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iiyori.03

08.

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「つまりね、出来る男は反省も出来るんです」

休日の公園に突如乱入してきた溶けかけた雪だるまこと、東丸マモルさんは、結婚相談所で知り合った交際相手(?)で、先日ぶち切れてスーパーから逃走した、体型的に丸さが際立つ年上の成人男性である。

「この間は驚き過ぎて、訴えるなどと、つい暴言を吐いてしまいました。大変失礼いたしました」

しかしながら、雪だるまはなぜか反省をしていてしょんぼり頭を下げると、落ち着いて話をしたい、と、私と穂月と卯月を公園近くにあるファミリーレストランに連れて行った。

「ははうえ、このめんはおもしろいですね」

ファミレス初体験らしい卯月は好奇心旺盛で、お子様ランチについているミートソーススパゲティをフォークでくるくるしながらにこにこしている。待って、可愛い。写メっ、写メとっていいですか!?

「で、…まあ敢えて言うのもあれですけど、休日のファミレスでランチタイムって、僕ら仲良しファミリーにしか見えませんねっ??」

私が興奮してスマホを構えていたら、雪だるまが急にテンションを上げてきたので我に返った。

…話が見えない。

「…えーっと、…だから、…つまり。私たちの交際は破棄するってことですよね?」

もしかしたら契約違反とか、罰金とか強制退会、ブラックリスト入りとか、何かお咎めを受けるのかもしれないけど、と改めて雪だるまに目を向けると丸い顔に埋もれている小さな目をぱちぱち瞬いていた。

「菜苗さん、僕の話聞いてました? つまりっ、ファミリーになろうってことですよ」

「は? ファミリー??」

話が飛び過ぎて、雪だるまの言うことが全然理解できない。

「俺たちは既に家族だか」

代わりに、ドリンクバーを興味深げに眺めていた穂月が、こちらに向き直った。

「穂月くん、話が早いじゃないですか。つまりですね、こちらの行く当てがなくて菜苗さんが保護されているご兄弟は、私と菜苗さんの養子として責任もって育てていきましょう、ということです」

雪だるまマモルが得意満面で言ってのけた。

「菜苗さんは教師という職業からみても、困っている人を放っておけない優しい性分なんですね。僕はそんなところも好きなんです」

うふふ、と、丸い顔を更に丸くして、丸い手を私の方に伸ばしてきたので、思わず思いっきり手を引っ込めたしまった。

雪だるまが肉食化。これは怖い。

隣に座る穂月が、何も言わずに引っ込めた私の手に手を重ねた。それがとても心強くて、嬉しくて、思わずちょっと、握りしめてしまった。
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