?

おじいが静かに頷いた。

「これは、海洋研究所の最先端技術開発部が政府の委託を受けて作ったものだ。つまり、…これを仕掛けたのは先日ここを訪れた海洋研究所の人間だろうと思う」

ルオは、一学期最後の日におじいの店で出会ったねちっこいヘビを連想させる男性を思い出した。ヘビ、…じゃなくて、エビなんとかさん。

「どうやら研究所は手段をえらばずにお前を手に入れたいようだ」

研究所の職員がルオの身体に興味を持っていると先日おじいから聞いた。ドランの話を信じるとすれば、ルオは龍神の子なのだから、身体を調べられれば人間とは違うところが見つかるかもしれない。
それに、盗聴器によってドランの話が研究所の人たちに伝わっているとしたら、ルオとドランに対する興味はますます大きくなっているだろう。

ぐずぐずしている暇はない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

児童絵本館のオオカミ

火隆丸
児童書・童話
閉鎖した児童絵本館に放置されたオオカミの着ぐるみが語る、数々の思い出。ボロボロの着ぐるみの中には、たくさんの人の想いが詰まっています。着ぐるみと人との間に生まれた、切なくも美しい物語です。

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

老犬ジョンと子猫のルナ

菊池まりな
児童書・童話
小さな町の片隅で、野良猫が子猫を生み、暖かく、安全な場所へと移動を繰り返しているうちに、一匹の子猫がはぐれてしまう。疲れきって倒れていたところを少年が助けてくれた。その家には老犬のジョンがいた。

ぼくの家族は…内緒だよ!!

まりぃべる
児童書・童話
うちの家族は、ふつうとちょっと違うんだって。ぼくには良く分からないけど、友だちや知らない人がいるところでは力を隠さなきゃならないんだ。本気で走ってはダメとか、ジャンプも手を抜け、とかいろいろ守らないといけない約束がある。面倒だけど、約束破ったら引っ越さないといけないって言われてるから面倒だけど仕方なく守ってる。 それでね、十二月なんて一年で一番忙しくなるからぼく、いやなんだけど。 そんなぼくの話、聞いてくれる? ☆まりぃべるの世界観です。楽しんでもらえたら嬉しいです。

ミズルチと〈竜骨の化石〉

珠邑ミト
児童書・童話
カイトは家族とバラバラに暮らしている〈音読みの一族〉という〈族《うから》〉の少年。彼の一族は、数多ある〈族〉から魂の〈音〉を「読み」、なんの〈族〉か「読みわける」。彼は飛びぬけて「読め」る少年だ。十歳のある日、その力でイトミミズの姿をしている〈族〉を見つけ保護する。ばあちゃんによると、その子は〈出世ミミズ族〉という〈族《うから》〉で、四年かけてミミズから蛇、竜、人と進化し〈竜の一族〉になるという。カイトはこの子にミズルチと名づけ育てることになり……。  一方、世間では怨墨《えんぼく》と呼ばれる、人の負の感情から生まれる墨の化物が活発化していた。これは人に憑りつき操る。これを浄化する墨狩《すみが》りという存在がある。  ミズルチを保護してから三年半後、ミズルチは竜になり、カイトとミズルチは怨墨に知人が憑りつかれたところに遭遇する。これを墨狩りだったばあちゃんと、担任の湯葉《ゆば》先生が狩るのを見て怨墨を知ることに。 カイトとミズルチのルーツをたどる冒険がはじまる。

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

こちら御神楽学園心霊部!

緒方あきら
児童書・童話
取りつかれ体質の主人公、月城灯里が霊に憑かれた事を切っ掛けに心霊部に入部する。そこに数々の心霊体験が舞い込んでくる。事件を解決するごとに部員との絆は深まっていく。けれど、彼らにやってくる心霊事件は身の毛がよだつ恐ろしいものばかりで――。 灯里は取りつかれ体質で、事あるごとに幽霊に取りつかれる。 それがきっかけで学校の心霊部に入部する事になったが、いくつもの事件がやってきて――。 。 部屋に異音がなり、主人公を怯えさせる【トッテさん】。 前世から続く呪いにより死に導かれる生徒を救うが、彼にあげたお札は一週間でボロボロになってしまう【前世の名前】。 通ってはいけない道を通り、自分の影を失い、荒れた祠を修復し祈りを捧げて解決を試みる【竹林の道】。 どこまでもついて来る影が、家まで辿り着いたと安心した主人公の耳元に突然囁きかけてさっていく【楽しかった?】。 封印されていたものを解き放つと、それは江戸時代に封じられた幽霊。彼は門吉と名乗り主人公たちは土地神にするべく扱う【首無し地蔵】。 決して話してはいけない怪談を話してしまい、クラスメイトの背中に危険な影が現れ、咄嗟にこの話は嘘だったと弁明し霊を払う【嘘つき先生】。 事故死してさ迷う亡霊と出くわしてしまう。気付かぬふりをしてやり過ごすがすれ違い様に「見えてるくせに」と囁かれ襲われる【交差点】。 ひたすら振返らせようとする霊、駅まで着いたがトンネルを走る窓が鏡のようになり憑りついた霊の禍々しい姿を見る事になる【うしろ】。 都市伝説の噂を元に、エレベーターで消えてしまった生徒。記憶からさえもその存在を消す神隠し。心霊部は総出で生徒の救出を行った【異世界エレベーター】。 延々と名前を問う不気味な声【名前】。 10の怪異譚からなる心霊ホラー。心霊部の活躍は続いていく。 

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

処理中です...