戦国男子高校生に言い寄られてます!?【完結】

remo

文字の大きさ
上 下
76 / 92
iiyori.09

04.

しおりを挟む
「俺は、父を討つ」

愛し過ぎる穂月の腕の中で、優しいキスに漂って、ただひたすらに幸せで、ぬくぬくして英気を養っていたら、穂月が物騒なことを言いだした。

「羽間の合同軍と志田の連合軍が手を組めば、他に類を見ない一大勢力になる。よそからの侵略に怯えず、領民も穏やかに暮らせよう。だが父は、志田の単独勢力にこだわり、領地領民を犠牲にしても志田の家名を守ろうとするだろう。今、羽間から志田城に使者を送っているが、恐らく父は同盟に同意せず、俺を見捨てて襲撃してくるだろう」

そうだった。ここは敵陣。
いつ何時、戦が始まらないとも限らない。

「そうしたら、俺は父を討たねばならぬ。志田の家督を継いで和平協定に同意し、羽間と同盟を結ぶ」

穂月は私を胸に抱いたまま、長い指先で私の髪を撫でた。

穂月、…

穂月はまだ中学生なのに。
ここにいるたくさんの人の暮らしを思って、それを守ろうとしてるんだ。
そのために自分がつらい選択をすることになっても、決断しなきゃいけないんだ。

穂月の葛藤を思うと胸が痛い。
穂月の強さは、この頃からずっと変わらないけど、…
それでもやっぱりお父さんを討つのはつらいだろう。父も母も手にかけるなんて、そんなのつらすぎる。

晴信を同盟に同意させる方法はないかな。
なんか晴信の弱みを握って強引に同意させるとか、或いは失脚させるとか、…

「…同盟関係が成立したら、家督はうるう、…義弟の閏月うるつきに譲る。志田の家督を継いだままでは、お前を唯一の妻に出来ないからな。先夜、三姫にもその旨伝えた」

「うん、……えっ!?」

穂月の決意を聞きながら、ことを穏便に済ませる方法はないか考えていたけど、突然話が身近になって思考が吹っ飛んだ。

「先夜って、三姫って、あの、…あの、夜這いの!?」

実はずっと気になっていたことで、つい大声を出してしまって穂月に口を塞がれた。

いや、だからここは敵陣なんだって!

穂月の腕の中で身を固くして耳をそばだてていたけれど、特に見張りの人が近づいてくる気配はなかった。監視カメラとか盗聴器とかない時代で良かった。

「…夜這い? だと、三姫が言ったのか?」
「夜は娼婦の勢いで迫られたんだよね!?」

声を潜めて、だけどどうしても胸がチリチリしてきて語気が荒くなり、無意識に唇を尖らせてしまった。

嫉妬丸出しだけどっ、穂月の立場も理解できるけどっ
それでもやっぱり嫌なもんは嫌なんですっっ!!

至近距離で見つめ合った後、

「ふっ、…」

穂月は私の唇を摘まんで笑った。

「妬いてんのか。お前ホント可愛いな」

笑ったまま穂月が唇にチュッと軽くキスをする。

いやいやいや、…可愛いとかでなくですね!?

と思うのに、穂月にキスされると思考力が溶けて消えてしまう。あの夜の真相がうやむやに、…っっ

「唯一の妻って言ってんのに」

そのまま舌を差し入れられて、その心地よさに、あっという間に溶けて蕩けて、また穂月に溺れてしまった。

いやいや、だから、…

恐るべしは戦国イケメン中学生の威力よ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

忙しい男

菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。 「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」 「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」 すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。 ※ハッピーエンドです かなりやきもきさせてしまうと思います。 どうか温かい目でみてやってくださいね。 ※本編完結しました(2019/07/15) スピンオフ &番外編 【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19) 改稿 (2020/01/01) 本編のみカクヨムさんでも公開しました。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

処理中です...