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iiyori.06
09.
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穂月のキスが好き。
余計なものが全て溶け落ちて、穂月だけでいっぱいになる。
私を探る手のひらの温度。絡め合わされた舌先の強さ。切羽詰まったように交わされる吐息。絶え間なく注がれる甘い唇。
ずっと覚えてる。何があっても忘れない。
全身の細胞に刻み込んで。全力で抱きしめる。
穂月が好き。
もしも。
時空を超えて、心も身体もバラバラになって、散り散りになって。
穂月と離れ離れになっても、きっと。
また。絶対穂月を好きになる。
いつ、どこで、どんな風に出会っても。
絶対穂月を好きになる。
どうか。
永遠に消えない穂月の痕を付けて欲しい。
「なえ、…」
穂月が私の眼元に唇を寄せた。
いつの間にか泣いていたらしい。
「どうした?」
穂月の声が涙を震わせる。
何て言ったらいいんだろう。
なんでか分からないけど。
思いが溢れて道しるべを見失ってしまった。
穂月が好きで。穂月に会えて幸せで。
だけど、これから、私はどうしたらいいんだろう。
穂月を連れて、現代に帰れるだろうか。
本当にそれでいいんだろうか。
「なにが怖い?」
時切丸で切られたら時空を超えられるとしても。
元いたところに戻れるという保証はない。
私だけが戻ることになるかもしれないし。永遠に霊魂が暗闇を彷徨うことになるかもしれない。私が今ここにいるのは神様が起こした気まぐれな奇跡なのかもしれなくて、…
「穂月が好きで、…」
もしかしたら、無理に帰ろうとするんじゃなくて、このままここに居た方がいいのかもしれない。マキちゃんも鷹朋さんもいるし、慣れれば女中仕事ももうちょっと出来るようになるだろうし。ささがきだって完璧に出来るようになってみせるし。
「…どうしたらいいか分からない」
…でも。
ここは戦国。
ここに居たら穂月は時切丸を使って人を殺め続けなきゃいけない。
戦乱の世だから、武将として生まれてしまったから、敵兵はもちろん、肉親だって忠臣だって、…
もう穂月に誰も殺して欲しくない。
でもそれは私のエゴかもしれない。
「…お前、羽間の間者だろう?」
途方に暮れていたら、穂月の優しい指先が涙をぬぐった。
カンジャ、…??
予想外過ぎて、とっさに語彙変換が出来ない。
かんじゃ。患者。間者。…間者って、スパイのこと?
で、羽間ってのは多分、穂月の敵対勢力だ。
「…お前、時々俺の時切丸を探しているよな?」
…気づかれてた!!
いや、だって。
時切丸で切られたらまた時空を超えられるかなって、そりゃあ気になりますよ。
「坊主とこそこそ蔵を探っていたな?」
…それもバレてた!!
どこで見てたんだろう。穂月の観察眼が鋭すぎる。いや、雪だるまがビック過ぎるのか。ていうか、私、なんか忘れてる、…
「それでもいい」
涙をぬぐった指先の後に穂月の唇が触れる。
その唇が優し過ぎて、凝り固まった思考がほどけた。
「俺が好きならここにいろ」
再び穂月の唇が重ねられて、思考も不安も全て飲み込まれた。
長い指が。温かい手のひらが。優しい唇が。甘い舌が。交わる吐息が。
穂月と繋がる全てが愛しい。
穂月が好き。
それだけでいい。
余計なものが全て溶け落ちて、穂月だけでいっぱいになる。
私を探る手のひらの温度。絡め合わされた舌先の強さ。切羽詰まったように交わされる吐息。絶え間なく注がれる甘い唇。
ずっと覚えてる。何があっても忘れない。
全身の細胞に刻み込んで。全力で抱きしめる。
穂月が好き。
もしも。
時空を超えて、心も身体もバラバラになって、散り散りになって。
穂月と離れ離れになっても、きっと。
また。絶対穂月を好きになる。
いつ、どこで、どんな風に出会っても。
絶対穂月を好きになる。
どうか。
永遠に消えない穂月の痕を付けて欲しい。
「なえ、…」
穂月が私の眼元に唇を寄せた。
いつの間にか泣いていたらしい。
「どうした?」
穂月の声が涙を震わせる。
何て言ったらいいんだろう。
なんでか分からないけど。
思いが溢れて道しるべを見失ってしまった。
穂月が好きで。穂月に会えて幸せで。
だけど、これから、私はどうしたらいいんだろう。
穂月を連れて、現代に帰れるだろうか。
本当にそれでいいんだろうか。
「なにが怖い?」
時切丸で切られたら時空を超えられるとしても。
元いたところに戻れるという保証はない。
私だけが戻ることになるかもしれないし。永遠に霊魂が暗闇を彷徨うことになるかもしれない。私が今ここにいるのは神様が起こした気まぐれな奇跡なのかもしれなくて、…
「穂月が好きで、…」
もしかしたら、無理に帰ろうとするんじゃなくて、このままここに居た方がいいのかもしれない。マキちゃんも鷹朋さんもいるし、慣れれば女中仕事ももうちょっと出来るようになるだろうし。ささがきだって完璧に出来るようになってみせるし。
「…どうしたらいいか分からない」
…でも。
ここは戦国。
ここに居たら穂月は時切丸を使って人を殺め続けなきゃいけない。
戦乱の世だから、武将として生まれてしまったから、敵兵はもちろん、肉親だって忠臣だって、…
もう穂月に誰も殺して欲しくない。
でもそれは私のエゴかもしれない。
「…お前、羽間の間者だろう?」
途方に暮れていたら、穂月の優しい指先が涙をぬぐった。
カンジャ、…??
予想外過ぎて、とっさに語彙変換が出来ない。
かんじゃ。患者。間者。…間者って、スパイのこと?
で、羽間ってのは多分、穂月の敵対勢力だ。
「…お前、時々俺の時切丸を探しているよな?」
…気づかれてた!!
いや、だって。
時切丸で切られたらまた時空を超えられるかなって、そりゃあ気になりますよ。
「坊主とこそこそ蔵を探っていたな?」
…それもバレてた!!
どこで見てたんだろう。穂月の観察眼が鋭すぎる。いや、雪だるまがビック過ぎるのか。ていうか、私、なんか忘れてる、…
「それでもいい」
涙をぬぐった指先の後に穂月の唇が触れる。
その唇が優し過ぎて、凝り固まった思考がほどけた。
「俺が好きならここにいろ」
再び穂月の唇が重ねられて、思考も不安も全て飲み込まれた。
長い指が。温かい手のひらが。優しい唇が。甘い舌が。交わる吐息が。
穂月と繋がる全てが愛しい。
穂月が好き。
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