戦国男子高校生に言い寄られてます!?【完結】

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「待って、マキちゃん、鷹朋さん。私、協力を仰ぎたい人がいる」

穂月を置いて自分だけ逃げだすなんてできない。

だから決めた。逃げない。
出来るだけの援護射撃する。待ってて、穂月。

「え、…」
「誰??」

今しも出立の準備にかかろうとしていたマキちゃんと鷹朋さんが怪訝な顔をする。

分かってる。なかなか難しい状況だってことは。
でも、使えるものは何でも使う。穂月が命懸けで挑んでいる和平交渉を晴信に台無しにされてたまるか。

「さんひめ~~~~~~~~~~~っっ」

丹田たんでんに気を溜めることを意識して、呼吸に集中した。頭の上から気が発散して高く遠くまで飛んでいくイメージ。思い付きの付け焼刃だけど、私だって曲がりなりにも時を超えてきた霊魂なわけだから、神出鬼没の三姫さんひめ浮遊霊にコンタクトを取れたっていいと思う。

幸い今夜は月も星もない闇夜。草木も眠る丑三つ時。
魔物が出歩くにはちょうどいい時間帯じゃないの。

「さんひめ~~~~~~~~~~~っっ」

「あの、…なえ、…?」

マキちゃんがこの子いよいよおかしくなったな、という顔でこっちを見ている。鷹朋さんはショックで壊れたか、というような気の毒そうな顔をしている。

でも違います、皆さん。
私は本気です。倉咲菜苗は志田穂月に会いに来た霊魂ですから。
絶対、浮遊霊と交信できるはず――――――っっ

「あの、…なえ、様、…」

念には念を。って使い方違うけど、持てる限りの念力を込めて三姫を呼んだ。けど、全く三姫は現れず、鷹朋さんが私を説得にかかろうと声をかけた。

その時。

「…誰が魔物じゃ。路傍のちんけな石ころの分際で」

部屋の中にぼんやりとした明かりが灯り、徐々に人の形を成していき、あの日の雛人形さながらの煌びやかな三姫が姿を現した。

「え、…」
「ええええ―――――っっ」

もちろん、マキちゃんと鷹朋さんは驚いて目も口もあんぐりと開け、信じられないものを見る表情で固まった。

「やった~、三姫っ! 来てくれてありがとうっっ」

けど、私は喜びのあまり抱き着いた。
そう、このお雛様幽霊は実体なんで、触れるんです。

「気安く触るでない。穂月様の感触が薄れる」

私の歓迎を不快そうに、三姫は犬を追い払うような仕草であっちへ行けと手を振った。高飛車で傲慢な感じ、変わらないな。ていうか、穂月様の感触て、…

「三姫様がこのようなところに何ゆえ、…」

お城のいわゆる奥に籠って生活しているはずの三姫が、自在に抜け出してきたことが鷹朋さんには信じられないらしい。

「こちら、穂月の正室の三姫。幽体離脱ならぬ実体浮遊が出来る特異なお方なんです」

胸の奥がキリキリするけど、それはひとまず見ないふりで、三姫の生態を紹介すると、

「光り輝く宝玉もこれぞという完璧な見た目。由緒正しい家柄の出自。夫の前では物も言えぬ奥ゆかしさ。それなのに漏れ出いづるなまめかしさ。昼は淑女、夜は娼婦。何それ最高じゃん!! が抜けておるぞ」

三姫が不満そうに顎を逸らした。

「…このように、ちょっとお茶目でだいぶ酒豪です」

「な、なるほどー」

マキちゃんと鷹朋さんが受け入れがたい現実を無理やりに受け入れた。
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