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iiyori.07
04.
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でも。
なんで穂月が狙われてるんだろう?
穂月は志田城の大事な跡取り息子なんだよね??
「ところで、法師様。どうして若君を暗殺しないといけないんでしたっけ?」
達磨法師は自分の計画が順調に進んでいることに気を良くしている様子で、見えない風圧の縄を解いてくれたので、さりげなく尋ねてみた。
「そのようなこと、そなたは知らんでも良い。好奇心は身を滅ぼす元ぞ」
けど、法師は顔にとまったハエを追い払うような仕草を見せただけだった。
これ、余計なことを知ったらお前も死ぬぞ、って言われてる?
言われてるな、多分。
「え~~、でもお、頑張ったらご褒美とかあるのかなってえ~、そしたらなえ、ちょ~がんばるう~」
背中に冷や汗が流れるのを感じつつ、それでも、無害を主張するためにアホっぽさを強調して、もう一押ししてみると、
「まあ、…そなたの出来によっては、わしが可愛がってやらんこともない」
想像以上に最低な答えが返ってきた。
「う、…っっ」
法師がダルマな二重顎にニタリとした好色な笑みを浮かべている。一気に吐き気が込み上げてきた。
なんつー最悪な坊主っ。信じられない。一遍死んで来いっ
「う、…?」
「…う、嬉しいですうう~~~」
本気で吐きそう。うええええ、…
身体中に鳥肌が立って、何とか作り笑顔を浮かべたものの、足が勝手に後退し始めた。
「或いは、相応の働きをして秘技を磨けば、晴信様がお引き立てくださるやもしれぬの」
ん? 晴信?
一刻も早く退散しようとしたけど、気になる名前が出てきたので足を止めた。
「このような童女に晴信様の食指が動きますかどうか」
「まあ我々で秘技を教え込むのも一興ですがね」
が、弟子たちの下衆な会話が聞こえてきて、止めたことを後悔した。
こいつら、まとめて最低か。曲がりなりにも神職に就いてるんじゃないんかい。
「で、では。気合入れて頑張りますう~~~」
「そうじゃ、なえ。しかと努めよ。しかとな」
しかと、…逃げよう。
ヤバ過ぎる達磨法師と弟子たちからススス――っと距離をとり、そそくさと女中仕事に戻った。
「なえ、戻るの早かったね。お館様と若君様のお酒は足りたかい?」
「あ、いえ、…?」
「うん。全部運んだなら大丈夫だろう。じゃあ後は、薪が足りなさそうだから持ってきといて」
「はあ、…」
言われた通り、束ねられた薪を運び入れながら、必死で頭を働かせた。
つまり。…どういうことだ?
法師は穂月を毒殺しようとしていて、私を実行犯にしようとしている。でも私は念を入れられた覚えも、蟲毒を預かった覚えもない。
じゃあ誰に預けたんだっちゅー話で。
『なえ、あんたどうしたんだい? 朝餉を運んだときはあんなにシャキシャキしてたのに』
『…ふむ。この娘に入れた念は有効。式神としてはまだ使える』
『なえ、戻るの早かったね。全部運んだなら大丈夫だろう』
…なんか、違和感がある。
まるで私がもう一人いて、法師の手となり足となり、着々と計画を遂行しているような、…
なんで穂月が狙われてるんだろう?
穂月は志田城の大事な跡取り息子なんだよね??
「ところで、法師様。どうして若君を暗殺しないといけないんでしたっけ?」
達磨法師は自分の計画が順調に進んでいることに気を良くしている様子で、見えない風圧の縄を解いてくれたので、さりげなく尋ねてみた。
「そのようなこと、そなたは知らんでも良い。好奇心は身を滅ぼす元ぞ」
けど、法師は顔にとまったハエを追い払うような仕草を見せただけだった。
これ、余計なことを知ったらお前も死ぬぞ、って言われてる?
言われてるな、多分。
「え~~、でもお、頑張ったらご褒美とかあるのかなってえ~、そしたらなえ、ちょ~がんばるう~」
背中に冷や汗が流れるのを感じつつ、それでも、無害を主張するためにアホっぽさを強調して、もう一押ししてみると、
「まあ、…そなたの出来によっては、わしが可愛がってやらんこともない」
想像以上に最低な答えが返ってきた。
「う、…っっ」
法師がダルマな二重顎にニタリとした好色な笑みを浮かべている。一気に吐き気が込み上げてきた。
なんつー最悪な坊主っ。信じられない。一遍死んで来いっ
「う、…?」
「…う、嬉しいですうう~~~」
本気で吐きそう。うええええ、…
身体中に鳥肌が立って、何とか作り笑顔を浮かべたものの、足が勝手に後退し始めた。
「或いは、相応の働きをして秘技を磨けば、晴信様がお引き立てくださるやもしれぬの」
ん? 晴信?
一刻も早く退散しようとしたけど、気になる名前が出てきたので足を止めた。
「このような童女に晴信様の食指が動きますかどうか」
「まあ我々で秘技を教え込むのも一興ですがね」
が、弟子たちの下衆な会話が聞こえてきて、止めたことを後悔した。
こいつら、まとめて最低か。曲がりなりにも神職に就いてるんじゃないんかい。
「で、では。気合入れて頑張りますう~~~」
「そうじゃ、なえ。しかと努めよ。しかとな」
しかと、…逃げよう。
ヤバ過ぎる達磨法師と弟子たちからススス――っと距離をとり、そそくさと女中仕事に戻った。
「なえ、戻るの早かったね。お館様と若君様のお酒は足りたかい?」
「あ、いえ、…?」
「うん。全部運んだなら大丈夫だろう。じゃあ後は、薪が足りなさそうだから持ってきといて」
「はあ、…」
言われた通り、束ねられた薪を運び入れながら、必死で頭を働かせた。
つまり。…どういうことだ?
法師は穂月を毒殺しようとしていて、私を実行犯にしようとしている。でも私は念を入れられた覚えも、蟲毒を預かった覚えもない。
じゃあ誰に預けたんだっちゅー話で。
『なえ、あんたどうしたんだい? 朝餉を運んだときはあんなにシャキシャキしてたのに』
『…ふむ。この娘に入れた念は有効。式神としてはまだ使える』
『なえ、戻るの早かったね。全部運んだなら大丈夫だろう』
…なんか、違和感がある。
まるで私がもう一人いて、法師の手となり足となり、着々と計画を遂行しているような、…
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