戦国男子高校生に言い寄られてます!?【完結】

remo

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何を見ても、何を聞いても、何をしていても。

「なえ~、奥に行って朝餉あさげの御膳下げてきて」
「ふあああ~~~い」

身体中至るところに穂月を感じる。

「こら、なえっ! 露骨に欠伸をするんじゃないっっ」

今日も元気な戦国のマキちゃんにはたかれて、スパコーンと、また私の頭が鳴ってるけれど、どこか遠い国の出来事のような気がする。

「なえ、あんたどうしたんだい? 朝餉を運んだときはあんなにシャキシャキしてたのに」

女中仲間のタキさんが不審そうに私を見てくるけど、知らんがな。

「タキさん、見ちゃったんじゃないですか? 奥のさん姫さまのお座敷で、…」
「え、またお館様が、…?」

タキさんとサキさんがひそひそ顔を見合わせて、意味ありげに私を見てくるけど、知らんがな。

「まあ、なえに大人の色恋はまだ早いか」
「そうねえ。ささがきも出来ない大根娘だものね」

いや、ささがきは牛蒡やろ。

などと突っ込む元気もない。

「何言ってんの、ささがき大根のサラダは絶品よ」
「そうよ、そうよ」

だから、知らんがな。

身体中隅々までいっぱいになった穂月が溢れ出してしまいそうで、歩くことさえままならない。

「なえ~、そこのお茶碗全部洗っておいてね」
「ふあああ~~~い」
「返事はハイっっ」

暴力反対。

戦国のマキちゃんにしばかれながら、山と積まれたお椀たちをひたすら洗う。一応手は動かしているけど、身体も頭も穂月の余韻に占められていて、てんで働かない。

鑑みるに、私はポンコツなんだと思う。

結局。
穂月は中学生にして、恐ろしく有能に過ぎるということが分かっただけで、これからどうすればいいのかさっぱり分からない。

穂月には羽間はざまの間者だと誤解されたままだし、時切丸については何の情報も得られなかったし、…

ていうか。

「あ、…忘れてた」

なんかいろいろ知ってるっぽい達磨法師と、蔵の前で会う約束してたんだった。すっかりさっぱり忘れてすっぽかしてしまった。いやだって。あんな妖艶な穂月に迫られて、抗える人間がこの世の中にいます?? って、私、そんなことばっか言ってるような。

いやでもホントに。
穂月しか知らないから比べられないけど、あれは敵国の総大将も落ちる、…

ん?

『間者でもいい』ってそういうことか?
なんか、私、穂月に上手くしてやられてるというか、手のひらの上で転がされてる??

「これ、なえ」

一抹の不安を感じながら、表向きは女中仕事に励み、夜が近づくにつれてどうしようもなく期待が込み上げてそわそわしてしまう私に、坊主が声をかけてきた。

「出来れば、法師と呼んでくれぬか」

…わがまま言わないの。
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