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iiyori.09
01.
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す、…すごいっ。これが浮遊霊。
いや、この風に飛ばされそうな感じ。バンバン風を浴びてる実感。これが実体浮遊というやつか。
え、すごい。かなりすごい。
初めて自分の身体だけで空に浮いてしまって、もはやすごいしか出てこない。足元に何もなく空をふわふわ漂う感じは、若干の恐怖を伴うものの、不思議で爽快。泳ぐように空を切って移動したり、高低を変えることも出来る。魂と実体の繋がりとか、時間と空間の関係とか難しいことは分からないけど、…便利だ。
三姫はこの便利な能力を一人で堪能していたのか。
ていうか、こんなことが出来るのは、つまり、三姫の中に過去に飛ばされた三宮さんの霊魂が入ってるってことなのか、…??
果てなく続く城下町を眺めながら、実体浮遊に成功した興奮と喜びを嚙みしめ、あっちこっち思うままに漂って浮遊のコツをつかみ、
よし、穂月に会いに行こう。
と、決意した。
地理関係が全く分からないけど、上空に浮遊しながら、眼下を見下ろし、大体の見当をつけて移動する。上空を浮遊すると移動が速い。城下に続く森や山を越え、谷を渡ると、戦の陣営が張られているのが見えた。恐らくあの谷が陣の谷で、志田の連合軍と羽間の合同軍が対峙している。ということは、向こうの羽間の陣営の中に穂月がいるってことかな?
下降してみると、羽間軍の陣営には数多くの天幕が張られ、幕の上には家紋のような旗がはためいて、所々にかがり火が焚かれ、見張りの兵士がずらりと列を成している。
「ん? 空から何かっ!」
「敵襲か!?」
天幕の大きさに身分が表れているとしたら、穂月は比較的大きめの幕の中にいるんじゃないかと近づいて探していると、火の明かりに照らし出されてしまったのか、敵兵に気づかれ、矢を射かけられ、飛んできた矢が着物の肩口をかすめた。
やっば、…っ
慌てたら方向感覚を失ってしまい、頭と足が逆さまになりながら、空中をぐるぐる回転する。
「何やつっ!?」
「鳥か!?」「妖怪か!?」
「いや、人だっ」「敵の空中作戦だっ」
「一斉射撃、用意っ」
「射よっ!!」
やばいやばい。
訓練された軍隊に敵と認定され、瞬く間につがえられた矢が、次々に放たれる。凄まじい数の矢が空中に飛んできて、恐ろしく至近距離をひゅんひゅん矢がかすめていく。
やばいて――――――っ
よけなきゃ当たるし、当たったら落ちるし、やばいのは分かるのに、パニックでどう動いていいか分からず、慣れない浮遊で無駄に空中をぐるぐる回るばかり。
「い、…っ!!」
痛い――――――っっ
「よし、当たったっ!!」「こっちだ、落ちるぞっ!!」
なんか太もも辺りに飛んできた矢が刺さり、ものすごい痛みと衝撃に頭が真っ白になった。無駄に回っていた空中回転が止まり、地面に急降下していく。
穂月ぃいいい~~~~~っ、どこ―――――――――っ
こんなところで訳の分からん女が敵軍に捕まったら、犯されるか殺されるか絶対ろくな目に遭わない。迂闊に敵陣に近づいた己の浅はかさを呪いながら、地面に叩きつけられる瞬間を覚悟して目を瞑った。
いや、この風に飛ばされそうな感じ。バンバン風を浴びてる実感。これが実体浮遊というやつか。
え、すごい。かなりすごい。
初めて自分の身体だけで空に浮いてしまって、もはやすごいしか出てこない。足元に何もなく空をふわふわ漂う感じは、若干の恐怖を伴うものの、不思議で爽快。泳ぐように空を切って移動したり、高低を変えることも出来る。魂と実体の繋がりとか、時間と空間の関係とか難しいことは分からないけど、…便利だ。
三姫はこの便利な能力を一人で堪能していたのか。
ていうか、こんなことが出来るのは、つまり、三姫の中に過去に飛ばされた三宮さんの霊魂が入ってるってことなのか、…??
果てなく続く城下町を眺めながら、実体浮遊に成功した興奮と喜びを嚙みしめ、あっちこっち思うままに漂って浮遊のコツをつかみ、
よし、穂月に会いに行こう。
と、決意した。
地理関係が全く分からないけど、上空に浮遊しながら、眼下を見下ろし、大体の見当をつけて移動する。上空を浮遊すると移動が速い。城下に続く森や山を越え、谷を渡ると、戦の陣営が張られているのが見えた。恐らくあの谷が陣の谷で、志田の連合軍と羽間の合同軍が対峙している。ということは、向こうの羽間の陣営の中に穂月がいるってことかな?
下降してみると、羽間軍の陣営には数多くの天幕が張られ、幕の上には家紋のような旗がはためいて、所々にかがり火が焚かれ、見張りの兵士がずらりと列を成している。
「ん? 空から何かっ!」
「敵襲か!?」
天幕の大きさに身分が表れているとしたら、穂月は比較的大きめの幕の中にいるんじゃないかと近づいて探していると、火の明かりに照らし出されてしまったのか、敵兵に気づかれ、矢を射かけられ、飛んできた矢が着物の肩口をかすめた。
やっば、…っ
慌てたら方向感覚を失ってしまい、頭と足が逆さまになりながら、空中をぐるぐる回転する。
「何やつっ!?」
「鳥か!?」「妖怪か!?」
「いや、人だっ」「敵の空中作戦だっ」
「一斉射撃、用意っ」
「射よっ!!」
やばいやばい。
訓練された軍隊に敵と認定され、瞬く間につがえられた矢が、次々に放たれる。凄まじい数の矢が空中に飛んできて、恐ろしく至近距離をひゅんひゅん矢がかすめていく。
やばいて――――――っ
よけなきゃ当たるし、当たったら落ちるし、やばいのは分かるのに、パニックでどう動いていいか分からず、慣れない浮遊で無駄に空中をぐるぐる回るばかり。
「い、…っ!!」
痛い――――――っっ
「よし、当たったっ!!」「こっちだ、落ちるぞっ!!」
なんか太もも辺りに飛んできた矢が刺さり、ものすごい痛みと衝撃に頭が真っ白になった。無駄に回っていた空中回転が止まり、地面に急降下していく。
穂月ぃいいい~~~~~っ、どこ―――――――――っ
こんなところで訳の分からん女が敵軍に捕まったら、犯されるか殺されるか絶対ろくな目に遭わない。迂闊に敵陣に近づいた己の浅はかさを呪いながら、地面に叩きつけられる瞬間を覚悟して目を瞑った。
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