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iiyori.09
03.
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「…ごめんなさい」
鼻の奥がツンとして、私を真っすぐに見据える穂月の顔が涙に滲んだ。
ダメだな、私。
穂月に会いたいとか、穂月が心配とか、穂月と一緒にいたいとか。
自分の気持ちばっかり押し付けて。穂月に迷惑かけてる。
この戦国の世で、私に出来ることなんて何にもないのに。
一拍置いて冷静になったら、自分の軽率さに泣きたくなった。
穂月に会いたいってそれだけだった。
敵陣営に単身乗り込んだなんて、ほとんど人質みたいな感じで、もしかしたらひどい目に遭わされてるかもしれないって、もう、会えなくなるかもしれないって、…
「逃げなくて、ごめんなさい。穂月を置いて、一人で行きたくな、…っ」
しどろもどろいいわけを並べる私を穂月がぎゅうっと強く抱きしめた。
穂月の心臓の音が聞こえて、我慢していた涙が零れ落ちた。
「…ごめ、…」
「…無事でよかった」
穂月の心臓の音が、耳に心地いい。優しくて、力強くて、温かい。
穂月の腕の中にいることが嬉しい。ここに戻ってこれて嬉しい。
「お前に何かあったら俺は生きていられない」
低くかすれた穂月の声が耳をくすぐって、涙が止まらなくなった。
「地下で、お前を見つけた時は生きた心地がしなかった。頼むから、もうこんな無茶はするな」
穂月の腕に力が込められて、その切実さが身に沁みた。
穂月は怒ってたんじゃなくて、心配してくれてたんだ。敵襲で城が混乱にある中、迷路のような地下に助けに来てくれた。私を見つけて、看病してくれた。穂月が来てくれなかったら、ネズミの餌になるか、達磨法師に捕まるか、…考えなくてもぞっとする。
「穂月、ごめんね。助けてくれてありがとう、…」
穂月の胸から顔を上げたら、穂月の綺麗な顔が涙の膜の向こうで揺れた。頬を手のひらで包まれる。そこにいることを確認するように長い指が涙を拭いて、穂月の唇が落ちてきた。
甘くて。優しくて。愛しさが浸透する。
柔らかくて。安心して。身体の中心が熱くなる。
穂月のキスは、好きが通じ合う感じがして堪らなく心をつかまれる。
言葉よりも雄弁に繰り返す。好き。好き。大好き、…
「お前が無事ならそれでいい」
穂月の腕の中で、穂月の温もりを感じながら、穂月のキスに溺れた。
「…なえ。お前、俺と来るか?」
心の底まで見透かすような穂月の瞳が、私を覗き込んでいる。
「お前は間者か生霊か、得体がしれぬが、それでもお前が俺と来るなら、俺は全力でお前を守る」
ま、…待って。
破壊力が凄すぎて声が出ない。
こんなに揺るぎなく強い思いをもらって窒息しそうで、早く返事しなきゃって焦るばかりで言葉が出ない。胸がいっぱいで、ただ、…
「…だいすき」
バカみたいに何度も頷いたら涙がボロボロ落ちてきて、それを穂月の優しい唇が受け止めてくれた。
鼻の奥がツンとして、私を真っすぐに見据える穂月の顔が涙に滲んだ。
ダメだな、私。
穂月に会いたいとか、穂月が心配とか、穂月と一緒にいたいとか。
自分の気持ちばっかり押し付けて。穂月に迷惑かけてる。
この戦国の世で、私に出来ることなんて何にもないのに。
一拍置いて冷静になったら、自分の軽率さに泣きたくなった。
穂月に会いたいってそれだけだった。
敵陣営に単身乗り込んだなんて、ほとんど人質みたいな感じで、もしかしたらひどい目に遭わされてるかもしれないって、もう、会えなくなるかもしれないって、…
「逃げなくて、ごめんなさい。穂月を置いて、一人で行きたくな、…っ」
しどろもどろいいわけを並べる私を穂月がぎゅうっと強く抱きしめた。
穂月の心臓の音が聞こえて、我慢していた涙が零れ落ちた。
「…ごめ、…」
「…無事でよかった」
穂月の心臓の音が、耳に心地いい。優しくて、力強くて、温かい。
穂月の腕の中にいることが嬉しい。ここに戻ってこれて嬉しい。
「お前に何かあったら俺は生きていられない」
低くかすれた穂月の声が耳をくすぐって、涙が止まらなくなった。
「地下で、お前を見つけた時は生きた心地がしなかった。頼むから、もうこんな無茶はするな」
穂月の腕に力が込められて、その切実さが身に沁みた。
穂月は怒ってたんじゃなくて、心配してくれてたんだ。敵襲で城が混乱にある中、迷路のような地下に助けに来てくれた。私を見つけて、看病してくれた。穂月が来てくれなかったら、ネズミの餌になるか、達磨法師に捕まるか、…考えなくてもぞっとする。
「穂月、ごめんね。助けてくれてありがとう、…」
穂月の胸から顔を上げたら、穂月の綺麗な顔が涙の膜の向こうで揺れた。頬を手のひらで包まれる。そこにいることを確認するように長い指が涙を拭いて、穂月の唇が落ちてきた。
甘くて。優しくて。愛しさが浸透する。
柔らかくて。安心して。身体の中心が熱くなる。
穂月のキスは、好きが通じ合う感じがして堪らなく心をつかまれる。
言葉よりも雄弁に繰り返す。好き。好き。大好き、…
「お前が無事ならそれでいい」
穂月の腕の中で、穂月の温もりを感じながら、穂月のキスに溺れた。
「…なえ。お前、俺と来るか?」
心の底まで見透かすような穂月の瞳が、私を覗き込んでいる。
「お前は間者か生霊か、得体がしれぬが、それでもお前が俺と来るなら、俺は全力でお前を守る」
ま、…待って。
破壊力が凄すぎて声が出ない。
こんなに揺るぎなく強い思いをもらって窒息しそうで、早く返事しなきゃって焦るばかりで言葉が出ない。胸がいっぱいで、ただ、…
「…だいすき」
バカみたいに何度も頷いたら涙がボロボロ落ちてきて、それを穂月の優しい唇が受け止めてくれた。
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