戦国男子高校生に言い寄られてます!?【完結】

remo

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「おい、何をしている」

男の人たちに力任せに組み敷かれて、それでも最後の力を振り絞って泣き喚いていると、突然スっと部屋の扉が開かれた。

「え、…!?」「若君様、…っ??」

驚きに男の人たちの力が緩んだので、ここぞとばかりに思い切り膝蹴りを喰らわせて、大きな身体を押し除けると、必死で下から這い出した。

「あ、こら、…っ」「待てっ」

男の人たちが何やら慌てた様子だったけど、構わず戸口にたたずむ人に飛びついた。

だって、多分、信じられないけど、…

「穂月ぃいい――――――っっ」

そこにいたのは穂月だったから。

「こ、これ、女、…っ」「なんと、命知らずな、…っっ」
「穂月様っ、申し訳もござりませぬ」
「その女子は初めてで礼儀をわきまえておらぬようで、…」

礼儀知らずはアンタらでしょうがっっ

男の人たちが慌てふためいて平伏している。
よく分からないけど、助かった。グッジョブ、穂月。さすがヒーロー。

絶望の淵で差し伸べられた命綱のように、地獄の底に垂らされた蜘蛛の糸のように、渾身の力で穂月にぎゅうぎゅうしがみつく。

「…怖いのか」

ややあって、穂月の手がさらりと私の髪に触れた。
穂月の手の感触。穂月の温度。穂月の匂い。穂月の声。
穂月なら、何も、少しも怖くないのに。

「…穂月がいい」

安堵のあまり、口を突いて出たのは、紛れもない本心だった。

全部。穂月なら、何も怖くない。

「酔狂だな」

穂月の皮肉気な物言いに顔を上げると、やっぱりものすごく美しく整った面差しの穂月が、どこか冷たい目で見ていた。

「俺は妖刀時切丸ときりまるに憑かれた男だ。相手が誰であろうと容赦なく切り捨てる。実の母も弟もこの手であやめた。お前のことも一刻後には切り捨てるかもしれぬぞ?」

ぞっとするほど冷たい声だった。

「穂月様、何卒ご容赦を」「平に、平にお許しを」
「その娘は何も知らぬのです」
「此度の勝ち戦の祝いになじみの店から通わせた初物の遊女でして」
「これから十二分にしつけますので、…」

「黙れ」

平伏しながら何やら言い連ねる男の人たちを、穂月が冷たく一瞥いちべつした。瞬時に空気が凍る。

なんか、…改めて穂月に向き合ったけど。
もの凄く整った容姿は変わらないけど、なんか、…

「…穂月、若いね??」

私が知っている穂月より幾分若いというか、幼い気がする。少年ぽいというか、中学生?? みたいな。

「なんか、子ども??」
「は?」

思ったことがそのまま口から出てしまったらしく、穂月が怪訝そうに眉をひそめ、

「なっ、…何を申しておるのだ、あの女子はっ」
「誰じゃ、あんな女を寄こした奴は」「我らもろとも切り捨てられるぞ、…っ」

背後の男の人たちが恐怖に凍り付いたのが分かった。

「あ、…」

それでようやく思い至った。
今、ここにいる冷たい目をした少年のような穂月は、もしかしたら私の知ってる穂月じゃないのかも、…
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