秘密の令嬢は敵国の王太子に溶愛(とか)される【完結】

remo

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番外編Ⅲ

双子座の幸せ

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レイに赤ちゃんが生まれた。

という知らせを受け、ウルフと二人、シーザーにまたがって橙龍国に飛んできた。俺は一刻も早く元気なレイと赤ん坊を見たかったのに、ウルフとシーザーがタッグを組んでハレンチ合戦を仕掛けてきたおかげで、橙龍国に着いた時には既に日も傾いていた。

「だから、お前は、…っ」

全然腰が立たないし、喘ぎ過ぎて声はかすれてるし、何ならまだ中にウルフを感じるし。

恥ずかしくも動けない俺をウルフが抱えたままシーザーから降ろすと、ニヤニヤ度全開のシーザーに見送られた。あああ、ハレンチに毒されていく。悶絶する俺はウルフにしっかり抱きかかえられながら、橙龍国の王城に赴いた。

俺はこの国に来るとき常に担がれている気がする。待遇は荷物扱いの前回より全然マシだけど、恥ずかしさは今回の方が格段上だ。

「ウルフ様、兄君、よくぞ、……あ、…本日も仲睦まじく」

迎えに出てきたトウマが楽しそうなウルフと不服そうな俺を見て、瞬時に事の次第を悟り、賢明にも言葉を選んだらしいのも気に食わない。俺らいつからヤリまくりキャラになってんだ!?

「お二人とも、どうぞこちらに。レイも姫御子も元気です」

トウマこと橙龍国皇帝トマシウス・レンジに案内されて、王城の奥にある部屋に入ると、たくさんの花に囲まれて、赤子を抱いたレイがにこやかに出迎えてくれた。花の蜜とミルクの香りが混ざり合って、ほんわかとした幸せに満ちている。

「レイ、出産おめで、…」
「ライ、来てくれてありが、…」

同時に言い出した俺たちだったが、

「…ライったら、赤ちゃんと一緒ね」

レイは腕に抱いた赤ん坊とウルフに抱かれている俺を見比べて吹き出した。

「ちょっと待て。これは俺のせいじゃなく、ここにいるこのエロバ、…」
「ライ、昔から銀狼ウルフ様にべったりだったものね」

せめて最後まで言い訳させろよ。

レイのベッドサイドで、生まれたばかりの赤ん坊を囲んだ。赤ん坊はまだ皺くちゃで柔らかくて驚くほど手足が小さい。ままごとみたいな小さな目にもしっかりまつ毛が生えていて、いっちょ前にあくびをしたりする。

「かっわいいな、可愛いな、な、ウルフ」
「うんうん」
「すげえ、ちっちぇえ。壊れそうっ!!」
「うんうん」

生まれたばかりの赤ん坊を間近に見て、興奮が隠しきれない俺を、隣からウルフがよしよし撫でる。
いやこいつ、赤ん坊じゃなくて俺の方見てねえ?

「ライ、抱っこしてみて」

レイに差し出されて、恐る恐る赤ん坊を手に取ると、柔らかい幸せがギュッと詰まっていて懐かしいミルクのような匂いがする。小さな小さな温もりから何とも言えない幸せが伝わってきて頭の芯までほのぼの満たされていると、

「生まれたのは女の子なんだけど、ライに名付け親になってもらいたいと思って」
「…は? 名づけ、…!?」

レイがとんでもないことを言いだした。

「無理無理無理、俺にそんなセンスないし」
「青い目だからアオだもんな」
「お前は黙ってろよ」

ウルフをどついている俺を横目に、

「私、ライと双子でライといて、すごく幸せだったから、この子にも私たちの幸せが宿るといいなって」

レイが殊勝なことを言いだすので、引き受けないわけにはいかない気になってきた。

「分かった。よく考えて知らせに来る!」

レイをねぎらって後日の訪問を約束してから王城を出ると、辺りはすっかり夜闇に包まれていて、空には眩いばかりの星が瞬いていた。

「あ、…」

ウルフと一緒にシーザーに乗って仰ぎ見た星空の中で、ひときわ輝くオレンジ色の星が見えた。

「なあ、俺、天才かも」

空を仰いだまま後ろに乗っているウルフに依りかかると、

「…いいんじゃないか」

ウルフが柔らかく目を細めて俺の額に唇を寄せた。

人は生まれた時、手のひらに夢と幸せを握りしめているのだという。俺とレイはそれぞれに最愛の人と幸せを見つけた。生まれたばかりのポルックスがその手に握りしめた運命の人と幸せに巡り合えるように。

そして。

祝福を受けて生まれてきた全ての子どもたちに。どうかかけがえのない幸せで満ちるように。

心から願った。




――――――――――――――――――
もう1篇 →
番外編 公開予定です。
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