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iiyori.03

05.

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代わりにフォローをくれたのは、思いもよらないところからだった。

「叔母と甥の関係を、外国じゃメオトって言うんだって」

いや、そんなアホな。
と、誰もが思いながら発言者に注目すると、

「穂月は叔母思いのただの甥っ子だよ。だってあたしたち、昨日から付き合ったもんね?」

人垣の中から颯爽と進み出てきた生足の眩しい坂下沙里が、穂月の片腕に腕を絡ませた。

「えええ――――っ」「嘘おぉおお――――っ」
「いつの間にぃ~~~~~っっ???」

女子の愁いを帯びた黄色い悲鳴と、男子のどすの利いた驚きの声が二重奏を奏でる。

「お前が何を言っているのか分からんが、…」
「口裏合わせなよ。なえちゃんせんせーのためだよ!?」

穂月と坂下さんが小声でひそひそ言い合って、穂月が探るような目を私に向けた。

「あ、…えっと、…そうだったんだ。知らなかった」

多分、ここは頷いて、おめでとうくらい言うべきだった。
でも、せっかく坂下さんが助け舟を出してくれたのに、私はろくな言葉が出てこなかった。

「…ふううん? じゃあなえちゃんと穂月は健全な親戚関係で、恋人にはならねんだ?」

ダメ押しみたいに鷹峰くんに見られて、

「な、…らないよ?」

不自然に語尾が上がってしまった。

「はい、じゃあ、諸々はっきりしたところで、決闘ごっこは終了! 解散っ!! みんな屋上から降りて!!」

「…決闘ごっこ、て、…」

苦笑する鷹峰くんを置き去りに、気まずい空気を振り切るようにして、マキちゃんがパンパン手をたたき、生徒たちを促した。

「んじゃ、帰ろ、穂月」
「なんで俺がお前と、…」
「空気読みなよ、なえちゃんの努力を台無しにする気?」

密着したままの穂月と坂下さんが何やらもぞもぞ言い合って、坂下さんが穂月の腕をつかんだまま引っ張っていった。穂月に何か言いたげな目を向けられたけど、不自然にへらへらして見送るしか出来なかった。

生徒たちがわらわらと屋上から降りていく。
それを虚ろに見送っていた私に、

「なえちゃんさー、分かりやすすぎ」

二本の木刀を抱えて、鷹峰くんが寄ってきた。

「お前が余計なことするからだぞ、鷹峰」

マキちゃんが鷹峰くんの頭をはたく。

「や、…俺、結果的にいい仕事したと思いません?」
「まあ、…対外的には?」

いつの間にか必要以上に卯月を抱きしめる腕に力を入れていたらしい私は、

「ちちうえとははうえはけんかされたのですか?」

3歳児に余計な気を遣わせてしまった。

「だいじょぶです。ちちうえはいけめんですから。ゆるしてくださいますよ」
「うん、…」

なんだか涙が出てしまいそうで、小さく頷いたら、丸く柔らかい手がよしよしと頭を撫でてくれた。
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