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iiyori.05

04.

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なえ、…――――――

穂月の声を聞いたのを最後に、視界が暗転して、ぷっつりと意識が途絶えた。

どのくらい経ったのか。

頬に土混じりの風が当たる気配がして、立て続けにくしゃみが出た。鼻をこすりながら目を開けると、薄暗い山の中にいて、小枝や葉っぱ、草にまみれて大の字に寝っ転がっていた。

どこ、…

むっくり起き上がって辺りを見回す。
全然見覚えのない殺風景な山の中にいる。首を巡らせながら立ち上がると、衣服から土や葉っぱがボロボロ落ちた。両手で身体中をはたいたけど、髪の毛まで土っぽいので犬のようにフルフルと首を振る。

うん、ひとまず無事。どこもなんとも痛くない。
三宮さんに時切丸で刺されたような気がするんだけど、なんなら深々突き刺さってたような気がするんだけど、刀はどこにも見当たらないし、貧相ながらも胸はぴんぴんしている。

うーん、…

無事で何より。なんだけど、なんか変な格好をしている。
冴えない高校教師として、一応勤務中はスーツがマストなわけだけど、なんか着物というか、浴衣というか、茶店ちゃみせの里娘みたいな格好で、しかもなんとなく、身体全体が軽いような気もする。なんというか、若返った?? みたいな。

なーんちゃって。29歳。まだまだ若いんだから、若返ったら子どもになっちゃうじゃん。と自分で自分に突っ込みを入れて、とりあえず、辺りの様子を探ってみることにした。

山の木立の間から麓の方に明かりが見えるので、ひとまず下りてみる。
どうも私は何も持っていないようだ。スマートフォンも財布も鍵も。なのでまあ、帰るためには誰かに協力を仰がなければならない。明かりがあるってことは人がいるってことだから、そこに助けを求めるしかない。

と思って、足場の悪い山道を苦労しながら何とか下り、麓の村にたどり着いた。

のは、いいんだけど。
なんか、様子がおかしい。

歴史的建造物。というか、天守閣のようなものがはるか遠くに見えて、そこからなだらかに城下町が広がっており、更にはこの山麓の村に繋がってるわけなんだけど、建物が何か、…古い。資料館とかで保管されてるような瓦葺き屋根の家が並んでるし、うまやがあるし、ビルが一つもなくて電気系統をうかがわせるものが何もない。

どこだろう。
地方の観光地? 一帯が条例とかで保護されてる文化遺産の区域だったり??

よく分からないまま、こそこそ様子をうかがいながら進んでいくと、陣幕が張られ、いくつもの篝火かがりびが焚かれたひどくにぎやかな場所に出た。戦士みたいな格好の男の人が大勢集まって、飲めや歌えや陽気に騒いでいる。食べ物のいい匂いが漂い、カラフルな着物を着た女の人たちも笑顔で立ち歩いている。

お祭りか??

気づけば、お腹はペコペコで喉もカラカラ。
この陽気なお兄さんたちにちょっと状況を聞いてみてもいいかな。

「あのう、…」

と思って近寄って声をかけてみると、

「お、来たか」「これはまたおぼこい」
「従順そうだ」「可愛がってやろうの」

大柄な男の人たちに一気に取り囲まれた。
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