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secret.Ⅱ
05.
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「おい、おま、…っ、マジで無理って、…っ」
「…スカートは、何のためにあると思ってるんだ?」
ぜってーこのためじゃねえだろうっ!!
光月湖の視察は、街の人の歓待を受けて和やかなうちに終了した。
ただ、湖畔に駐屯する王家の軍によると、橙龍国民らしき者が何度か街をうろついており、不正に入国して青龍国の情勢を探っているのではないかということだった。街の人も見かけない人がいるのを見た、とか、子どもが話しかけられた、とか、それを裏付けるような証言をした。
「攻め込むとしたら湖畔の地形は攻め入りやすい」
「先の戦で我らが勝利したことを不満に思う橙龍の輩が謀反を企て奇襲してくる可能性は十分にある」
「或いは、…統一王の証を狙っているのかもしれぬ」
国境の警備を強化すること、不安に思う街の人の声を聞き、巡回を怠らないこと、異変を感じたらすぐに城に伝達すること、…
街に怪しい気配がないかを見回りながら、王家の軍は対策を立てていた。
「ウルフ様、ご結婚おめでとうございます」
俺はウルフに連れられて湖畔の街を歩き、街の人々に挨拶した。ここでもウルフの人気は凄まじく、身近に触れ合ったり、真摯に国民の声に耳を傾けたりしている日頃からの姿勢が好感を持って受け入れられているのを感じた。もちろん、ウルフ個人のクオリティーの高さに対する信頼もある。
ウルフは視察の間中、俺の手を取り、指と指とをしっかり絡めて歩いた。手を繋げない時があっても、どこかで必ず俺に触れていて、
「別にどっか行ったりしねえよ?」
「…お前は危なっかしいからな」
前科があるから仕方ないけど、その過保護ぶりに口をとがらせてみるも、笑顔で一蹴されたばかりかうっかりキスされた。
「おま、…っ」
一度ならず二度までもっ。
誰かこのハレンチ王子を止めてくれ。
「ウルフ様、奥方様を溺愛されていらっしゃるのね」
「見て、あの蕩けそうに幸せそうなお顔」
ただ、王子のハレンチ三昧も、俺に対する国民感情を軟化させることには成功していた。愛のない政略結婚で娶ったお飾りの妻からウルフ王子の愛妻にイメージチェンジされている感は否めない。
だからといって。
こんなとこでやるとか、信じらんねえっ!!
光月湖の視察を終えた俺たちは、先に戻るという王一行と別れ、王城に戻る前に湖畔を散歩していくことにした。湖畔に茂る樹木の間からは柔らかな日差しが漏れ、月の光をたたえたような黄金色の広大な湖は自然豊かな山並みと晴れた空を映し出す。壮麗な景色に癒された。野生の谷で育った俺は、野山を駆け回っている方が性に合っている。
心ゆくまで散策して、シーザーと山道登りの競争をしたり(もちろん負けた)、茂みに群生している苺を摘んで食べたり、ひんやりと澄んだ湖に足を浸したりして楽しんだ。
「帰るか」
次第に日が暮れてきて、散々はしゃいで疲れた俺は大人しくウルフに抱えられてシーザーに乗せてもらった。
「…濡れたから。寒くないか?」
ウルフが俺をぴったり引き寄せて上から大きめのブランケットを一緒に着せかけてくれる。
ちょっとくらい濡れたってどってことねえし。山育ちなめんなよ。
と思ったけど、密着するウルフの体温が心地いい。ブランケットで一つに巻かれて、包み込まれるウルフの匂いに安心する。俺を支える長い足も腕も、背中に感じる厚い胸板も、夜風とともに髪をくすぐる吐息も、全部気持ちいい。
ずっとウルフにくっついてたい。
と思って下から見上げたら、
「…足りない?」
すかさずキスされた。
「お前、何回やって、…っ」
「もう、誰も見てない」
ハレンチ王子に対する抗議は、強く押し当てられた唇にふさがれ、性急に差し込まれた舌先に飲み込まれた。ずっとくっついていたくせに、俺を形作る細胞が待ちわびたみたいにウルフに絡みつく。足りない。どんなに深く繋がっていても、全然足りない。もっとウルフが欲しい。
まるでウルフも同じみたいに、俺を探る舌先が奔放で、待ちきれないみたいに俺をかき乱す。
交わって絡まって吸い付いて噛みついて、思うがままに蹂躙する。その激しさに身体中の細胞が沸騰した。息が出来ない。苦しい。でも離れたくない。やめたくない。口内から溶けていく。甘い眩暈に脳みそが蕩ける。身体が熱い。
シーザーが躍動するたび生まれる力強いリズムに乗せられて、ウルフと擦れ合う。潤って濡れて溢れてく。
「欲しいか?」
火照った俺をなだめるように、ウルフの手のひらと悪戯な指が俺の身体の線をたどり、這いこんで、俺をそそのかす。
「…スカートは、何のためにあると思ってるんだ?」
ぜってーこのためじゃねえだろうっ!!
光月湖の視察は、街の人の歓待を受けて和やかなうちに終了した。
ただ、湖畔に駐屯する王家の軍によると、橙龍国民らしき者が何度か街をうろついており、不正に入国して青龍国の情勢を探っているのではないかということだった。街の人も見かけない人がいるのを見た、とか、子どもが話しかけられた、とか、それを裏付けるような証言をした。
「攻め込むとしたら湖畔の地形は攻め入りやすい」
「先の戦で我らが勝利したことを不満に思う橙龍の輩が謀反を企て奇襲してくる可能性は十分にある」
「或いは、…統一王の証を狙っているのかもしれぬ」
国境の警備を強化すること、不安に思う街の人の声を聞き、巡回を怠らないこと、異変を感じたらすぐに城に伝達すること、…
街に怪しい気配がないかを見回りながら、王家の軍は対策を立てていた。
「ウルフ様、ご結婚おめでとうございます」
俺はウルフに連れられて湖畔の街を歩き、街の人々に挨拶した。ここでもウルフの人気は凄まじく、身近に触れ合ったり、真摯に国民の声に耳を傾けたりしている日頃からの姿勢が好感を持って受け入れられているのを感じた。もちろん、ウルフ個人のクオリティーの高さに対する信頼もある。
ウルフは視察の間中、俺の手を取り、指と指とをしっかり絡めて歩いた。手を繋げない時があっても、どこかで必ず俺に触れていて、
「別にどっか行ったりしねえよ?」
「…お前は危なっかしいからな」
前科があるから仕方ないけど、その過保護ぶりに口をとがらせてみるも、笑顔で一蹴されたばかりかうっかりキスされた。
「おま、…っ」
一度ならず二度までもっ。
誰かこのハレンチ王子を止めてくれ。
「ウルフ様、奥方様を溺愛されていらっしゃるのね」
「見て、あの蕩けそうに幸せそうなお顔」
ただ、王子のハレンチ三昧も、俺に対する国民感情を軟化させることには成功していた。愛のない政略結婚で娶ったお飾りの妻からウルフ王子の愛妻にイメージチェンジされている感は否めない。
だからといって。
こんなとこでやるとか、信じらんねえっ!!
光月湖の視察を終えた俺たちは、先に戻るという王一行と別れ、王城に戻る前に湖畔を散歩していくことにした。湖畔に茂る樹木の間からは柔らかな日差しが漏れ、月の光をたたえたような黄金色の広大な湖は自然豊かな山並みと晴れた空を映し出す。壮麗な景色に癒された。野生の谷で育った俺は、野山を駆け回っている方が性に合っている。
心ゆくまで散策して、シーザーと山道登りの競争をしたり(もちろん負けた)、茂みに群生している苺を摘んで食べたり、ひんやりと澄んだ湖に足を浸したりして楽しんだ。
「帰るか」
次第に日が暮れてきて、散々はしゃいで疲れた俺は大人しくウルフに抱えられてシーザーに乗せてもらった。
「…濡れたから。寒くないか?」
ウルフが俺をぴったり引き寄せて上から大きめのブランケットを一緒に着せかけてくれる。
ちょっとくらい濡れたってどってことねえし。山育ちなめんなよ。
と思ったけど、密着するウルフの体温が心地いい。ブランケットで一つに巻かれて、包み込まれるウルフの匂いに安心する。俺を支える長い足も腕も、背中に感じる厚い胸板も、夜風とともに髪をくすぐる吐息も、全部気持ちいい。
ずっとウルフにくっついてたい。
と思って下から見上げたら、
「…足りない?」
すかさずキスされた。
「お前、何回やって、…っ」
「もう、誰も見てない」
ハレンチ王子に対する抗議は、強く押し当てられた唇にふさがれ、性急に差し込まれた舌先に飲み込まれた。ずっとくっついていたくせに、俺を形作る細胞が待ちわびたみたいにウルフに絡みつく。足りない。どんなに深く繋がっていても、全然足りない。もっとウルフが欲しい。
まるでウルフも同じみたいに、俺を探る舌先が奔放で、待ちきれないみたいに俺をかき乱す。
交わって絡まって吸い付いて噛みついて、思うがままに蹂躙する。その激しさに身体中の細胞が沸騰した。息が出来ない。苦しい。でも離れたくない。やめたくない。口内から溶けていく。甘い眩暈に脳みそが蕩ける。身体が熱い。
シーザーが躍動するたび生まれる力強いリズムに乗せられて、ウルフと擦れ合う。潤って濡れて溢れてく。
「欲しいか?」
火照った俺をなだめるように、ウルフの手のひらと悪戯な指が俺の身体の線をたどり、這いこんで、俺をそそのかす。
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