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Ⅰ章.邂逅

04.トカゲの正体

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ルオはトカゲと寝食を共にするようになった。

トカゲはルオの隣に座って、当然のようにルオのご飯を半分食べた。朝ごはんのお味噌汁、おじいが裏の畑で育てているトマトとキュウリ。枝豆、ナスの漬物。お昼ご飯のハムサンド、おやつのプリン、夜ご飯の肉じゃがまで。

「トカゲって雑食だったんだ、…」

ルオが呆れるほど、何でもよく食べる。

「基本的にトカゲは昆虫を食べるようだが。変わった子じゃな」

おじいも目を見張る食べっぷりである。その小さな身体のどこにそんなに入るのか。

「あ、それはオレの肉っ」

ついにはルオのおかずにまで手を出してきた。

「お前はさっき食べただろ、返せよっ」
「ふぐぐ、……っ」

肉の奪い合いが始まる。

「そうしていると、お前たち、なんだか兄弟みたいだなあ」

争奪戦に無関係なおじいは微笑ましそうに見守っている。
何言っちゃってんの、おじい。こんな食いしん坊で生意気な弟いるか。

むくれるルオをものともせず、トカゲはどこまでもついてくる。ルオが宿題をしているとドリルの上に載って邪魔するし、おつかいには勇んで先に行き店を間違えるし、お駄賃のアイスは全部食べちゃうし。お風呂に入れば飛び込んで来てはしゃいでお湯を半分なくしちゃうし、布団に入れば潜り込んできて掛け布団を全部持って行っちゃうし。

…弟にしたら、手がかかりすぎるだろ。

トカゲのおかげでルオの毎日は俄然忙しくなり、夜は三秒で寝落ちてしまうようになった。
そんな風にあっという間に眠りに就いたある晩、トカゲはルオの夢の中にまでしゃしゃり出てきた。

『ルオ、何をのんきに遊んでるんだ。俺たちの都が大変なことになっている。早く剣を抜け』

いやいやいや。遊んでるのはお前だけじゃん。

『ていうか、俺たちの都ってなに』

夢の中で、トカゲは龍の姿をしていた。壮大で美しい水龍。蒼く輝く翼を持っている。

『龍の都だ。俺は都を統べる龍神。ルオは俺の双子の弟だ』

「ええ――――――っ」

思わず大声を上げて、自分の声で目が覚めた。
布団の上に飛び起きる。窓から月明かりが差し込む静かな夜で、遠くから潮騒が聞こえる。

ルオは夢の衝撃で高鳴る心臓を落ち着かせようと深呼吸した。すると、布団の上できちんと座っているトカゲと目が合う。トカゲは何か言いたそうに夢の中の龍と同じ色の瞳でルオを見ていた。

「いやいや。そんな目で見られても、……夢じゃんな?」

自分に言い聞かせるようにつぶやいて、トカゲに笑いかけるも、トカゲは真顔のままである。まあいつも表情は変わらないんだけど。

「いやいや。トカゲの弟とか、ないし。どっちかっていうとお前が弟だし」

うんうん。ないない。ただの夢だ。とルオが自分を納得させていると、トカゲがルオの上に這い上ってきて目の前に右手をぐいぐい差し出した。見ろと言わんばかりに。

「なんだよ、……?」

トカゲの手などつぶさに観察したことはなかったが、仕方なくじっくり、じ――――っくり眺めてみると、手の甲にわずかにあざのような模様が見えた。

「え、……」

自分の左手の甲をトカゲの手と並べてみる。トカゲの右手の模様は、ルオの左手の甲にある龍のあざと対となる形をしているように見えた。
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