戦国男子高校生に言い寄られてます!?【完結】

remo

文字の大きさ
上 下
58 / 92
iiyori.07

04.

しおりを挟む



咄嗟に、否定しようと思った。

だって私は、そんな大それたこと思っていい身分じゃない。
新撰組に、この名が残っていないんだから。

いつかは未来に帰るのだ。

ううん、未来に、帰らなくてはいけないんだ。


「ち、が……」


どうして。
言葉が、うまく綴れない。


「……ち、がうよ……そんなわけ、ないじゃない……」


一言一言。
口から押し出すたびに、胸が軋むように痛む。


「………璃桜…」

「……あ、ほんとだよ? 歳三なんて、……どうも思ってないし?」


例えそれが、私にとって、嘘と欺瞞でも構わない。

平ちゃんを、周りを、……自分を。
欺いて、言い聞かせて、真実だと信じ込ませることが出来るのなら。

言葉を、押し出そう。


「璃桜。前向け」


自然と俯いてしまっていた私の顎を掬い上げるように持ち上げて。


「……そんな、…辛そうな顔してんじゃねーよ」


そう言って、私の頬にそっと手を触れる。

潤んだ視界でその顔を見れば、へにゃりと眉を困ったようにさげて、優しく笑う貴方がいた。


「認めて、やれよ」

「……え」

「自分の事を、だよ」


その言葉に、心が僅かに音をたてる。

私は、この時代では好きな人なんか作っちゃいけないのに。
大切な人を、失うのはもうあの時だけで十分なのだから。

それなのに。


「璃桜、璃桜はいつだって俺の好きなやつなんだよ。変わらねぇよ、それは」


――――――だから。
そう呟いて、優しく口角を上げ、両手で頬を包み込んだ。


「…………璃桜は、璃桜だ」

「へい、ちゃ……」

「土方さんの雑用してるのも、稽古をしているのも、食事の支度をしてるのも……何処にいたって、何をしていたって、璃桜は璃桜なんだ」


どうして、貴方はそんなに柔く優しく、けれどひどく残酷な方向に私の背を押すのだろう。

まるで私が。
この時代での私自身の恋を、認めることができない理由を知っているかのように。


「総司のことだって、同じだろ?」


ほら、また。

切り口をえぐるように、核心をついてくる。


「……そうちゃんとも、何もないよ」

「嘘つけよ。ちゃんと話せてないだろ?」


目を覗きこまれて、図星過ぎて何も言えなくなった。


「……璃桜は、総司が怖いの?」


ぐ、と喉が鳴る。


「そんな、こと」


ない……って、言えない自分に直面した。

そう、私はこれを恐れていたの。
そうちゃんが、“沖田総司”だって、あの冷徹な剣士……あんな恐ろしいことをしても普通にいられる人だって、認めるのが怖かった。

ぶわりと涙をにじませた瞳で見上げれば、困ったように頬に手を滑らせて涙を拭った。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

忙しい男

菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。 「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」 「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」 すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。 ※ハッピーエンドです かなりやきもきさせてしまうと思います。 どうか温かい目でみてやってくださいね。 ※本編完結しました(2019/07/15) スピンオフ &番外編 【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19) 改稿 (2020/01/01) 本編のみカクヨムさんでも公開しました。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

処理中です...