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secret.Ⅰ

03.

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どのくらい時間が経ったのか。

寝たり覚めたりを繰り返し、まどろみながら溶かされて、もがくたびに揺らされて。緩やかに刻まれる律動に、身体はとっくに限界を超えているのに敏感に反応してしまう。

「…ん、…ウル、フ」

熾火おきびのようにずっと続いてる快感に、身体中甘く痺れて、絶えなく昇り詰める。心地よく脱力したままウルフを見上げると、

「うん? 飲むか?」

ウルフの舌伝いに冷たい水を注がれて、そのみずみずしさが身体中に沁み渡った。

「もっと」
「…うん」

ウルフの長い舌が俺の舌をくすぐりながら、俺の喉奥に水を流し込む。絡まる舌が気持ちよくて、水の清らかさが心地よくて、弾けすぎた身体にはまるで力が入らないのに、もっとウルフをねだってしまう。

「…気持ちいいか。可愛いな、お前は」

唇に、頬に、耳に、首筋に、戯れるように口づけながら、ずっと繋がったままのウルフが、俺を内側からゆっくり揺らす。快感を刷り込まれた身体は従順に溶け出して、緩く長い喜びに溺れる。もう無理なのに。もっと欲しがって、蜂蜜みたいにウルフにまとう俺を、ウルフは奥深くで繋ぎ止めて、かき回してかき乱す。注ぎ込んで混ぜ合わせて、どこまでも溶け合う俺たちの境界を巧みにかき混ぜながら揺らし、その深く青い目を優しく緩めて、自在に俺を愛でる。

「柔らかくて甘くて感じやすい。俺を欲しがって潤んで溢れてる。お前はどこも、最高に可愛いな」

吐息とともに囁かれる低い声が耳朶じだに沁みる。声だけで、感じて震える。

俺をたどるウルフの指も手のひらも唇も舌も。触れて撫でられて舐められて嚙まれるその全てに感じて、とろとろに蕩けた俺の身体は原型をなくし、限界を超えた気持ちよさに喘いで、果てのない快感の海に漂い出す。

「あ、…や、…ウルフ、…っ」

快感が過ぎて止まらない涙に、ウルフが唇を寄せる。ウルフの唇に吸われて、舌先で丁寧に舐められると、焦らされているようなもどかしさにたまらなく欲しくなる。ウルフは的確に俺を読み取って、なだめるように甘い舌先を差し込んでくれる。俺にねじ込まれたウルフの全てを放したくなくて、身体中の細胞がきゅうきゅう鳴きながら締め付ける。

俺の中で弾けるウルフに、快感が上書きされていく。

「本当に、どこまでも可愛いな、レイ」

俺の中で震えるウルフを一ミリも逃さないように抱きしめる。そんな俺をウルフが外側から力強く抱きしめる。密着しすぎた肌が境界を超えて、最初から一つだったかのようにお互いが繋がる。

俺は一体、どうなってるんだろう?

まるで知らなかった世界に放り込まれて、色欲にふける自分の貪欲さに羞恥しかないが、それを消し去って余りあるくらい、ウルフに触れられる全てが気持ちいい。

そうやって。いくつもの昼と夜を越え。

ウルフに膝抱きにされたまま、果実や穀物、肉や魚の料理を与えられ、いい香りのする湯船につけられて髪も身体も隅々まで余すところなく洗われて、ほてった肌に香油やらクリームやらを塗られて艶々になって、髪の毛先から足の小指の爪に至るまで、撫でられ舐められかしずかれて世話をされるうちに、蕩け切った脳に少しずつ思考能力が戻ってきた。

つまるところ。
俺はレイに盛られた薬のせいで女の身体になり、レイと間違われたまま青龍国王太子であるウルフの妻となって、奴の思うがままにヤリまくっている、…ってこと、だよな。
ウルフが上手いのか女の身体は感度が高いのか、信じられないくらい気持ち良くて、しかもそれは続けるほど高まっていく。
正直、この状態は史上の幸せと言えなくもないが、俺はこんなことしてて良かったんだっけ。と、浮かれた脳がようやく疑問を投げかける。

「…な、ウルフ。俺ら、ずっとこんな、してて、いいのか?」

俺を片腕に抱いたまま、優しく髪を撫でるウルフを見上げる。奴の鼓動が肌から伝わってくるとなぜか安心する。程よい筋肉に覆われた胸は触り心地がいい。俺が頬を擦り付けると、ウルフが喉の奥で低く笑った。

「俺たちは結婚した。今、国中が俺たちの結婚を祝して沸いている。夫婦が床入りするのは自然なことだし、この国では結婚した夫婦は少なくとも一週間はねやから出ない。お前は何も心配せず、俺に抱かれてろ」

喘ぎ過ぎてかすれた俺の喉に水を流し込みながら、ウルフはその青い瞳を甘やかに煌めかせた。
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