戦国男子高校生に言い寄られてます!?【完結】

remo

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「なんという荒唐無稽な、…」
「にわかには信じられない設定というか、…」
「もはやあり得ないというか、…」

穂月の話を聞いていた保健室の面々が率直な感想を呟く。

全くもって同感だけど、でもさ、でもさっ

穂月が私の家の前にいたっていうのが、ほらもう、運命というか? 私が穂月の『なえ』だっていう証っていうか??

引きずり降ろされそうなヒロインの座に必死でしがみつく私に、

「…時切丸は霊魂をも切り裂く妖刀で、神話時代に滅ぼされた悪霊の呪いを受けているんです。愛する人の血によって時空を切断する、という」

三宮さんの冷静な声が聞こえた。

なんでそんなこと知ってるの!?
という、いかにも本物っぽい知識が出てきた。これはヤバい。

「私の家は三宮寺さんぐうじという代々伝わる古いお寺なんですけど、奉納されているものの中に剣もあるんです。私、刀剣の美しさに魅せられていて、ある時、決して触ってはいけないと言われていた宝物殿の刀に触わり、誤って腕を切ってしまったんです。そうしたら、霊魂が飛ばされて戦国時代の娘になり、穂月様に出会いました」

そしてなんか、もっともらしい理由も出てきた。完全にヤバい。
私の運命論、風前の灯火じゃん、…

「後は、穂月様が語られた通りです。私は現在の三宮なえに戻ったんですけど、今朝方どうしようもなく心が騒いで、外に出てみると、皇居外苑に時切丸を持った穂月様がたたずんでらして、…もう矢も楯もたまらず飛びつきました」

しんと静まり返った保健室に熱を帯びた三宮さんの声が響く。

「お会いしたかった、…」

カーテン越しでも、どんな表情で穂月を見ているのか分かる。
あの非の打ちどころのない美少女は、全身全霊を捧げて穂月を恋い慕っているんだろう。

これ、もう、…勝ち目なくない?
運命論、終わったわ。
私ってばただの、愛し合う二人を引き裂く、痛い勘違い女じゃん。流行りの悪役令嬢じゃん、…(←違う)

穂月の腕の中からもそもそと抜け出そうとすると、穂月にぎゅっと閉じ込められた。

「でも、俺のなえはお前だけだ、…」

低くかすれた、苦しそうな穂月の声。
運命の相手である三宮さんを前にして大変申し訳ないけど、そう言ってくれる穂月の気持ちはすごく嬉しい。

だからもう、それだけでいいことにしよう。

「素朴な疑問なんだけどさ、戦国のなえと現代のなえの、見た目とか特徴とかは、全然違うのかな?」
「何か面影みたいな?」「霊魂に面影とかあるのかよ」

マキちゃんと坂下さん、鷹峰くんがぼそぼそ言い合っている。

「俺にはなえはなえにしか見えん、…」

ちょっと不貞腐れたように穂月がつぶやく。

「戦国のなえってどんな娘だったの?」

坂下さんの問いかけに、

「…可愛い」

穂月が答えると、保健室の皆さんが、私と三宮さんを見比べて、無言でジャッジを下したのが分かった。

ねえ!? 
みんなまとめて失礼じゃない??
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