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Ⅰ章.邂逅

05.龍剣

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「あのさ、おじい。ちょっと気になることがあるんだけど」

翌朝、ルオはトカゲと並んで、おじいの部屋の前でおじいが起き出してくるのを待ち受けた。

「うわ、ルオか。どうした、こんな朝早くから」

眠そうに出てきたおじいは部屋の前に正座しているルオを見て驚いたようだが、ルオの真剣な面持ちを見るとすぐに寄り添って話を聞いてくれた。
おじいの朝は早い。おじいはまだ日が昇らないうちに裏の畑から野菜を収穫する。今もまだやっと空が白み始めたばかりだ。

「オレのあざと同じあざが、トカゲにもあるんだ」

ルオは腕に乗っているトカゲと左右の手の甲を並べて差し出した。

「なんだって」

おじいは目を近づけたり離したりして手の甲をまじまじと眺め、それから眼鏡を持ってきてまたまたじっくりと二人の手を見比べた。

「うむ、確かに。トカゲのあざはとても小さいが、確かに同じ龍が左右対称に向き合っているように見えるな」

しっかりと観察した後、おじいはルオに同意した。

「それでさ、昨日の夜、夢を見たんだ。トカゲが出てきて、夢の中では水色の翼の生えた龍になってたんだけど、俺たちの都が大変だから剣を抜けって言うんだ。オレのこと、トカゲの双子の弟だって言うんだよ」

ほう、それはなかなかファンタジックな夢だな。
と言われるとルオは予想していた。夢にしては出来すぎているけど、トカゲと双子なんてありえない。いや、本当は龍神だとか言っていたけど、どっちにしてもあり得ない。ルオは少しばかり潜水が得意で漢字が苦手なごく普通のありふれた小学生なのだ。

「龍、……剣、か」

しかしおじいはルオの予想に反し、難しい顔をして押し黙ってしまった。思わずトカゲと顔を見合わせる。なんとなく、「だから言っただろ」とトカゲが兄貴風を吹かせているように感じる。

ええ、ちょっと待ってよ。オレ、本当にこのちんちくりんなトカゲの弟なの? そしたらオレもトカゲなの?

「ルオ。お前に話さなければならないことがある。そして、見てもらいたいものがある。ついてきなさい」

おじいが向かった先は、家の裏にある蔵だった。蔵の中には骨董屋には並べられていないものが数多く眠っている。ルオは時々おじいと共に蔵の掃除をするが、店舗の商品以上に何に使われるのかよく分からない奇妙なもの、綺麗なもの、なんだか危険な感じがするものがごちゃ混ぜになって置かれている。

おじいは蔵の奥から一本の剣を持ってきた。ルオの肩に乗っているトカゲが、ピクリと身を動かす。なんとなく、全身の毛が逆立つような不思議な興奮がルオの身体を駆け抜けた。

「これはお前の剣だ」

おじいが剣をルオに差し出す。蒼く鈍い銀色の光を放つ剣は、柄が龍の形をしている。ルオが剣に手を伸ばすと、剣の方からルオの手にすっと収まる。そしてごく自然にすらりと鞘から引き抜かれ、まばゆい銀色の刀身を露わにした。

「すごい、……」

刀身には龍の紋章が刻まれていた。ルオの、そしてトカゲの手の甲にあるあざと同じ龍の形。この剣がルオの物であることは、言われなくても全身で感じ取っていた。ぴたりと馴染む。新しい手を手に入れたかのように。軽く、のびやかで、隙が無い。

鞘は軽く宙に浮かび上がったかと思うと、初めから決まっていたようにルオの背中にぴたっと収まった。
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