秘密の令嬢は敵国の王太子に溶愛(とか)される【完結】

remo

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secret.Ⅰ

08.

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「お、…前っ、…もう、無理って、…っ」

「…お前が俺を離さないんだけどな?」

まろやかな肌触りの乳白色の湯。
滑らかな泡で身体中小指の爪の先まで、髪の一本一本に至るまで丁寧に洗われ、敏感になった肌にウルフの唇と舌が遊ぶ。どこをどう触られても気持ちよくて、ただ俺を支えているだけのウルフの肌にさえ感じてしまう。心地よくまとわる温泉が、敏感に反応する俺の身体を巧みに高めるので、どうしようもなくウルフにすがることになる。

ウルフは俺に水を飲ませたり、いつの間に用意したのかシャーベットを食べさせたり、緑豊かなサンルームに連れ出して肌や髪にトリートメントして潤いを与えたり、抱き上げて密着してこれ見よがしに肌を擦りつけてきたりするけれど、俺がねだるまで与えてくれない。俺を愛でながら純粋にお湯を堪能しているように見えなくもない。

ウルフと風呂に入るのは初めてじゃないけど、回を重ねるにつれ、どんどん意地悪になっていくというか、焦らすのが上手くなるっつうか、俺が羞恥に耐えるのを楽しんでるっつうか。

唇と舌と手と指と、キスや吐息や甘噛みで何度も俺を高めて昇天させるけど、それだけじゃ足りなくてもどかしくて、湯音の中で泣きながら請うことになる。

「な、…もう」
「うん? 何が欲しい?」

俺を抱きしめて、ギリギリまで擦り付けて、舌で開いた唇を食みながら、吸い込まれそうに青い目が俺をとらえる。

「んっ、…ん、ん、…だからっ」

「泣くな。何でもやるから」

ふざっけんなよ!

余裕をかまして俺を覗き込む青い瞳が楽しそうに揺れている。
このドS! 極限まで俺を甘やかすくせに、変なとこでSっ気出してきやがって。

「もういいから、頼むから、…っ」

もう何も。一つも。ウルフに隠せない。
俺の中全て。奥の奥まで暴かれて。すべてをさらけ出してウルフを請う。欲しくて。欲しくて。

「ウルフが欲しい」
「…うん」

その瞬間、ウルフは蕩けそうに甘い顔をして、俺を穿うがつ。

「いいよ。俺を全部、お前にやる」

先端が触れるだけで、喜びが爆発する。歓喜の波が炸裂して、自分が粉々に砕け散る。大きさも重さも。太さも長さも。匂いも温度も触感も。ウルフがいい。ウルフじゃなきゃ嫌だ。ゆっくりと沈められるウルフの全てが俺を喜びでいっぱいにする。奥の奥まで。際限なく俺を満たす。

「ウ、…、す、…」

ウルフが好きだ。

喜びとともに気持ちが溢れる。

溶けて溶け合って、混ざって混ざり合って、境界が分からないくらい一つになれたらいいのにな。どっちがどっちか分からなくなるくらい絡まって交わって混ざり合って、形なく溶けてしまえればいいのにな。

そしたらもう、離れなくていいのに。

「…俺も好きだよ」

俺の中でウルフが弾ける。涙が溢れて止まらなくなる。

ウルフが好きだ。
足りないよ、ウルフ。全然足りない。
もっと。ずっと。いっぱい。

それが分かっているかのように、ウルフはもっと深くもっと奥まで俺をがんじがらめに貫いて、沸き立ち、ほとばしり、溢れるほどに注ぎ込んで、俺をめちゃくちゃにする。

ウルフにかき混ぜられて、俺は形を変える。バラバラに壊されてドロドロに溶かされて作り替えられる。心ごと。

ウルフは残酷な麻薬だ。
溺れたら溺れただけ離れがたくなるのに、それが分かっているのに、…

やめられない。
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