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iiyori.05
09.
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思い返せば、初めて会った時も穂月はキスしてきたんだった。
え、穂月って早熟?
『巧いってことはそれだけ慣れてるってことだからね』
『つまり、ヤリまくり』
またしても、マキちゃんの声がリフレインする。
ヤリまくり、ヤリまくり、ヤリまくり、…
「ちょっとあんた、可愛い顔してどんだけ遊んできてるわけっ!?」
人が29年も何事もなく清く正しくちょっぴり雪だるまと出会ったくらいのわびしい人生を送っているうちに、…っっ
思わず穂月につかみかかると、穂月は一瞬きょとんとした顔をしてから、
「案ずるな」
なぜかもう一度口づけて、軽々と私を抱き上げた。
「なえが怖くなくなるまでしない」
ぬおおう?? なにその余裕!?
なんか、なんか、めっちゃ余裕ですやん。ていうか、ヤリまくりも否定しないじゃん。ていうか、中坊のくせにこんなたやすく抱き上げるとか、筋力半端ないですやん。
ていうか、ていうか、…っっ
なんかもうどさくさに紛れてキスされまくってるし、中学生のくせに穂月はなんか艶っぽいし、大人っぽいし、密着するとしなやかな体躯が感じられてしまうし、穂月特有のいい匂いもするし、心臓がバックバックおかしなことになってるんですけどっっ??
「…耳まで赤いな」
穂月が楽しそうに笑いながら私の耳を触った。
「ういやつ」
何この天然たらし。
中学の時からこれだったんなら、高校生の穂月相手に太刀打ちできるわけなかったわ。マキちゃん、聞いて。私がちょろいんじゃなかった。穂月が強力過ぎるんよ――――――っっ
穂月の威力でぐにゃぐにゃになりながら、屋敷の奥に構えられた穂月の部屋らしいところに入ると、穂月は食事を用意してくれた。
「まあ飲め」
ほわほわ湯気と美味しい匂いが漂うニラと梅干の雑穀粥。
現金なことにそれを見たら、お腹ペコペコ、喉もカラカラだったことを思い出して、思わずがっついてしまった。ごちそうというわけじゃないけど、めちゃくちゃ美味しく感じる。
『なえの作る鍋は美味いな。ごちそうさま』
穂月が切って煮ただけの手抜き鍋を美味しそうに食べてくれたことを思い出して、なんだか胸がいっぱいになった。
隣を見ると、穂月は盃を傾けながら優しい目で私を見ていた。
今更だけど、ちょっとがっつき過ぎた感があり、ごまかすために穂月が注いでくれた盃をあおると、急速に喉が焼けて思わず吹き出した。
「おい、大丈夫か?」
驚いた穂月が私の背中をさすってくれる。
優しい。って、そうでなく。
「あんた、これ、お酒じゃんっ! お酒は二十歳になってからっっ!!」
げっほげっほむせながら力説すると、穂月はちょっとぽかんとした顔をしてから、
「…なえ。お前、どうも、落ち着きがないな?」
なだめるように私の頭を撫でた。
あああ――――、なんかいろいろデジャヴっ! それ全部、あんたのせいだからっっ
え、穂月って早熟?
『巧いってことはそれだけ慣れてるってことだからね』
『つまり、ヤリまくり』
またしても、マキちゃんの声がリフレインする。
ヤリまくり、ヤリまくり、ヤリまくり、…
「ちょっとあんた、可愛い顔してどんだけ遊んできてるわけっ!?」
人が29年も何事もなく清く正しくちょっぴり雪だるまと出会ったくらいのわびしい人生を送っているうちに、…っっ
思わず穂月につかみかかると、穂月は一瞬きょとんとした顔をしてから、
「案ずるな」
なぜかもう一度口づけて、軽々と私を抱き上げた。
「なえが怖くなくなるまでしない」
ぬおおう?? なにその余裕!?
なんか、なんか、めっちゃ余裕ですやん。ていうか、ヤリまくりも否定しないじゃん。ていうか、中坊のくせにこんなたやすく抱き上げるとか、筋力半端ないですやん。
ていうか、ていうか、…っっ
なんかもうどさくさに紛れてキスされまくってるし、中学生のくせに穂月はなんか艶っぽいし、大人っぽいし、密着するとしなやかな体躯が感じられてしまうし、穂月特有のいい匂いもするし、心臓がバックバックおかしなことになってるんですけどっっ??
「…耳まで赤いな」
穂月が楽しそうに笑いながら私の耳を触った。
「ういやつ」
何この天然たらし。
中学の時からこれだったんなら、高校生の穂月相手に太刀打ちできるわけなかったわ。マキちゃん、聞いて。私がちょろいんじゃなかった。穂月が強力過ぎるんよ――――――っっ
穂月の威力でぐにゃぐにゃになりながら、屋敷の奥に構えられた穂月の部屋らしいところに入ると、穂月は食事を用意してくれた。
「まあ飲め」
ほわほわ湯気と美味しい匂いが漂うニラと梅干の雑穀粥。
現金なことにそれを見たら、お腹ペコペコ、喉もカラカラだったことを思い出して、思わずがっついてしまった。ごちそうというわけじゃないけど、めちゃくちゃ美味しく感じる。
『なえの作る鍋は美味いな。ごちそうさま』
穂月が切って煮ただけの手抜き鍋を美味しそうに食べてくれたことを思い出して、なんだか胸がいっぱいになった。
隣を見ると、穂月は盃を傾けながら優しい目で私を見ていた。
今更だけど、ちょっとがっつき過ぎた感があり、ごまかすために穂月が注いでくれた盃をあおると、急速に喉が焼けて思わず吹き出した。
「おい、大丈夫か?」
驚いた穂月が私の背中をさすってくれる。
優しい。って、そうでなく。
「あんた、これ、お酒じゃんっ! お酒は二十歳になってからっっ!!」
げっほげっほむせながら力説すると、穂月はちょっとぽかんとした顔をしてから、
「…なえ。お前、どうも、落ち着きがないな?」
なだめるように私の頭を撫でた。
あああ――――、なんかいろいろデジャヴっ! それ全部、あんたのせいだからっっ
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