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iiyori.08
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「…気が付いたかい?」
目を開けたら布団に寝かされていて、ドアップのマキちゃんが私の顔を覗き込んでいたから、一瞬、現代に帰ってきたのかと思った。
「…ほ、づき、…?」
起き上がろうとしたら身体が錘みたいに重くて、頭がぐらぐらして、重力に負けてまたそのまま仰向けに倒れ込んだ。自分の身体が上手く動かせない。声も自分のものじゃないみたいにガッサガサに枯れている。
「ああ、無理するんじゃないよ。あんた、まだ熱が引かないんだから」
マキちゃんが私をなだめるように寝かしつけ、布団を上からかけて、絞った手ぬぐいを額にのせてくれた。ひんやりして気持ちいい。確かに、呼吸は荒いし、頭はガンガンするし、身体の節々は痛いし、重いし、全身がだるい。こんな高熱の症状、いつ以来だろう、…
「薬湯、…飲めそうならお飲み」
マキちゃんが小鉢に入った液体をすくって、私の口元に近づける。苦そうで鼻につく匂いは強烈だったけど、有難く口を開けた。ぬるくてドロドロしてマズい液体を飲み込む。飲み込むとひどく喉が痛んだけど、なんだか懐かしい気がする。
『なえ、…』
なんでか、穂月を感じる。
もしかして私、寝ている間にもこの薬飲ませてもらってた??
目に映るマキちゃんは女中の着物姿だし、寝ているのはお屋敷の一角みたいな和室だし、薬湯は草っぽい味がしてマズいし、現代に戻ったわけじゃないんだな、とぼんやり考えた。
志田城の地下牢に捕らえられて、達磨法師たちから逃げ出して、地下で迷子になって、…ここはどこだろう。
「ここは城下にある穂月様の別邸だよ。混乱が落ち着くまでここで休養するようにって穂月様があんたを連れて来られたんだ。穂月様も忍んでこられて看病してたんだけど、あんた三日三晩寝たきりで、全然目を覚まさなかったんだよ」
穂月の別邸、…三日三晩、…じゃあ。
『なえ、…』
地下で聞こえたような気がしたのはやっぱり穂月の声だったの?
薬湯と一緒に甦る滑らかな舌と優しい唇の感触は、穂月の、…?
頭はうまく回らないのに、なんだか込み上げてくるものがあって、訳もなく涙が零れる。
「ほづき、…」
マキちゃんが慰めるように私の頭を撫でてくれた。
「大丈夫だよ。穂月様はすぐに帰ってくる。羽間がどんな大軍を率いてきたって、穂月様にかかればあっという間さ。時切丸を持った穂月様は無敵だからね」
頭がスポンジになったようにスカスカして、マキちゃんの話を理解するのに時間がかかった。
…羽間が大軍を率いて、…って、穂月は戦に出かけたってこと!?
ようやく理解して、飛び起きると襖を開け、廊下に走り出たけど、足に上手く力が入らずもつれて派手に転倒した。
「ちょっ、…なえっ!!」
後ろから追いかけてきてくれたマキちゃんに抱き起こされた。
「あんた何して、…」
「…行かなきゃ。穂月、…もう、…っ」
もう穂月に人を切らせたくない。
戦になんて、行かせたくない。殺し合いなんて、…
悲しくて虚しくて心細くて、なのにどうすることも出来なくて、絶望的な気分になる。
いつの世だって、命の尊さに変わりはないのに。
目を開けたら布団に寝かされていて、ドアップのマキちゃんが私の顔を覗き込んでいたから、一瞬、現代に帰ってきたのかと思った。
「…ほ、づき、…?」
起き上がろうとしたら身体が錘みたいに重くて、頭がぐらぐらして、重力に負けてまたそのまま仰向けに倒れ込んだ。自分の身体が上手く動かせない。声も自分のものじゃないみたいにガッサガサに枯れている。
「ああ、無理するんじゃないよ。あんた、まだ熱が引かないんだから」
マキちゃんが私をなだめるように寝かしつけ、布団を上からかけて、絞った手ぬぐいを額にのせてくれた。ひんやりして気持ちいい。確かに、呼吸は荒いし、頭はガンガンするし、身体の節々は痛いし、重いし、全身がだるい。こんな高熱の症状、いつ以来だろう、…
「薬湯、…飲めそうならお飲み」
マキちゃんが小鉢に入った液体をすくって、私の口元に近づける。苦そうで鼻につく匂いは強烈だったけど、有難く口を開けた。ぬるくてドロドロしてマズい液体を飲み込む。飲み込むとひどく喉が痛んだけど、なんだか懐かしい気がする。
『なえ、…』
なんでか、穂月を感じる。
もしかして私、寝ている間にもこの薬飲ませてもらってた??
目に映るマキちゃんは女中の着物姿だし、寝ているのはお屋敷の一角みたいな和室だし、薬湯は草っぽい味がしてマズいし、現代に戻ったわけじゃないんだな、とぼんやり考えた。
志田城の地下牢に捕らえられて、達磨法師たちから逃げ出して、地下で迷子になって、…ここはどこだろう。
「ここは城下にある穂月様の別邸だよ。混乱が落ち着くまでここで休養するようにって穂月様があんたを連れて来られたんだ。穂月様も忍んでこられて看病してたんだけど、あんた三日三晩寝たきりで、全然目を覚まさなかったんだよ」
穂月の別邸、…三日三晩、…じゃあ。
『なえ、…』
地下で聞こえたような気がしたのはやっぱり穂月の声だったの?
薬湯と一緒に甦る滑らかな舌と優しい唇の感触は、穂月の、…?
頭はうまく回らないのに、なんだか込み上げてくるものがあって、訳もなく涙が零れる。
「ほづき、…」
マキちゃんが慰めるように私の頭を撫でてくれた。
「大丈夫だよ。穂月様はすぐに帰ってくる。羽間がどんな大軍を率いてきたって、穂月様にかかればあっという間さ。時切丸を持った穂月様は無敵だからね」
頭がスポンジになったようにスカスカして、マキちゃんの話を理解するのに時間がかかった。
…羽間が大軍を率いて、…って、穂月は戦に出かけたってこと!?
ようやく理解して、飛び起きると襖を開け、廊下に走り出たけど、足に上手く力が入らずもつれて派手に転倒した。
「ちょっ、…なえっ!!」
後ろから追いかけてきてくれたマキちゃんに抱き起こされた。
「あんた何して、…」
「…行かなきゃ。穂月、…もう、…っ」
もう穂月に人を切らせたくない。
戦になんて、行かせたくない。殺し合いなんて、…
悲しくて虚しくて心細くて、なのにどうすることも出来なくて、絶望的な気分になる。
いつの世だって、命の尊さに変わりはないのに。
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