【完結】七色のスキルを手に入れて龍宮城を取り戻せ。龍宮伝説ルオ・謎の生命体アクア王との対決！！

Ⅰ章．邂逅

08．謎の生命体アクア

深海には強力な磁場が発生しており、そこで時空の歪みが起こっていると言う。
龍神が治める龍の都は、その時空の歪みの先に存在し、都からの案内人なくしては辿り着くことが出来ない。

「なんかそんな話、聞いたことあるな。昔々浦島太郎が助けた亀に連れられて竜宮城に行った話」
「ふふん。さすがに俺の都は有名だな」

様々な海の生物たちがのどかに暮らしていた美しい龍の都に、一月ほど前、突如謎の増殖生物アクアが現れた。

「アクア？」
「ラテン語で水という意味じゃな」

いつどこから現れたのかまるで不明のアクアは、人間とクラゲの融合体のような見た目をしており、あっという間にその数を増やす。無数にある触手のような臓器の先から光線を発し、光線に捕らわれた生物をアクアに変えてしまうのだ。

「えー、ゾンビに噛まれるとゾンビになるってやつ？」
「…おい、ルオ。お前、一体何のゲームやってんだよ」

アクアに変えられた生物たちは最初のアクア（アクア王）の奴隷となり、他の生物たちを次々と襲う。戦ったことなどなく、それぞれがのんびりと暮らしていた都の生物（ウミガメ、ダイオウイカ、人魚など）はほとんど全てが何の感情も持たない無機質な奴隷アクアとなってしまう。

「ひどいっ」
「ここで、俺の出番」

都の異変に龍神王は龍剣を持ち、アクア王と対決する。だが、無数の手下を従えたアクア王の光線攻撃により、龍神は力（龍剣）を奪われ、トカゲの見た目に変えられてしまう。

「え。負けてんじゃん」
「うるさいな」

アクア王は龍神の力をアクアエネルギーに変換し、龍の都を高度文明に彩られたアクア帝国として占拠する。また、龍神が力を失ったことにより、深海の生態系が変化。時空の歪みの先の地球環境にも深刻な影響を及ぼす。生物たちが大量に死滅し、地上では全く雨が降らなくなってしまう。

「なるほど。このところの海洋環境の異変は龍神が力を失ったからなんじゃな」
「…お前のせいじゃん」
「畳みかけるのやめてくれる？」

アクアから都を取り戻し、深海生物たちを元に戻すためには、アクア王が心臓に隠し持っている龍神の力（ドランの龍剣）を対となる龍剣で刺し貫き、奪還すること。

「つまり、お前の龍剣でザクっとやって俺の剣を取り返して欲しいわけ」
「すごい簡単に言うじゃん」

ドランが茶飲み友達に語るかのように、お替わりの緑茶を飲み干してざっくり語った話はそんなところだった。要するに、龍の都が謎の生物アクアに乗っ取られてしまったので、ドランと一緒に都に行き、アクアから都を取り戻さなけらばならないと言うことなのだが。

「人のこと地上に放り出しておいて、困った時だけ丸投げじゃない？」
「まあそう言うなって、可愛い弟よ」
「調子いいし。すり寄るなし」

結構厄介な使命を与えられてしまったルオは、能天気に腕に擦り寄ってきたちんちくりんの兄をテーブルの上に弾き飛ばした。