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Ⅰ章.邂逅
03.真の目的
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「そうか。それは頼もしいな」
おじいはルオの申し出に目を細めて頷いたが、真面目な顔に戻ると慎重に話し始めた。
「だがな、さっきの人たちはわしに依頼に来たようでいて、本当の目的はお前なんだ」
「オレ? なんで?」
驚いたルオは、お替わりしようと鉄板から持ち上げた焼きそばの束をそのまままた鉄板の上に落としてしまった。
アチチ。
「お前に人並外れた潜水能力があると言う噂を聞きつけたらしい。彼らは、地球温暖化で海面が上昇する未来を見据え、人が水中で暮らせるよう人体への応用実験を検討する部署にいる。人工エラを取り付けたり、海洋生物のDNAを人のDNAに置き換えたり、脳波に電流を流して水中でコミュニケーションをとる方法を考えたりな。様々な可能性を探っているんだが、中には倫理的な問題を含む実験もあって、彼らは極秘に強行していると言われている」
おじいは悲しそうに目を伏せた。
「ひんり、…?」
お皿に盛った焼きそばを口いっぱいに頬張り、もぐもぐしながら、倫理って何だっけと考えてみる。
正直おじいの話は半分も分からなかったが、さっきの人たちがあまり良くないことをしているらしいことは理解できた。
あいつ、エビって言うよりヘビっぽかったもんな。
「人として許されないようなひどい行いのことだよ。例えば彼らの実験の犠牲となって命を落とした人間や生物が多くいるんだ」
「えー、そんなのダメじゃん」
ルオは焼きそばを飲み込んでから大声を上げた。
「そうだな。しかしわしらは生きるために食べる。多くの命をいただいている。彼らも人間がこの先も生き延びるために必要な実験だと言う考えなんだ」
「…うーん」
「わしは賛同できないんだがな。だから彼らに協力してお前の身体を調べたり、実験に参加させたりすることはしたくないと思うんだ」
おじいの言葉にルオは大きく頷いた。
「分かった。じゃあおじいはこれからもお店にいられるんだな。良かった。オレもその方が嬉しい」
おじいも頷いて朗らかに笑う。
「そうだな。昨日店に古代蝶と見られる虫入り琥珀の装飾品が持ち込まれてな、専門家がぜひとも鑑定したいと言って今日の午後、店に来る予定なんだ。わしのがらくたやはこれでもなかなか繁盛しておるからな。わしも忙しいんじゃ」
おじいが得意そうに語り始めたが、やはり半分も理解できなかった。ふと窓の外を見ると、そこに先ほどの青色トカゲがいて、ばっちり目が合った。窓に手をかけてじっと中の様子を見ている。
「あー、あの子、やっぱりオレに用があるのかな」
ルオが言うと、おじいも窓の方を眺めた。
「なかなか珍しい色のトカゲだな」
「オレの後ついてきちゃったんだ。こんなところにいたら、誰かに捕まえられちゃうかもしれないのに」
「お前についてきたなら、お前に用があるんだろう。話を聞いてやるといい」
「話って言ったって、あの子、何にもしゃべらないよ?」
「ははは、そうだなあ」
おじいはのんきに笑っているが、ルオはまじめに困っている。
「何の用か分かるまで、そばに居たらいいんじゃないか」
「あ、なるほど」
さすがおじい。納得したルオが椅子から飛び降りて窓辺に駆け寄る。
窓を開けると、待ってましたとばかりに青色トカゲは青く光る目をルオに向けてシュルルっと近づいてきた。
「うん。じゃあ、仲良くしようぜ」
ルオが手を差し出すと、トカゲは当然のように手の上に這いあがってきた。
おじいはルオの申し出に目を細めて頷いたが、真面目な顔に戻ると慎重に話し始めた。
「だがな、さっきの人たちはわしに依頼に来たようでいて、本当の目的はお前なんだ」
「オレ? なんで?」
驚いたルオは、お替わりしようと鉄板から持ち上げた焼きそばの束をそのまままた鉄板の上に落としてしまった。
アチチ。
「お前に人並外れた潜水能力があると言う噂を聞きつけたらしい。彼らは、地球温暖化で海面が上昇する未来を見据え、人が水中で暮らせるよう人体への応用実験を検討する部署にいる。人工エラを取り付けたり、海洋生物のDNAを人のDNAに置き換えたり、脳波に電流を流して水中でコミュニケーションをとる方法を考えたりな。様々な可能性を探っているんだが、中には倫理的な問題を含む実験もあって、彼らは極秘に強行していると言われている」
おじいは悲しそうに目を伏せた。
「ひんり、…?」
お皿に盛った焼きそばを口いっぱいに頬張り、もぐもぐしながら、倫理って何だっけと考えてみる。
正直おじいの話は半分も分からなかったが、さっきの人たちがあまり良くないことをしているらしいことは理解できた。
あいつ、エビって言うよりヘビっぽかったもんな。
「人として許されないようなひどい行いのことだよ。例えば彼らの実験の犠牲となって命を落とした人間や生物が多くいるんだ」
「えー、そんなのダメじゃん」
ルオは焼きそばを飲み込んでから大声を上げた。
「そうだな。しかしわしらは生きるために食べる。多くの命をいただいている。彼らも人間がこの先も生き延びるために必要な実験だと言う考えなんだ」
「…うーん」
「わしは賛同できないんだがな。だから彼らに協力してお前の身体を調べたり、実験に参加させたりすることはしたくないと思うんだ」
おじいの言葉にルオは大きく頷いた。
「分かった。じゃあおじいはこれからもお店にいられるんだな。良かった。オレもその方が嬉しい」
おじいも頷いて朗らかに笑う。
「そうだな。昨日店に古代蝶と見られる虫入り琥珀の装飾品が持ち込まれてな、専門家がぜひとも鑑定したいと言って今日の午後、店に来る予定なんだ。わしのがらくたやはこれでもなかなか繁盛しておるからな。わしも忙しいんじゃ」
おじいが得意そうに語り始めたが、やはり半分も理解できなかった。ふと窓の外を見ると、そこに先ほどの青色トカゲがいて、ばっちり目が合った。窓に手をかけてじっと中の様子を見ている。
「あー、あの子、やっぱりオレに用があるのかな」
ルオが言うと、おじいも窓の方を眺めた。
「なかなか珍しい色のトカゲだな」
「オレの後ついてきちゃったんだ。こんなところにいたら、誰かに捕まえられちゃうかもしれないのに」
「お前についてきたなら、お前に用があるんだろう。話を聞いてやるといい」
「話って言ったって、あの子、何にもしゃべらないよ?」
「ははは、そうだなあ」
おじいはのんきに笑っているが、ルオはまじめに困っている。
「何の用か分かるまで、そばに居たらいいんじゃないか」
「あ、なるほど」
さすがおじい。納得したルオが椅子から飛び降りて窓辺に駆け寄る。
窓を開けると、待ってましたとばかりに青色トカゲは青く光る目をルオに向けてシュルルっと近づいてきた。
「うん。じゃあ、仲良くしようぜ」
ルオが手を差し出すと、トカゲは当然のように手の上に這いあがってきた。
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