戦国男子高校生に言い寄られてます!?【完結】

remo

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「なえ、…あんた、穂月様が好きなんだね」

結局、どこにも行けず、何も出来ず、無力に泣くだけの私をマキちゃんが抱きしめてくれた。

「穂月様は私にあんたのことをよくよく頼んでいかれた。だからあんたはしっかり休んで早く元気にならなきゃ。穂月様が戻られたら、ちゃんとお迎え出来るようにね」

穂月のために何も出来ない自分が悲しくて、何の力もない自分が悔しくて、自分が心底無価値に思えて、涙が止まらなかった。

それから。

マキちゃんに促されるままに布団に戻って、沼に引きずり込まれるように眠りに落ちた。熱湯の中でもがいて、もがいてももがいても抜け出せないような眠りだった。

荒い呼吸で目が覚めて、マキちゃんに薬湯をもらい、また煮えたぎるような熱い沼でもがく眠りに、汗をかいて飛び起きて、を繰り返した。それでも目覚めるたび、徐々に自分の身体が楽になり、現在の状況も理解できるようになっていった。

「あの夜、志田城は敵軍の急襲を受けたんだ」

志田城内に敵対勢力である羽間軍の間者が何人か入り込んでいたらしく、三姫が城主・志田晴信に蟲毒を盛ったのを皮切りに、近郊に潜んでいた志田軍が城に奇襲をかけた。

不意を突いた襲撃だったが志田の対応は迅速で、蟲毒を飲んだ晴信は不調だったものの、穂月率いる若武者たちの活躍により、入り込んだ羽間軍は間者も含め根絶やしにされたが、捕らえた敵軍から、同盟関係にあった戸上軍と今森軍が寝返り、羽間・戸上・今森三軍が合同で大軍を作り、今しも志田領に攻め込んでくることを知った。

穂月は後方領の北川、河山両軍に援軍を求め、軍隊を整備して、三軍を迎え撃つため、志田領の境にある陣の谷まで出軍した。

「急襲に応じたり、出陣したりの慌ただしい合間に、穂月様は供に鷹朋様だけをお連れになって、あんたを城から連れ出し、ここに匿った。城に置いておけば晴信様暗殺の嫌疑で処刑される危険があるから」

そうだ。
晴信は穂月を暗殺する計画を立てていて、それに達磨法師が絡んでいて、私はその駒にされそうだったんだけど、思いがけず三姫の幽霊が出てきて、それを混乱させたんだ。

「詳しい事情は分からないけど、あんたがここに居ることは絶対の秘密だと穂月様は仰っていた。だからどうか穂月様が無事に戻られるまで、ここで大人しくしているんだよ」

蟲毒を飲んだ晴信は、命に別状はないものの、体調が悪く出陣は諦めたらしい。晴信の暗殺を謀ったのは表向き羽間の仕業と見られているようだけど、晴信と達磨法師がその後どういう結論に達してどうしようとしているのかは分からない。

分からないと言えば、穂月を夜這うと言って消えた三姫と穂月がどうなったのかも分からないし、私のことを羽間の間者だと思っている穂月が、私を助けてくれたのも、…

穂月はどう思っているんだろう。
戻ってきたら、全部打ち明けてみようかな。

本当は。
私は未来から来たんだって。
ただ、穂月と一緒にいたいんだって。
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