秘密の令嬢は敵国の王太子に溶愛(とか)される【完結】

remo

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secret.Ⅰ

07.

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『俺がどれだけお前に恋い焦がれてきたか』

なんだか懐かしい匂いと温もりがする。触り心地の良い滑らかな肌と美しい銀髪。唇をくすぐる甘い舌先。

「…アオ?」

なんで今、アオの夢なんて見たんだろう。
婆のことを考えていたからだろうか。

目を開けると、透き通るように深く澄んだ青い瞳が俺を見ていて、一瞬夢と現実の区別がつかなくなった。

「起きたか? 気分は?」

俺を見つめる青い瞳はウルフのもので、俺はウルフのしなやかな肢体に包まれて、いまだウルフをくわえ込んだまま、緩やかに揺らされていた。まどろみから覚めると身体の感覚が戻り、たて続けに快感が弾けて、無意識にウルフを締め付けた。それがまた新たな快感を生んで、身体中甘く痺れたまま、眩い快感に踊らされ、恍惚に漂いながら、どうしようもない現実を思い出していた。

俺はウルフを騙して結婚したのに、まんまとこいつを好きになってしまったんだ、…

「…も、無理」

本当は、限界なんてとっくに超えていて、どんなに無理でもウルフと離れたくなかったけど、気持ちを自覚したら急激な羞恥心に襲われて、どんな顔をしてウルフを見ればいいのか分からなくなった。

「…じゃあ、湯浴みするか」

ふいっとウルフから顔を逸らしたのに、ウルフは俺を優しく撫でてこめかみにキスし、するりと俺から抜け出して、シーツで俺をくるんだ。

「あ、…」

全身の細胞がウルフを放すまいと抵抗する。離れるのを嫌がるように肌と肌が引き合う。ウルフの温もりが離れるとこんなに心もとなくなるなんて知らなかった。自分の身体が半分なくなったかのように寂しい。

「心配するな。すぐにまた入れてやる」

したり顔のウルフが軽々と俺を抱き上げるので、

「してねえよっ!!」

見透かされた恥ずかしさで死にそうになり、ウルフの腕の中で暴れた。ウルフは楽しそうに笑いながら、落ちないようにしっかり俺を抱きとめて、

「そんな暴れるな。お前を洗ったら神子しんし様に会わせてやるから」

ちゅっ、ちゅっと軽いキスを繰り返して俺の顔と戯れながら、居室の隣に設えられている広々とした明るいバスルームに入っていった。

神子様ってのは俺の婆のことで、見えざるものが見える特異な目を持ち、先読みや除霊をすることが出来る。いわゆる神託を伝える女巫女であり、神の代理として村でも有難がられていたが、青龍国でも扱いはあまり変わらないようだ。

婆に会ったら、言わなきゃな。
正体を明かして出て行くって。

それを考えると胃の底が沈んで苦しくなる。胸がちぎれそうに痛い。
クソぅ。これも全部、ウルフの唇が気持ち良すぎるのが悪い。
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