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iiyori.08
07.
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胸騒ぎに、何度も寝返りを打つ。
眠れない。布団から出て、襖を開け、空を見上げた。月も星も見えない。なんだか不安でいっぱいになる。
夜半過ぎ頃、暗闇に紛れてひっそりと、穂月別邸に一頭の早馬がやってきた。
「…鷹朋さん!?」
鷹朋さんは鎧甲冑を脱ぎ、目立たないようにフードで身を隠していた。ひどく険しい表情で、あちこち負傷しているようだったけど、マキちゃんが手当てする間も惜しんで、私たちにここを離れるよう指示した。
「穂月様は、志田領を守るために単身交渉に乗り込まれました」
羽間の合同軍が志田の連合軍を破り、志田領内に突入しそうになり、穂月は領民を守るために自ら捕えられたという。
「そんな、…」
「ちょっと、待って!? それ、マズいよね? ものすごくマズいよね!?」
一気に血の気が失せて、足先まで冷んやりする。心臓がバクバクして落ち着かない。
自ら捕えられたって、…穂月は一体どうなるの!?
「羽間に傾くことで志田領と連合を組んだ北川・河山領内を荒らさせずに同盟を結ぼうとされています。穂月様はもう血を流したくないとお考えなんです」
「あの穂月様が、…」
マキちゃんが驚いたように目を開き、鷹朋さんと顔を見合わせて頷いた。
「…なえ様に会われて、穂月様は変わられました。守ることを考えられるようになりました」
マキちゃんがしきりと頷いている。
穂月、…
無情な時切丸の使い手だったのに。戦いじゃなく話し合いで解決を考えるなんて、やっぱり穂月には令和を生きる素養が、…
と、感慨深くなっていると、
「問題は、実質羽間の傘下に入ることになるので、晴信様が納得されるかどうか、です」
鷹朋さんに現実に引き戻された。
…晴信?
なんか嫌な響き。
「晴信様はこの交渉を穂月様の裏切りと捉え、穂月様を見捨てて全面抗争を仕掛ける可能性があります。そうなれば、志田領内はおろか、連合領も敵領でさえ、ひどく荒廃するでしょう」
確かに。
勢力拡大を第一に考える晴信が交渉を良しとしない可能性は高い。この際どっちが上でも平和ならいいじゃんって思うけど、権力欲が強い晴信はそうは思わないだろう。
「晴信様はかねてより穂月様のお力を恐れておいででした。これを機に全領土を焼き尽くしたとて、不思議ではありません。そうなれば、この地でもはや安全なところはありません。穂月様は私に、なえ様と遠縁の瀬戸藩を訪ねるように、と、…」
穂月は自国のために戦って、平和的な解決を考えているのに、自業自得で寝てただけの晴信が、それを台無しにするなんて。
許せん!
けど実際、晴信は達磨法師と共謀して穂月を暗殺しようとしてたくらいだからな。その可能性は高い。
「なえ、支度して。すぐにたとう。穂月様のお気持ちを無下には、…」
マキちゃんが悲しそうに私を見る。
…そんな。
穂月を置いて自分だけ逃げる?
そんなの絶対嫌だ。
穂月がいなきゃ、何の意味もないんだよ、…
眠れない。布団から出て、襖を開け、空を見上げた。月も星も見えない。なんだか不安でいっぱいになる。
夜半過ぎ頃、暗闇に紛れてひっそりと、穂月別邸に一頭の早馬がやってきた。
「…鷹朋さん!?」
鷹朋さんは鎧甲冑を脱ぎ、目立たないようにフードで身を隠していた。ひどく険しい表情で、あちこち負傷しているようだったけど、マキちゃんが手当てする間も惜しんで、私たちにここを離れるよう指示した。
「穂月様は、志田領を守るために単身交渉に乗り込まれました」
羽間の合同軍が志田の連合軍を破り、志田領内に突入しそうになり、穂月は領民を守るために自ら捕えられたという。
「そんな、…」
「ちょっと、待って!? それ、マズいよね? ものすごくマズいよね!?」
一気に血の気が失せて、足先まで冷んやりする。心臓がバクバクして落ち着かない。
自ら捕えられたって、…穂月は一体どうなるの!?
「羽間に傾くことで志田領と連合を組んだ北川・河山領内を荒らさせずに同盟を結ぼうとされています。穂月様はもう血を流したくないとお考えなんです」
「あの穂月様が、…」
マキちゃんが驚いたように目を開き、鷹朋さんと顔を見合わせて頷いた。
「…なえ様に会われて、穂月様は変わられました。守ることを考えられるようになりました」
マキちゃんがしきりと頷いている。
穂月、…
無情な時切丸の使い手だったのに。戦いじゃなく話し合いで解決を考えるなんて、やっぱり穂月には令和を生きる素養が、…
と、感慨深くなっていると、
「問題は、実質羽間の傘下に入ることになるので、晴信様が納得されるかどうか、です」
鷹朋さんに現実に引き戻された。
…晴信?
なんか嫌な響き。
「晴信様はこの交渉を穂月様の裏切りと捉え、穂月様を見捨てて全面抗争を仕掛ける可能性があります。そうなれば、志田領内はおろか、連合領も敵領でさえ、ひどく荒廃するでしょう」
確かに。
勢力拡大を第一に考える晴信が交渉を良しとしない可能性は高い。この際どっちが上でも平和ならいいじゃんって思うけど、権力欲が強い晴信はそうは思わないだろう。
「晴信様はかねてより穂月様のお力を恐れておいででした。これを機に全領土を焼き尽くしたとて、不思議ではありません。そうなれば、この地でもはや安全なところはありません。穂月様は私に、なえ様と遠縁の瀬戸藩を訪ねるように、と、…」
穂月は自国のために戦って、平和的な解決を考えているのに、自業自得で寝てただけの晴信が、それを台無しにするなんて。
許せん!
けど実際、晴信は達磨法師と共謀して穂月を暗殺しようとしてたくらいだからな。その可能性は高い。
「なえ、支度して。すぐにたとう。穂月様のお気持ちを無下には、…」
マキちゃんが悲しそうに私を見る。
…そんな。
穂月を置いて自分だけ逃げる?
そんなの絶対嫌だ。
穂月がいなきゃ、何の意味もないんだよ、…
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