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iiyori.07
01.
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穂月が優しくて。ものすごく優しくて。
ただひたすらに穂月に溺れた。
手も目も声も。頭も身体も唇も。
全部穂月のために作られたんじゃないかと思うほど、
全てがぴったり当て嵌って、お互いを離さないようにしっかり絡まり合って、そのまま深く溶け合った。
羞恥よりも快感がすごくて。それよりもっと愛しさが勝って。
喉が枯れるくらい穂月を呼んで、力の限り抱きしめた。
私をたどる穂月の指先と舌先が優しさに満ちている。
一つ一つ確かめるみたいに緩やかで甘やかで、耐え切れずに何度も恍惚に震えてしまった。やっと手に入れた宝物に何度も触って、手の内にあるのを確かめるように、穂月の動きは細やかで丁寧で慈しみに満ちていた。
穂月は私が怖くないように、
「なえ、…」
その美しく鍛えられた身体全てで柔らかく寄り添って、境界線が分からなくなるくらいなよやかに蕩かせて、奥深くまで溶かし合って、無限の快感だけを植え付けた。それは初めての時よりも慎重で繊細で、初めて穂月と結ばれたような気がしたんだけど、もしかしたら正真正銘これが初めてになるのかもしれない。
けど、実際にはそんなことを考える余裕は一ミリもなく、とめどない愛しさが弾けて、ただただ穂月でいっぱいになって、後から後から沸き上がる幸福の絶頂に溺れた。
もう、穂月がいれば。
何でもいい、…
などというわけには、もちろんいかず。
「若っ、若君、起きてください! 早くなえ様をお戻しにならないと、皆に不審がられますっ」
死ぬほど幸せな穂月の腕の中でまどろみに揺られながら、繰り返す快感に包まれて恍惚に漂っていたところ、襖の向こうから鷹朋さんに叩き起こされた。
「…無粋なやつ。体調不良とでも言っておけ」
「いえ、今朝は奥方様が閏月様を連れて若にご機嫌伺いに参られるそうで、お館様も共にお越しになられますゆえ、鉢合わせたら大変にございます」
寝起きでちょっと可愛い穂月が、
「…閏なんてどうでもいい」
不機嫌に吐き捨ててから、
「…なえ。どこも痛まぬか?」
ちゅっと優しく口づけながら私を撫でて、するりと私の中から抜け出した。
その刺激だけでまた快感の戦慄が走って、思わず声を漏らして穂月にしがみついた。穂月は余韻に震える私を優しく抱きしめて、
「飲め」
寝室に持ち込んでいたらしい水を盃に注いで私に飲ませようとしてくれたけど、身体中が甘く痺れていて脳みそまで蕩けていて、盃を受け取る手がおぼつかない。もたもたしていたら、穂月がふっと笑って盃を傾けると、口移しに飲ませてくれた。
やばい、これは、…
上からも下からも穂月に注がれて。
内側も外側も穂月でいっぱいになる。
身体中隅々まで、細胞のひとかけらにまで穂月が満ち満ちて、自分が全て新しく作り替えられたような気がした。
夢うつつのまま、しどけない状態で穂月に乗り掛かっている私を、穂月は抱き起こして優しく撫でながら、手早く着物を着せると、
「今夜も来いよ」
もう一度口づけてから送り出した。
ただひたすらに穂月に溺れた。
手も目も声も。頭も身体も唇も。
全部穂月のために作られたんじゃないかと思うほど、
全てがぴったり当て嵌って、お互いを離さないようにしっかり絡まり合って、そのまま深く溶け合った。
羞恥よりも快感がすごくて。それよりもっと愛しさが勝って。
喉が枯れるくらい穂月を呼んで、力の限り抱きしめた。
私をたどる穂月の指先と舌先が優しさに満ちている。
一つ一つ確かめるみたいに緩やかで甘やかで、耐え切れずに何度も恍惚に震えてしまった。やっと手に入れた宝物に何度も触って、手の内にあるのを確かめるように、穂月の動きは細やかで丁寧で慈しみに満ちていた。
穂月は私が怖くないように、
「なえ、…」
その美しく鍛えられた身体全てで柔らかく寄り添って、境界線が分からなくなるくらいなよやかに蕩かせて、奥深くまで溶かし合って、無限の快感だけを植え付けた。それは初めての時よりも慎重で繊細で、初めて穂月と結ばれたような気がしたんだけど、もしかしたら正真正銘これが初めてになるのかもしれない。
けど、実際にはそんなことを考える余裕は一ミリもなく、とめどない愛しさが弾けて、ただただ穂月でいっぱいになって、後から後から沸き上がる幸福の絶頂に溺れた。
もう、穂月がいれば。
何でもいい、…
などというわけには、もちろんいかず。
「若っ、若君、起きてください! 早くなえ様をお戻しにならないと、皆に不審がられますっ」
死ぬほど幸せな穂月の腕の中でまどろみに揺られながら、繰り返す快感に包まれて恍惚に漂っていたところ、襖の向こうから鷹朋さんに叩き起こされた。
「…無粋なやつ。体調不良とでも言っておけ」
「いえ、今朝は奥方様が閏月様を連れて若にご機嫌伺いに参られるそうで、お館様も共にお越しになられますゆえ、鉢合わせたら大変にございます」
寝起きでちょっと可愛い穂月が、
「…閏なんてどうでもいい」
不機嫌に吐き捨ててから、
「…なえ。どこも痛まぬか?」
ちゅっと優しく口づけながら私を撫でて、するりと私の中から抜け出した。
その刺激だけでまた快感の戦慄が走って、思わず声を漏らして穂月にしがみついた。穂月は余韻に震える私を優しく抱きしめて、
「飲め」
寝室に持ち込んでいたらしい水を盃に注いで私に飲ませようとしてくれたけど、身体中が甘く痺れていて脳みそまで蕩けていて、盃を受け取る手がおぼつかない。もたもたしていたら、穂月がふっと笑って盃を傾けると、口移しに飲ませてくれた。
やばい、これは、…
上からも下からも穂月に注がれて。
内側も外側も穂月でいっぱいになる。
身体中隅々まで、細胞のひとかけらにまで穂月が満ち満ちて、自分が全て新しく作り替えられたような気がした。
夢うつつのまま、しどけない状態で穂月に乗り掛かっている私を、穂月は抱き起こして優しく撫でながら、手早く着物を着せると、
「今夜も来いよ」
もう一度口づけてから送り出した。
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