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Ⅰ章.邂逅
02.海洋研究所からの訪問者
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「おかえり、ルオ」
おじいの骨董屋『うみのがらくた』には、先客がいた。カウンターの向こうから朗らかに声をかけるおじいと共に、男女三人組の大人たちがルオに振り向いた。中で一番偉そうな紺色のスーツを着た中年男性が値踏みするような目でルオを眺める。
「ああ、君が博士の拾、……博士のお孫さんのルオくんか。初めまして。私は海洋研究所で主任研究員をしている海老沼です。今日は博士にお願いがあって来たのですよ」
エビヌマと名乗った男性は、ルオを上から下までじろじろと眺めて、愛想笑いを浮かべた。
なにこいつ。目が笑ってない、……
なんとなく、陰湿な蛇を思わせる海老沼に不信感を抱きながらも、ルオは無邪気さを装って頭を下げた。
「こんにちは」
おじいに挨拶はちゃんとしろと言われている。
「海老沼君。わしはもう引退した身なので、協力できることはないと思うんだがね」
「しかし海藤博士。博士も気になっているでしょう。昨今の異常な海洋環境の変化。深海生物の死骸が次々岸に打ち上げられ、深刻な水不足が続いている。各地でひどい干ばつが続き、森林火災が多発して、食料不足に苦しめられている。何か、海の中でとんでもないことが起こっているに違いないんです」
「もちろん、気にはしておる。しかし今更私に何ができるのか、……」
「博士がいなければ、アクアスーツの完成はあり得ませんでした。博士ほど生態学に造詣が深い方はいません。今一度、研究所に戻っていただきたい。返事はすぐにとは言いません。また伺います」
海老沼と女性職員はそろっておじいに頭を下げると、やはり探るような目をルオに向けて、店を出ていった。
おじいが昔、優秀な研究者だったと言う話は聞いたことがある。海老沼たちはおじいに仕事の依頼に来たようだ。
「よし、ルオ、お腹空いただろう。焼きそばの準備は出来ている。ランドセルを置いておいで。一緒に焼いて食べよう」
おじいは明るく言うと、店舗び奥に続いている住宅部に足を向けた。
「うんっ」
ルオは、店舗に所せましと並べられている大小さまざまな形をした商品の間を器用にすり抜け、おじいに続いた。おじいが扱う商品は何に使うかよく分からないが、おじいが朝晩丁寧に磨き上げ、大切にしていることは知っている。
中庭に面した日当たりのよいリビングで、鉄板に載せられたエビ、イカ、貝類が香ばしい匂いを上げながらこんがりと焼けていく。ルオの好きな太麺とキャベツ、もやし、ニンジン、きくらげがしんなりいい感じに焼けたら、ソースをたっぷりかけて、上に半熟目玉焼きを載せるとおじい特製海鮮焼きそばの出来上がり。アツアツの焼きそばと魚介をとろーり卵と一緒に食べると最高に美味しい。
「おじい。仕事に行かなきゃいけないんなら、店番はオレやるよ。明日から夏休みだしさ」
ルオは口をハフハフさせながら大盛りの焼きそばをぺろりと平らげ、同じくフウフウしながら焼きそばを味わっている向かい側のおじいを見た。
おじいの骨董屋『うみのがらくた』には、先客がいた。カウンターの向こうから朗らかに声をかけるおじいと共に、男女三人組の大人たちがルオに振り向いた。中で一番偉そうな紺色のスーツを着た中年男性が値踏みするような目でルオを眺める。
「ああ、君が博士の拾、……博士のお孫さんのルオくんか。初めまして。私は海洋研究所で主任研究員をしている海老沼です。今日は博士にお願いがあって来たのですよ」
エビヌマと名乗った男性は、ルオを上から下までじろじろと眺めて、愛想笑いを浮かべた。
なにこいつ。目が笑ってない、……
なんとなく、陰湿な蛇を思わせる海老沼に不信感を抱きながらも、ルオは無邪気さを装って頭を下げた。
「こんにちは」
おじいに挨拶はちゃんとしろと言われている。
「海老沼君。わしはもう引退した身なので、協力できることはないと思うんだがね」
「しかし海藤博士。博士も気になっているでしょう。昨今の異常な海洋環境の変化。深海生物の死骸が次々岸に打ち上げられ、深刻な水不足が続いている。各地でひどい干ばつが続き、森林火災が多発して、食料不足に苦しめられている。何か、海の中でとんでもないことが起こっているに違いないんです」
「もちろん、気にはしておる。しかし今更私に何ができるのか、……」
「博士がいなければ、アクアスーツの完成はあり得ませんでした。博士ほど生態学に造詣が深い方はいません。今一度、研究所に戻っていただきたい。返事はすぐにとは言いません。また伺います」
海老沼と女性職員はそろっておじいに頭を下げると、やはり探るような目をルオに向けて、店を出ていった。
おじいが昔、優秀な研究者だったと言う話は聞いたことがある。海老沼たちはおじいに仕事の依頼に来たようだ。
「よし、ルオ、お腹空いただろう。焼きそばの準備は出来ている。ランドセルを置いておいで。一緒に焼いて食べよう」
おじいは明るく言うと、店舗び奥に続いている住宅部に足を向けた。
「うんっ」
ルオは、店舗に所せましと並べられている大小さまざまな形をした商品の間を器用にすり抜け、おじいに続いた。おじいが扱う商品は何に使うかよく分からないが、おじいが朝晩丁寧に磨き上げ、大切にしていることは知っている。
中庭に面した日当たりのよいリビングで、鉄板に載せられたエビ、イカ、貝類が香ばしい匂いを上げながらこんがりと焼けていく。ルオの好きな太麺とキャベツ、もやし、ニンジン、きくらげがしんなりいい感じに焼けたら、ソースをたっぷりかけて、上に半熟目玉焼きを載せるとおじい特製海鮮焼きそばの出来上がり。アツアツの焼きそばと魚介をとろーり卵と一緒に食べると最高に美味しい。
「おじい。仕事に行かなきゃいけないんなら、店番はオレやるよ。明日から夏休みだしさ」
ルオは口をハフハフさせながら大盛りの焼きそばをぺろりと平らげ、同じくフウフウしながら焼きそばを味わっている向かい側のおじいを見た。
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