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iiyori.09
02.
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地面激突の瞬間は、思ったよりも痛くなかった。
というより、全然痛くなかった。
ばかりか、ものすごく心地よい感触に包まれた。
柔らかく懐かしくしなやかで適度に弾力もあり、世界で一番心地よい、…
って、あれ? …この匂い、…
「…は!? …なえ??」
「穂月ぃいいいい~~~~~っっ」
まさかの。
穂月の上にダイブしていた。
嘘、嘘、信じられない。穂月だ、穂月。穂月がいる~~~~~っ
何がどうしてこうなったのか、理解は全く追いつかないけど、神様グッジョブ。目の前に穂月がいるという夢みたいな現実に、ともかくもがっちりしがみつく。
いる。穂月がいる。実体だ。
しなやかな身体。長い手足。
穂月の匂い。穂月の温もり。穂月の声。
穂月~~~~~っ、万歳~~~~~っ
五感が総動員でフル回転。
しがみついた存在が正真正銘穂月であることを確認する。
もしかしたら、三姫みたいに、私も地面に落ちる直前で瞬間移動的なことが出来たのかもしれない。
『もっとっ、もそっと、魂を振り絞るように』
あの時はほとんど命がけで穂月を呼んだから、…
「…穂月殿? いかがなされた?」
穂月にしがみついて今しがた起こった奇跡的な出来事を思い返していたら、厚い天幕の向こうから誰かの声がし、天幕が押し上げられるような気配があった。
「あ、…いや。大事ない」
穂月は瞬時に私の上に布団をかぶせて自身の身体を盾にすると、
「それより、なにやら外が騒がしいようだが?」
平静を装ってさりげなく話題を変えた。
薄布団の中で穂月に密着。天国過ぎる。
「何やら侵入者があったとか、…しかし間違いであったやもしれません。どうぞお気に召されませぬよう。さすがに志田軍も穂月殿がいるのに、ここに攻めては来れますまい」
穂月の見張りらしい兵士は天幕の中をざっと確認すると、納得したように、また幕を押し開いて颯爽と遠ざかっていった。
「…ほづき?」
「お前っ、なんでここに、…っ」
のそりと布団から頭を出すと、穂月はちょっと怒ったような表情で布団を捲り、でもすぐに、
「…見せてみろ」
私を布団に横たえたまま、立ち上がると足の方に回って着物の帯を解いた。
きゃああ、穂月!? なんか、手早いっ
などとアホなことを思っていると、
「矢傷か。深くはないが、…」
穂月はさっき矢が刺さったと思った太ももの傷を確認し、濡らした布で拭いたり、止血して縛ったり、マキちゃんもびっくりな手際の良さで手当てをしてくれた。あまりの痛さに矢が刺さったのかと思ったけど、実はかすり傷で大したことはないようだった。
いやだって。矢を射かけられるとか初めてだし。びっくりだし。
嵐みたいに降ってきて怖かったし。痛くててっきり刺さったと思ったんだって。
と、脳内でひたすら言い訳しながら穂月を見上げる。
なんか、…
「それで、…」
気づけば床の布団に寝転がった状態で、上から真顔の穂月に見下ろされていた。
「どうしてお前がここにいる? 俺は逃げるよう伝えさせたはずだが」
なんか、穂月、怒ってる?
穂月の力になりたかったけど、状況も分からず飛び込んで、手間をかけさせただけだから、…
というより、全然痛くなかった。
ばかりか、ものすごく心地よい感触に包まれた。
柔らかく懐かしくしなやかで適度に弾力もあり、世界で一番心地よい、…
って、あれ? …この匂い、…
「…は!? …なえ??」
「穂月ぃいいいい~~~~~っっ」
まさかの。
穂月の上にダイブしていた。
嘘、嘘、信じられない。穂月だ、穂月。穂月がいる~~~~~っ
何がどうしてこうなったのか、理解は全く追いつかないけど、神様グッジョブ。目の前に穂月がいるという夢みたいな現実に、ともかくもがっちりしがみつく。
いる。穂月がいる。実体だ。
しなやかな身体。長い手足。
穂月の匂い。穂月の温もり。穂月の声。
穂月~~~~~っ、万歳~~~~~っ
五感が総動員でフル回転。
しがみついた存在が正真正銘穂月であることを確認する。
もしかしたら、三姫みたいに、私も地面に落ちる直前で瞬間移動的なことが出来たのかもしれない。
『もっとっ、もそっと、魂を振り絞るように』
あの時はほとんど命がけで穂月を呼んだから、…
「…穂月殿? いかがなされた?」
穂月にしがみついて今しがた起こった奇跡的な出来事を思い返していたら、厚い天幕の向こうから誰かの声がし、天幕が押し上げられるような気配があった。
「あ、…いや。大事ない」
穂月は瞬時に私の上に布団をかぶせて自身の身体を盾にすると、
「それより、なにやら外が騒がしいようだが?」
平静を装ってさりげなく話題を変えた。
薄布団の中で穂月に密着。天国過ぎる。
「何やら侵入者があったとか、…しかし間違いであったやもしれません。どうぞお気に召されませぬよう。さすがに志田軍も穂月殿がいるのに、ここに攻めては来れますまい」
穂月の見張りらしい兵士は天幕の中をざっと確認すると、納得したように、また幕を押し開いて颯爽と遠ざかっていった。
「…ほづき?」
「お前っ、なんでここに、…っ」
のそりと布団から頭を出すと、穂月はちょっと怒ったような表情で布団を捲り、でもすぐに、
「…見せてみろ」
私を布団に横たえたまま、立ち上がると足の方に回って着物の帯を解いた。
きゃああ、穂月!? なんか、手早いっ
などとアホなことを思っていると、
「矢傷か。深くはないが、…」
穂月はさっき矢が刺さったと思った太ももの傷を確認し、濡らした布で拭いたり、止血して縛ったり、マキちゃんもびっくりな手際の良さで手当てをしてくれた。あまりの痛さに矢が刺さったのかと思ったけど、実はかすり傷で大したことはないようだった。
いやだって。矢を射かけられるとか初めてだし。びっくりだし。
嵐みたいに降ってきて怖かったし。痛くててっきり刺さったと思ったんだって。
と、脳内でひたすら言い訳しながら穂月を見上げる。
なんか、…
「それで、…」
気づけば床の布団に寝転がった状態で、上から真顔の穂月に見下ろされていた。
「どうしてお前がここにいる? 俺は逃げるよう伝えさせたはずだが」
なんか、穂月、怒ってる?
穂月の力になりたかったけど、状況も分からず飛び込んで、手間をかけさせただけだから、…
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