秘密の令嬢は敵国の王太子に溶愛(とか)される【完結】

remo

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secret.Ⅲ

04.

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…アオ?

「…呼んだか?」

アオの余韻に浸っていたら、いつの間に戻ってきたのか、ウルフが俺のすぐ傍らに立っていた。

「ウルフっ、…」

その姿を認めると瞬時に込み上げる圧倒的な安堵のまま、しがみつこうとして思いとどまった。

そうだ、まずい。俺は未だ男。
薄絹一枚で肌があらわな恥ずかしい格好をした男。今、ウルフにのぞき込まれたら、万が一、勢い余ってまくられたら、誤魔化しようがない。

「後宮に怪しい侵入者があったらしくて、警備が大騒ぎだ。お前、大丈夫だったか、レイ?」

ウルフが俺に顔を寄せる。

「あ、…うん。えっと、あの、…」

まずい。近くに来たらまずい。微妙に男ってバレる。

俺はさりげなく布団に足を滑り込ませながら叫んだ。

「頼むっ! ウルフの精液くれっ」

瞬間ウルフが動きを止めて、その綺麗な青い瞳を瞬かせた。

「は? せい、…え、…?」

戸惑いを隠せずフリーズするウルフ、可愛いな。
って、そんな場合ではなく。

「ちっがう! 間違えた! 精気だ、精気っ!!」

自分がやらかしたことを悟り、慌てて弁解する俺に、ウルフは顔を近づけると意味深な笑みを浮かべて、

「…お前には溢れるほど注いでると思うがな」

ふっと軽く口づけた。

あ。ほどける、…

ウルフが触れたところから、安堵が流れ込んでくる。
なんで。本当は誰よりも秘密を抱えている相手なのに。ウルフがいれば大丈夫なんて、なんでそんな風に思えるんだろう。

「ウ、…ルフ。…ウルフ」

ウルフが好きだ。どうしても好きだ。

ウルフが唇の間から俺の喉奥にまで長い舌を差し込れる。舌先で押し込まれた結晶を飲み込むと、不安にさいなまれた身体に精気が行き渡るのを感じた。
こんなにもウルフにって生きているのに、俺が本当は偽物で、ウルフを騙して国民を欺いてたって知ったら、ウルフはどうするんだろう、…

「ウ、…ルフ、…っ」

感じ慣れた衝撃が再び身体中を巡る。

身体が燃えるように熱くなる。目が回って瞼を開けていられない。空間が歪んで、自分がどこにいるのか、どうなっているのか、分からなくなる。

「…うん。大丈夫だ。俺はここにいる」

暗闇の中、ウルフだけが俺のともしび。ウルフの気配に、ウルフの声に、ウルフの温もりにすがりついた。ウルフのしなやかに引き締まった身体に引き寄せられるのを感じる。長い腕と長い足でぴったりと抱きしめられる。熱い衝動から逃れようと身をよじる俺をしっかり抱きしめて、ウルフの滑らかな手がなだめるように俺を撫でる。

ウルフの手。気持ちいい。

ねだるように擦り寄ると、ウルフはもっと広くもっと奥まで手のひらを這わせた。歪んだ空間が秩序を取り戻し、同時に心地よさが広がる。ウルフに撫でられたところから、ささくれだった神経が凪いでいくようにしっとりと落ち着きを取り戻す。徐々に甘い戦慄が立ち昇ってゆき、ウルフに全身を押し付ける。

間を遮る薄絹が邪魔だ。もっと近く、もっとぴったり、一ミリの隙間なく、何もかもすべてウルフに溶け合いたい。

とめどなく沸き起こる衝動をぶつけると、俺の舌を撫でるウルフの舌先が笑った。

「…精液、な」

もどかしい服をはぎ取って、一糸まとわず欲望のままに熱く焦がれる肌を、ウルフは甘く包み込んだ。ウルフのために膨らむ胸も開かれた足も揺れる腰も、待ちきれずに潤んで溢れ出す。

「わがままなやつ」

ウルフを与えられて、狂乱にわななく。歓喜の爆発に立て続けに弾けて、弾き飛ばされて、ウルフにしがみつく。

「ウ、…、ウル、…っ」

ウルフが好きで。粉々に砕け散って。ただそれだけの塊になって、ウルフに降り積もる。俺の形も身体も全部なくなっていいから、ここにいたい。ウルフのそばにいたい。凄まじい快感と熱量に吹きすさびながら、叶わない願いが押し寄せた。

どうしよう。俺、…

ウルフと離れたくないよ。
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