戦国男子高校生に言い寄られてます!?【完結】

remo

文字の大きさ
上 下
40 / 92
iiyori.05

04.

しおりを挟む
なえ、…――――――

穂月の声を聞いたのを最後に、視界が暗転して、ぷっつりと意識が途絶えた。

どのくらい経ったのか。

頬に土混じりの風が当たる気配がして、立て続けにくしゃみが出た。鼻をこすりながら目を開けると、薄暗い山の中にいて、小枝や葉っぱ、草にまみれて大の字に寝っ転がっていた。

どこ、…

むっくり起き上がって辺りを見回す。
全然見覚えのない殺風景な山の中にいる。首を巡らせながら立ち上がると、衣服から土や葉っぱがボロボロ落ちた。両手で身体中をはたいたけど、髪の毛まで土っぽいので犬のようにフルフルと首を振る。

うん、ひとまず無事。どこもなんとも痛くない。
三宮さんに時切丸で刺されたような気がするんだけど、なんなら深々突き刺さってたような気がするんだけど、刀はどこにも見当たらないし、貧相ながらも胸はぴんぴんしている。

うーん、…

無事で何より。なんだけど、なんか変な格好をしている。
冴えない高校教師として、一応勤務中はスーツがマストなわけだけど、なんか着物というか、浴衣というか、茶店ちゃみせの里娘みたいな格好で、しかもなんとなく、身体全体が軽いような気もする。なんというか、若返った?? みたいな。

なーんちゃって。29歳。まだまだ若いんだから、若返ったら子どもになっちゃうじゃん。と自分で自分に突っ込みを入れて、とりあえず、辺りの様子を探ってみることにした。

山の木立の間から麓の方に明かりが見えるので、ひとまず下りてみる。
どうも私は何も持っていないようだ。スマートフォンも財布も鍵も。なのでまあ、帰るためには誰かに協力を仰がなければならない。明かりがあるってことは人がいるってことだから、そこに助けを求めるしかない。

と思って、足場の悪い山道を苦労しながら何とか下り、麓の村にたどり着いた。

のは、いいんだけど。
なんか、様子がおかしい。

歴史的建造物。というか、天守閣のようなものがはるか遠くに見えて、そこからなだらかに城下町が広がっており、更にはこの山麓の村に繋がってるわけなんだけど、建物が何か、…古い。資料館とかで保管されてるような瓦葺き屋根の家が並んでるし、うまやがあるし、ビルが一つもなくて電気系統をうかがわせるものが何もない。

どこだろう。
地方の観光地? 一帯が条例とかで保護されてる文化遺産の区域だったり??

よく分からないまま、こそこそ様子をうかがいながら進んでいくと、陣幕が張られ、いくつもの篝火かがりびが焚かれたひどくにぎやかな場所に出た。戦士みたいな格好の男の人が大勢集まって、飲めや歌えや陽気に騒いでいる。食べ物のいい匂いが漂い、カラフルな着物を着た女の人たちも笑顔で立ち歩いている。

お祭りか??

気づけば、お腹はペコペコで喉もカラカラ。
この陽気なお兄さんたちにちょっと状況を聞いてみてもいいかな。

「あのう、…」

と思って近寄って声をかけてみると、

「お、来たか」「これはまたおぼこい」
「従順そうだ」「可愛がってやろうの」

大柄な男の人たちに一気に取り囲まれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

忙しい男

菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。 「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」 「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」 すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。 ※ハッピーエンドです かなりやきもきさせてしまうと思います。 どうか温かい目でみてやってくださいね。 ※本編完結しました(2019/07/15) スピンオフ &番外編 【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19) 改稿 (2020/01/01) 本編のみカクヨムさんでも公開しました。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

愚かな側妃と言われたので、我慢することをやめます

天宮有
恋愛
私アリザは平民から側妃となり、国王ルグドに利用されていた。 王妃のシェムを愛しているルグドは、私を酷使する。 影で城の人達から「愚かな側妃」と蔑まれていることを知り、全てがどうでもよくなっていた。 私は我慢することをやめてルグドを助けず、愚かな側妃として生きます。

処理中です...