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iiyori.06

06.

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「マキちゃん~~~♡ 牛蒡出来たよ~~~♡」
「お・マ・キっ!! 何度言ったら分かるの、このすかたんっ!!」

バッシンと頭をどつかれるけど、幸せ。
だって配属された志田城の女中頭が、なんとマキちゃんだったのよ。
ここでマキちゃんに会えるなんて、味方が100人出来たようなもの。

「ああ、なえ。その牛蒡、炊き込みご飯に使うから、全部ささがきにして」
「…ぶつ切りで良くない?」
「いいわけあるか――――っ」

再び頭がスカターンと鳴る。戦国のマキちゃんは勇ましい。

そして、戦国女中のお姉さんたちは、仕事が早いうえに上手い。洗う、切る、運ぶ。火を起こす、焚く、片付ける。炊飯器も食器洗い乾燥機もない炊事場で、ガールズトークに花を咲かせながら、驚異のスピードで手を動かし、食品工場の機械みたいな正確さでささがきの山を築き上げていく。

「あんた、何この丸太」
「え? ささがきですよ、ささがき」
「こんなぶっといささがきがあるか―――いっ」

自分がいかに家事をさぼっていたかが浮き彫りになる。
令和に帰ったらカット済み冷凍牛蒡じゃなくて生の牛蒡を調理しよう、…

「ねえちょっと、誰か。釜が足りないから、蔵まで行って持ってきておくれ」
「ハイハイは~~~いっ! 行ってきま~~~すっ」

丸太牛蒡と万能包丁を放り投げて、我先にと蔵に走る。この機会を待っていた。

女中になったのは、炊事力を鍛えるためだけじゃない。時切丸ときりまるについて探るためでもある。時切丸が時空を超える鍵であるのは間違いないけど、そもそも時切丸っちゅーのは何物で、どこからやってきたんだ、という謎がある。

「あ、こら、なえっ! あんたは牛蒡を、…っ」
「おマキさん、もういません」
「あの子、無駄にやる気だけはあるんだけどねえ、…」

マキちゃんと女中仲間たちの深いため息は聞こえない。

時切丸はその容赦のなさから、蔵に封印されていたのが、穂月誕生とともに自らを解き放った、とか聞いた気がする。つまり、誰か時切丸を封印する力を持ってた人がいたってことで。どうやって封印したんだか、とりあえず蔵から探ってみようっ、…

「これ、そこの女子おなご。こんなところで何をしておる」

と思ったんだけど、蔵に着く前に迷子になってしまった。志田城広すぎ案件。あれ、ここさっきも通ったよね? おんなじ所グルグル回ってる? これってホラーの始まりじゃん? 案件が勃発してしまった。

誰かに場所を聞くしかないか、と思っていたら、ちょうどいい感じに声をかけられた。

「あ、すみませ~~~んっ。迷子になっちゃってえ。蔵ってどっちにありましたっけ、…」

怪しまれないよう、精一杯愛想を良くして声をかけてくれた人を見ると、

「え、雪だるまマモル、…っ!?」

「はて。東丸達磨だるま法師とはこのわしじゃが。このようにかわゆらしい女子にも知られておるとは、わしも隅に置けないの」

いや、自分で言うなし。

紫色の高僧っぽい袈裟を着たちょっと歳とった雪だるま、…に激似の法師が立っていた。

まさかの、雪だるまマモルは由緒正しい達磨だった案件、…っっ
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