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iiyori.05
08.
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「生意気」
ぺしっと鼻の頭を軽く弾かれた。
「さっきまで怖がって泣いてたくせに」
つぶやくと、穂月は私の顎をつかんで、私の顔をしげしげと眺めた。
「お前、名は何と言う?」
穂月のすこぶる端正な顔が近い。
ただいまわたくし、涙と鼻水でぐちゃぐちゃですので、あんまり見ないで欲しいんですけど。という乙女心がこれでもあるけど、なんかそんなこと言える空気じゃない、…
「…えーと、…な、なえ?」
名前? 菜苗でいいのか??
戸惑いつつもさりげなく穂月から顔を逸らそうとすると、
「…なえ」
しっかりつかまれた顎を上向かされ、綺麗すぎる穂月の顔が目前に迫ったと思ったら、唇が優しく触れた。
「な、…っ!?」
え、ええっ!? キス!? キスした??
なな、…生意気じゃない!? 中坊のくせにっ
衝撃に口が半開きになる私に、穂月は中坊とは思えない艶めいた笑みを見せ、ちょっと勝ち誇ったように言った。
「俺と来い」
穂月にしっかり引き寄せられてその胸の中に囲われる。
え―――、お―――、う――――――、…
思考力停止。中坊穂月の破壊力。恐ろしい。末恐ろしい。
いや、行くしかないけどさ? 穂月と一緒にいる以外、生き残る術はないけどさ? 私に選択肢はないんだけどっっ。
「…穂月様が笑われた」「あのように楽し気に」
「なんと麗しい、…っ」
部屋の中に控えていた男の人たちが、信じられないものを見たかように呆けている。穂月がこの時代でどんな生活を送ってきたのかがうかがわれて胸が痛くなった。
「悪いが、なえは俺がもらい受ける」
「あ、…はい」「それはもちろん」「どうぞどうぞ」
男の人たちは易々と私を差し出そうとし、
「あ、いやしかし、そのような娘をおそばに置かれるのはいかがなものかと」
「穂月様には到底釣り合わぬ遊び女など、近づけたとなればお館様がお許しになりますまい」
なんかいろいろ失礼なことを言いだした。
職業蔑視って言うか女性差別って言うか。
さっきまでの私に対する当然のような扱いもびっくりだけど。
筋違いも甚だしい。皆さん、時代は令和ですぜ?
「構うか」
穂月はちょっと怒ったように言い捨てると、私を連れて歩き出した。
「はっ、…」「ははあ、…」
男の人たちは平伏し、圧倒されたように口をつぐんで穂月を見送った。
穂月は先進的な思想の持ち主だったのかもしれない。やっぱり令和に来るべくしてきたのかもしれないな、…
なんか感慨深くなって、穂月の着物の袖をつかむと、
「ん」
振り向きざまにキスされた。
のおおうっ!?
ちょっと、この中学生、手早くないですか??
目を見開いて固まると、
「…お前は俺がいいんだろ?」
悪戯な笑みを浮かべた穂月が、私の頭をポンポン優しく撫でた。
ぺしっと鼻の頭を軽く弾かれた。
「さっきまで怖がって泣いてたくせに」
つぶやくと、穂月は私の顎をつかんで、私の顔をしげしげと眺めた。
「お前、名は何と言う?」
穂月のすこぶる端正な顔が近い。
ただいまわたくし、涙と鼻水でぐちゃぐちゃですので、あんまり見ないで欲しいんですけど。という乙女心がこれでもあるけど、なんかそんなこと言える空気じゃない、…
「…えーと、…な、なえ?」
名前? 菜苗でいいのか??
戸惑いつつもさりげなく穂月から顔を逸らそうとすると、
「…なえ」
しっかりつかまれた顎を上向かされ、綺麗すぎる穂月の顔が目前に迫ったと思ったら、唇が優しく触れた。
「な、…っ!?」
え、ええっ!? キス!? キスした??
なな、…生意気じゃない!? 中坊のくせにっ
衝撃に口が半開きになる私に、穂月は中坊とは思えない艶めいた笑みを見せ、ちょっと勝ち誇ったように言った。
「俺と来い」
穂月にしっかり引き寄せられてその胸の中に囲われる。
え―――、お―――、う――――――、…
思考力停止。中坊穂月の破壊力。恐ろしい。末恐ろしい。
いや、行くしかないけどさ? 穂月と一緒にいる以外、生き残る術はないけどさ? 私に選択肢はないんだけどっっ。
「…穂月様が笑われた」「あのように楽し気に」
「なんと麗しい、…っ」
部屋の中に控えていた男の人たちが、信じられないものを見たかように呆けている。穂月がこの時代でどんな生活を送ってきたのかがうかがわれて胸が痛くなった。
「悪いが、なえは俺がもらい受ける」
「あ、…はい」「それはもちろん」「どうぞどうぞ」
男の人たちは易々と私を差し出そうとし、
「あ、いやしかし、そのような娘をおそばに置かれるのはいかがなものかと」
「穂月様には到底釣り合わぬ遊び女など、近づけたとなればお館様がお許しになりますまい」
なんかいろいろ失礼なことを言いだした。
職業蔑視って言うか女性差別って言うか。
さっきまでの私に対する当然のような扱いもびっくりだけど。
筋違いも甚だしい。皆さん、時代は令和ですぜ?
「構うか」
穂月はちょっと怒ったように言い捨てると、私を連れて歩き出した。
「はっ、…」「ははあ、…」
男の人たちは平伏し、圧倒されたように口をつぐんで穂月を見送った。
穂月は先進的な思想の持ち主だったのかもしれない。やっぱり令和に来るべくしてきたのかもしれないな、…
なんか感慨深くなって、穂月の着物の袖をつかむと、
「ん」
振り向きざまにキスされた。
のおおうっ!?
ちょっと、この中学生、手早くないですか??
目を見開いて固まると、
「…お前は俺がいいんだろ?」
悪戯な笑みを浮かべた穂月が、私の頭をポンポン優しく撫でた。
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