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iiyori.05
01.
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全部嘘でもいい。
何もかも失くしてもいい。
それでも穂月が好き。
何にも釣り合わない。何一つふさわしくないけど、それでも、…
好きだから。
「相分かり申したっっ」
お腹の底に精一杯力を込めて言い放つと、穂月の胸をグイっと押して離れた。
「倉咲 菜苗、29歳。逃げも隠れも致しませんっ! そういうことなら、若い二人の前途を祝して、快く送り出そうじゃあないのっっ」
シャっとカーテンを開け、心もとない胸をドーンと叩いて宣言すると、
「…逃げてたよね」「隠れてたし」
「分かりやすく現実逃避してたよな」
皆さんの総突っ込みにあった。
い、…いいじゃんか、ちょっとくらい。
最後くらい、いい女気取りさせてくれてもよくないですか??
軽くいじけていると、こっちを見つめる三宮さんと目が合った。正確には私の後ろにいる穂月を一心に見つめていて、一瞬だけ視線が私に触れたんだけど。
改めて。正面から見たけど、美少女。
透けるように白い肌も細い手足も、艶やかな栗色の髪もパッチリと大きな目も。まつ毛も鼻筋も唇も。何もかも完璧。神様って不公平だよね、と思う典型的な出来の良さ。
その神様に愛されし完璧な美少女が、視線が合ったほんの一瞬だけ、勝者の笑みを浮かべた。ような気がしたような、…
それはヒロインの座を奪われた出来の悪い私の卑しさが見せた妄想かも、と自分を戒めていたら、
「…嫌だ」
後ろから穂月の腕が回った。わずかにかすれた声で、だけどはっきりきっぱり、強い口調で言い切る。
「お前以外と前途なんかあるか、バカ」
バカて、…
穂月の一言に、ほわあああ、と瞬殺されたような様相で、保健室の皆さんが目と口をかっぴらき、鷹峰くんがひゅうっと口笛を吹いた。
こんなに胸が熱くなるバカがあるなんて知らなかった。
穂月に心臓を撃ち抜かれていたら、一瞬ものすごい怨念を感じ、ハッと三宮さんに視線を戻すと、フランス人形のような可憐な瞳に大粒の涙を浮かべている。
マズい。正統派本家を泣かせてしまう。
美少女の涙には一億の価値があるんですよ??
「あああ、あのっ、ええっと、だから、つまり、なんて言うか、…っっ」
悪役令嬢として死亡フラグを回避しなければっ、…と焦って訳の分からない思考を空回りさせていると、
「もう黙れ」
後ろから首を回した穂月に唇を塞がれた。
えええ、ううう、おおお、…#$%&¥っ!?
思考力爆死。頭真っ白。怖くて目が開けられない。
戦国高校生、やること大胆過ぎませんか??
「話をしたのはお前に別離の許しを請うためではない。後朝に置き去りにしたことを詫びるためだ」
「後朝って古典で習ったな」
「ヤッた朝ってことだよな」
戦国高校生、諸々ぶっちゃけ過ぎませんか??
何もかも失くしてもいい。
それでも穂月が好き。
何にも釣り合わない。何一つふさわしくないけど、それでも、…
好きだから。
「相分かり申したっっ」
お腹の底に精一杯力を込めて言い放つと、穂月の胸をグイっと押して離れた。
「倉咲 菜苗、29歳。逃げも隠れも致しませんっ! そういうことなら、若い二人の前途を祝して、快く送り出そうじゃあないのっっ」
シャっとカーテンを開け、心もとない胸をドーンと叩いて宣言すると、
「…逃げてたよね」「隠れてたし」
「分かりやすく現実逃避してたよな」
皆さんの総突っ込みにあった。
い、…いいじゃんか、ちょっとくらい。
最後くらい、いい女気取りさせてくれてもよくないですか??
軽くいじけていると、こっちを見つめる三宮さんと目が合った。正確には私の後ろにいる穂月を一心に見つめていて、一瞬だけ視線が私に触れたんだけど。
改めて。正面から見たけど、美少女。
透けるように白い肌も細い手足も、艶やかな栗色の髪もパッチリと大きな目も。まつ毛も鼻筋も唇も。何もかも完璧。神様って不公平だよね、と思う典型的な出来の良さ。
その神様に愛されし完璧な美少女が、視線が合ったほんの一瞬だけ、勝者の笑みを浮かべた。ような気がしたような、…
それはヒロインの座を奪われた出来の悪い私の卑しさが見せた妄想かも、と自分を戒めていたら、
「…嫌だ」
後ろから穂月の腕が回った。わずかにかすれた声で、だけどはっきりきっぱり、強い口調で言い切る。
「お前以外と前途なんかあるか、バカ」
バカて、…
穂月の一言に、ほわあああ、と瞬殺されたような様相で、保健室の皆さんが目と口をかっぴらき、鷹峰くんがひゅうっと口笛を吹いた。
こんなに胸が熱くなるバカがあるなんて知らなかった。
穂月に心臓を撃ち抜かれていたら、一瞬ものすごい怨念を感じ、ハッと三宮さんに視線を戻すと、フランス人形のような可憐な瞳に大粒の涙を浮かべている。
マズい。正統派本家を泣かせてしまう。
美少女の涙には一億の価値があるんですよ??
「あああ、あのっ、ええっと、だから、つまり、なんて言うか、…っっ」
悪役令嬢として死亡フラグを回避しなければっ、…と焦って訳の分からない思考を空回りさせていると、
「もう黙れ」
後ろから首を回した穂月に唇を塞がれた。
えええ、ううう、おおお、…#$%&¥っ!?
思考力爆死。頭真っ白。怖くて目が開けられない。
戦国高校生、やること大胆過ぎませんか??
「話をしたのはお前に別離の許しを請うためではない。後朝に置き去りにしたことを詫びるためだ」
「後朝って古典で習ったな」
「ヤッた朝ってことだよな」
戦国高校生、諸々ぶっちゃけ過ぎませんか??
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